むち打ち [公開日]2018年6月21日[更新日]2021年4月26日

後遺障害14級9号の慰謝料の計算方法・認定基準を解説

交通事故でむち打ちとなってしまった方に多いのが、後遺障害14級9号にあたるケースです。

むち打ちにおいて適正な慰謝料額を受け取るためには、どのような場合に後遺障害として認定されるのか、基準やポイントを知っていくことが重要となります。

今回は、後遺障害14級9号の症状と認定基準、慰謝料や逸失利益はいくらもらえるのかをご説明します。

1.後遺障害14級9号の症状

後遺障害14級で認定される怪我、症状として代表的なものは「むち打ち症」です。むち打ちは、交通事故の怪我の中でももっとも多い怪我として知られています。

交通事故では衝突事故が多く、後ろから激突された際に首に大きな負荷がかかり、むちのように首がしなってしまうことによって、首回りの筋肉・神経が傷ついてしまうのです。

むち打ちの代表的な症状としては、首の痛み、不快感、痺れ、肩や腕の痛み、痺れ、違和感、関節痛、頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気、倦怠感などがあります(これ以外にも、様々な身体的症状が現れることがあります)。

病院での診断名としては、頚部挫傷、外傷性頚部症候群、頚椎捻挫などです。

2.後遺障害14級9号の認定基準

むち打ちが完治しない場合(治療終了・症状固定後にも痛みや痺れが残る場合)には、後遺障害として認定されることで、傷害慰謝料(入通院慰謝料)とは別に後遺障害慰謝料も請求することができます。
事故で怪我をして被った精神的苦痛に対する損害と、後遺障害が残った精神的苦痛は異なると考えられるからです。

また、交通事故で後遺障害を負うと、多くのケースで今まで通りに働けなくなってしまいます。交通事故の被害に遭ったせいで収入が減ってしまったなら、この本来稼げた分の賠償金を後遺障害逸失利益として加害者側に請求することもできます。

しかし、後遺症があるとご自身で認識していても、それを保険会社に伝えるだけでは後遺障害に対する慰謝料・逸失利益を請求することはできません。
後遺障害に関する賠償金を受け取るためには、「後遺障害認定」を受け、「等級」を獲得する必要があります。

むち打ちで14級9号に該当する基準は、「局部に神経症状を残すもの」と定められています。体の一部に神経系の障害に関する症状が起きればこれに該当します。
(なお、MRIやCT、レントゲンといった画像診断でむち打ちの症状が他覚でき、それと交通事故の因果関係が認められれば、更に上の12級13号の認定を受けられる場合があります。)

むち打ちで先に挙げた症状は「局部に神経症状を残すもの」と言えるため、申請内容を確実にすれば等級を獲得できるでしょう。

しかし、特に医学的他覚所見がない後遺障害14級9号の認定は簡単ではありません。場合によっては「非該当」となってしまい、後遺障害に関する賠償金が受け取れなくなってしまいます。

[参考記事]

医学的他覚所見がないむち打ち症の後遺障害認定

むち打ちの後遺障害認定で注意すべきポイントについては、以下のコラムをご覧ください。

[参考記事]

交通事故のむち打ちで後遺障害認定を受ける方法

3.14級9号の後遺障害慰謝料・逸失利益の計算

では、実際に14級9号に認定されると、後遺障害慰謝料と逸失利益はいくら程になるのでしょうか。

(1) 後遺障害慰謝料

実は、「14級9号だから一律○○円」と決まっているわけではありません。受け取る金額は同じ等級でも差が出てしまいます。
というのも、慰謝料計算の方法には3つの基準が存在するためです。

慰謝料を計算する場合、自賠責基準・任意保険会社基準・弁護士基準の3つのうちいずれかの基準に当てはめて計算するのが通常です。

自賠責基準とは自賠責保険会社が定めた最低限の慰謝料基準、任意保険会社基準は相手方が加入する任意保険の独自の基準、弁護士基準は弁護士に依頼した場合に採用できる(裁判でも用いられる)基準を指します。

交通事故の慰謝料は、弁護士基準の計算で大きく増額!

[参考記事]

交通事故の慰謝料は、弁護士基準の計算で大きく増額!

後遺障害14級9号の場合、それぞれの基準に当てはめると以下のような金額になります。

  • 自賠責基準:32万円
  • 任意保険会社基準:非公開(多くの場合は自賠責基準より僅かに高額)
  • 弁護士基準:110万円

このように、自賠責基準と弁護士基準とでは78 万円もの差があります。

任意保険会社の基準は公開されていませんが、一般的には自賠責基準と弁護士基準の間の金額であることが多いため、40~50万円程度の金額となっていることも多いでしょう。

しかし、弁護士基準を適用することで、被害者は適正と言える慰謝料額を受け取ることができるのです。

なお、交渉の段階で弁護士基準が採用されるには、被害者が弁護士に交渉を依頼する必要があります。

(2) 逸失利益

逸失利益は、事故がなければ得られたはずの収入のことです。
事故の怪我で後遺障害が残ってしまったことにより、多くの方はこれまで通りの働き方ができなくなってしまいます。その収入面の減少を補償するものが逸失利益です。

逸失利益の金額は、以下の計算方法で決まります。

逸失利益=収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数 

収入は、事故前に得ていた収入です。会社員であれば、前年の源泉徴収票に書かれた総支給額(控除前の税金、ボーナス、手当も含む)のことです。

労働能力喪失率は、後遺障害の等級によってあらかじめ定められています。14級の場合は5%です。

労働能力喪失期間とは、症状固定から67歳までの年数を差します。

そして、ライプニッツ係数は、公平な額に調整するために逸失利益を運用することで生じる利益を差し引くための数値です。労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係は、表から参照して割り出すのが一般的です。
就労可能年齢とライプニッツ係数(2020年4月1日以後に発生した事故の場合)

例として、500万円の年収を得ていた方の逸失利益を計算してみましょう。

【35歳、会社員年収500万円、労働能力喪失期間10年の場合】
5,000,000×5%×8.530 =2,132,500円

しかしむち打ちの場合、任意保険会社との交渉では、症状固定の年齢に関係なく労働能力喪失期間は最大で5年程度として換算されることが多いです。

これを先の35歳の会社員の例で考えてみると、ライプニッツ係数が4.580となってしまい、114万5,000円に逸失利益が下がってしまいます。
10年の労働能力喪失期間と比べると100万円近くもの差が出てしまうため、きちんと保険会社と交渉をしていかないと適正な金額は得られません。

[参考記事]

後遺障害・死亡事故の逸失利益の計算例|もらえない原因を解説

4.14級9号の後遺障害認定は弁護士にお任せを

実際の任意保険会社は、「後遺障害の賠償金は慰謝料と逸失利益の合計で75万円」「労働能力喪失期間は3年しか認められない」などと提示してくることが多いようです。

「保険会社に言い分を聞いてもらえない」「示談金額に納得がいかない」「非該当になった」などというお悩みがある場合には、泉総合法律事務所の弁護士にぜひご相談ください。

交通事故の解決実績豊富な弁護士が、後遺障害認定の申請から交渉まで一貫してサポートいたします。

[解決事例]

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