むち打ち [公開日]

軽い追突事故でむち打ち症になったら「嘘」と言われた場合の対処法

軽い追突事故でむち打ち症になったら「嘘」と言われた場合の対処法

軽い追突事故でむち打ち症になってしまった場合でも、「この程度の事故でむち打ち症になるはずがない」、「嘘の症状を言って多額の賠償金を取ろうとしているのではないか」と疑われてしまうことがあります。

交通事故の相手方の多くは、「事故の状況と被害状況は比例する」と考えがちです。そのため、軽い追突事故でむち打ち症になった場合には、「この程度の事故でむち打ち症になるはずがない」、「嘘の症状を言って多額の賠償金を取ろうとしているのではないか」と疑われてしまうのです。

しかし、後方からの追突事故のような場合には、事故の規模が小さい場合でも「むち打ち症」になってしまう場合があります。人間の身体は、予測不可能な状況で衝撃を受けると見た目以上のダメージを受けることがあるのです。

そこで、今回は、むち打ち症の被害に遭ったときに、「相手方から嘘と疑われない」ために知っておきたいポイント、「疑いをかけられたときの対処法」について解説します。

1.むち打ち症が嘘だと言われる理由

交通事故の示談交渉は、「利害対立する相手方との交渉」です。つまり、相手方(保険会社・加害者)としては、「支払う必要ない損害賠償(治療費)は支払いたくない」、「支払う損害賠償はできる限り少なくしたい」と考えるのが通常だということです。

交通事故によるむち打ち症は、次のような特徴があるため、その損害賠償について相手方とトラブルになりやすい(支払いを拒否されやすい)傾向があります。

(1) むち打ち症には「他覚症状」がない

ほとんどのむち打ち症には、「他覚症状」がありません。

「他覚症状」とは、わかりやすく言えば、「誰の目にも明らかな症状」のことです。裂傷(すり傷)や骨折などは、目視やレントゲンなどによって、他人も症状を直接確認することができます。

しかし、むち打ち症の症状である「痛み」、「コリ」、「めまい」、「頭痛」は、ケガをした本人にしかわからない自覚症状に過ぎません。

したがって、他の事情と相まって、相手方が「むち打ち症になるような事故ではない」と判断しているときには、「症状がある」と主張しても「嘘をついている」と捉えられやすいのです。

また、むち打ち症の症状は、ケースによってさまざまです。頭痛がヒドイ場合もあれば、しびれが辛い場合もあります。

客観的な資料で症状を示せない以上、むち打ち症の有無は、被害者の申告に基づいて判断するほかありません。

たとえば、「右肩が痺れると主張したかと思えば、今度は頭痛がひどいと主張する」ように、被害者の主張が一貫していないときには、相手方としては「どちらもウソではないか」と勘ぐってしまう場合もあるかと思います。

損害賠償を支払う相手方(保険会社)にとっては、「被害者の言い分をすべて認めていたらキリがない」という思いもあるからです。

(2) 事故状況と症状が比例しない場合がある

実際の交通事故では、「衝撃が僅かでしかない交通事故の場合」にもむち打ち症となる場合があります。人間の頸部はとてもデリケートで、不測の衝撃にはとても弱いからです。

特に、「後方からの追突事故」は、被害車両の運転手は事故発生を全く予期できないため、むち打ち症になりやすいといえます。

たとえば、停止中の車両に後方から追突されたときには、相手車両が徐行程度の低速であっても、むち打ち症となる可能性があります。

しかし、交通事故の当事者ではない相手方保険会社は、「事故による衝撃の大きさ」をベースに、被害状況(ケガの状況)を判断しがちです。

したがって、相手方保険会社が、「追突車両の速度や車両のへこみ具合」からは、「むち打ち症となるわけがない」と主張してくることがないわけではありません。軽微な事故のむち打ち症は、特に示談がこじれやすい傾向があります。

(3) 交通事故以外の要因の存在

めまいや頭痛、しびれといった、むち打ち症の症状は、交通事故以外の原因でも生じる場合があります。被害者に交通事故以前からの既往症がある場合には、「被害者が訴える症状は、交通事故を原因とするものではない」と相手方から反論されることもあるでしょう。

しかし、既往症がある場合でも、「交通事故によって悪化したことが明らか」であれば、悪化分については補償してもらえます。

また、被害者の「事故後の対応」が問題となる場合もあります。つまり、事故直後に医師の診察を受け、適切な治療を受けていれば「めまい」、「頭痛」、「しびれ」、「コリ」といった症状が残る(生じる)はずがなかったと主張されることがあります。

2.相手方にむち打ち症を疑われないための対応

相手方に「むち打ち症は嘘」と言われないためには、上で解説したことが生じないように対処することが大切です。

(1) 事故直後に医師の診察を受ける

軽微な事故では、「先を急ぐ理由がある」、「外傷がないから大丈夫だと思った」といった事情で、事故直後に医師の診察を受けていない被害者も少なくないようです。

しかし、事故から何日も経過してからの通院・診察では、「症状が交通事故を原因とする」ものであることを保険会社に認めてもらえない場合があります。医師の診察を受けていないケースでは、交通事故それ自体も「物損事故」として処理されていることが多く、示談交渉がこじれやすくなります。

むち打ち症の症状は、事故から数日たって初めて現れることも珍しくありません。また、事故直後の緊張・興奮状態の中では、体内ホルモンなどの影響で痛みを感じづらい場合もあります。

身体に衝撃を感じる交通事故に遭ったときには、外傷や痛み・しびれの有無を問わず、必ず事故直後に「整形外科の専門医の診察」を受け、「診断書を作成してもらう」ことが大切です。

痛みが生じた場合にも医師の診察を受けずに、整骨院・接骨院での施術(マッサージなど)だけで対応してしまう人もいます。

しかし、整骨院・接骨院での施術士は、医師ではないので診断書を発行することもできません。また、医師が必要と認めない施術費用は、補償の対象外となることもあるので注意が必要です。

(2) 症状を一貫して訴える

交通事故の示談交渉における「症状の判断」は、「一貫性」や「常時性」がとても重視されます。相手方へ症状を伝える際には、誤解が生じないように、丁寧に、正確に、一貫した主張を続けることがとても大切です。

また、医師の診察の際にも、一貫した主張を続けることがとても大切です。むち打ち症の症状は、他覚症状がないため、患者の申告内容でしか判断できないからです。

一貫しない症状がカルテなどの診療記録として残ってしまえば、示談交渉で不利な事情となってしまう場合も少なくありません。

(3) 適切な検査を受ける

むち打ち症は、骨折の場合などと違い、レントゲン画像などで症状を確認するのは難しい場合がほとんどです。しかし、MRI検査を実施すれば、むち打ち症の原因を確認できる場合もないわけではありません。

また、握力検査、深部腱反射検査、スパークリングテスト、ジャクソンテストといった検査を実施することで、症状があることを客観的に明らかにできる場合があります。

事故後の通院先は、これらのテストが実施できる医療機関を選択することも大切です。

3.「むち打ち症が嘘」だと言われてしまったときの対処法

保険会社との示談交渉において、実際に感じているむち打ち症の自覚症状を「嘘」だと疑われた際には、「交通事故事件に強い弁護士」に早めに相談するのが最善の対応です。

示談交渉は、「当事者の合意」がなければ成立しません。「嘘の症状を申告している」と相手方に疑われたときには、相手方が「嘘だと決めつけている理由」を正しく把握し、必要な対策を講じなければならないからです。

ところで、むち打ち症の有無が問題となるケースの多くは、「被害者に過失がない」ケースも少なくありません。

いわゆる「過失ゼロ」の交通事故では、被害者が加入している自動車保険会社に示談代行を依頼することもできません。被害者の代理人として支援できるのは弁護士のみです。

交通事故に強い弁護士であれば、相手方保険会社の主張にも専門的に反論することができます。また、むち打ち症があることを証明するために必要な検査方法についても、それぞれのケースに最も適合した、効果的な方法をアドバイスできます。

さらに、検査を実施するための「医師への働きかけ」も弁護士を通じた方がうまく行く場合が多いでしょう。

一般的に、医師は、治療に直結しない検査の実施(MRI検査など)には、消極的なことが多いからです。医学について専門家ではない患者が、医師に対して強く働きかければ、医師との関係がこじれてしまうことも考えられます。

検査実施によって客観的な資料を揃えることができれば、示談がまとまらなかった場合であっても、民事訴訟によって十分な補償を確保できる可能性も高まります。

4.まとめ

むち打ち症は、交通事故ではよくあるケガのひとつですが、「客観的に証明することが難しい」ため、示談交渉が難航することも珍しくありません。しかし、事故で負った傷病について治療費や慰謝料を請求するのは被害者の当然の権利です。

被害者には全く落ち度のない交通事故で負った怪我を「嘘」と疑われ、十分な補償を受けられないのは、大きな問題です。万が一、示談交渉の際に、相手方や保険会社から「むち打ち症は、本当なのか?」と疑われてしまったときには、できるだけ早く弁護士にご相談ください。

泉総合法律事務所なら、交通事故事件の経験豊富な、専門知識と交渉力を兼ね備えた弁護士が最後まで誠心誠意サポートさせていただきます。

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