交通事故裁判 [公開日]2018年1月29日[更新日]2020年9月8日

交通事故の供述調書・実況見分書とは?裁判の証拠にもなる!

交通事故に遭った被害者は、加害者に対して損害賠償請求を行います。

示談できず、損害賠償金額について裁判で争いとなった際に、重要な証拠となるのが「供述調書」と「実況見分書(実況見分調書)」です。

では、「供述調書」と「実況見分調書」とはどのような書類なのでしょうか?また、作成や署名の際にはどのような点に注意すべきなのでしょうか?

1.「 供述調書」「実況見分調書」は刑事事件の証拠

当て逃げや無免許運転といったケースを除き、物損事故は、基本的に犯罪にはならず、警察は事故現場で実況見分を行いません。
対して、人身傷害を伴う交通事故は、行政事件・民事事件だけでなく、刑事事件にもなります。

人身事故の刑事責任・民事責任・行政責任の違い

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人身事故直後には、警察が「過失運転致傷罪」や「危険運転致死傷罪」などの容疑で事故の捜査を開始します。

この警察の捜査およびこれに続く検察の捜査の過程で、実況見分調書や供述調書が作成されます。

そして、捜査が終了すると、検察官が交通事故の加害者を起訴して公判請求するか、略式起訴するか、不起訴にするかを決めます。

公判請求または、略式起訴した場合は、検察官が、捜査過程で作成された供述調書や実況見分調書を証拠として裁判所に提出します。

つまり、供述調書も実況見分調書も、刑事事件の証拠とするために、捜査機関(警察や検察)が作成する書面のことなのです。

2.供述調書と実況見分調書の違い

(1) 実況見分調書

実況見分調書は、交通事故の現場に加害者や被害者、目撃者を立ち会わせて、事故当時の様子を説明してもらい、その説明をもとに交通事故時の状況を図面にした警察の内部資料です。

たとえば、立会人が「ここで信号が赤になったのを見ました」、「ここで相手の自動車を発見しました」「ここで衝突しました」といった指示説明を警察官に行います。
警察官は、現場の図面を作り、立会人の証言に基づいて、衝突場所などを記載します。

なお、被害者が救急搬送されてしまった場合などは、加害者の実況見分調書だけが作成されて、被害者の実況見分調書は作成されない場合もあります。

こういったケースで当事者同士の主張が食い違う場合は、後日被害者が警察から呼び出しを受け、立会人となって実況見分調書が作成されることもあります。

【実況見分調書に署名押印は必要なし】
実況見分調書は、作成した警察官が署名押印するもので、立会人が署名押印する必要はありません。
しかし、実況見分調書は、後述するように民事訴訟で重大な証拠となる可能性がありますから、立ち合いをする場合には、できるだけ記憶に基づいて警察官に正確な説明をするように努めましょう。

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(2) 供述調書

供述調書は、加害者や被害者、目撃者などの事件関係者ごとに、供述内容がまとめられた書面のことです。

①加害者の供述調書

警察の被疑者の供述調書は、通常、成育歴といったいわゆる生い立ちなどや・反則歴を記載した「身上調査書」と事故について記載された「弁解録取書」の2通から成ります。

たとえば、交通事故の態様・結果が重大であれば、加害者は逮捕されます。逮捕された加害者は、警察で、弁解録取や、取り調べを受けます。

加害者が警察官の質問を受けながら語ったことは警察官によって書面にまとめられ、それが供述調書となります。

さらに、加害者は、検察官の取り調べも受け、検察官も供述調書を作成します。

逮捕されなかったとしても、加害者は、警察官や検察官から呼び出されたら、警察署や検察庁に赴いて取り調べを受け、そのときに供述調書が作成されます。

②被害者・目撃者の供述調書

一方で、被害者も事件の参考人として、警察官や検察官から事情を聞かれ、そのときに語った内容が供述調書にまとめられます。

その際に、被害者は、「相手に対して処罰を求めますか」と加害者に対する処罰についての意見を求められることがありますが、その答えは加害者を起訴するかどうかの判断材料の1つになります。

後述するように、加害者が起訴されれば実況見分調書・供述調書とも開示請求できますが、起訴されなければ、開示されるのは、実況見分調書のみと、民事裁判での流れが大きく変わります。

また、目撃者がいる場合には、目撃者も警察署や検察庁に呼び打され、目撃者の供述調書が作成されることもあります。

【公判での証拠能力】
公判では、加害者の供述調書は、警察が作成したものよりも、検察が作成したものを証拠能力・信用性について高く評価し、その他の供述調書については、警察が作成したものも検察が作成したものも同等の扱いをすることとなっています。

③供述調書の効果

供述調書は、刑事事件のために作成されるものであるとはいえ、交通事故に至る前の行動から、交通事故が起きた時の状況およびその後の被害者・加害者の行動まで、加害者や被害者が語ったことが詳細に記載されています。

警察や検察は、事故現場の道路の形や広さ、一時停止などの規制の有無、道路の見通しの状況、事故直後の現場の状況、事故車両の写真や被害者の負傷の状況など、数多くの証拠を集め、これらの証拠も踏まえた上で、加害者や被害者から状況を聞いて、供述調書を作成しています。それゆえ、供述調書で語られている内容は重要です。

さらに、目撃者が事故当事者と無関係な第三者であれば、供述調書の内容は、民事裁判で貴重な証拠になります。

民事訴訟における供述調書の主な効果は、下記の2つです。

  • 交通事故直後の供述を確認できる
    特に警察で事故直後に作成された供述調書は、事故直後の記憶を確認できるため、非常に重要です。
  • 供述の変遷の有無により、それぞれの言い分の信用性を判断できる
    供述調書は、警察と検察で時期を変えて作成されているため、それぞれの時期で供述が変遷していることがあります。供述の内容が、次第に自分の都合のいいように変わっていれば、供述者の主張は信用できないという判断材料になります(反対に、事故直後から、主張する内容が一貫していると、信用性が高いと判断されやすくなります)。

3.調書は交通事故の民事訴訟でも活用できる

本来、刑事訴訟と民事訴訟は別の手続です。
しかし、実際には1つの交通事故に関することであるにもかかわらず、民事訴訟において刑事訴訟の記録が使えないというのは、被害者の保護に欠けると言わざるを得ません。

また、民事訴訟を遂行する弁護士は、警察や検察のように国家権力を使った証拠の収集をすることはできません。

そのため、一定の条件により、刑事事件の記録を閲覧謄写などのために開示してもらうことができることになっています。

まず、加害者が刑事事件で起訴された場合には、刑事確定訴訟記録法4条により、検察官が証拠として裁判所に提出した実況見分調書や供述証拠などを民事訴訟のために、刑事事件の判決確定後に、開示してもらうことができます。

一方、加害者が不起訴だった場合には、弁護士会照会の手続をすることになりますが、実況見分調書のみが開示される扱いになっています。

4. 供述調書における主張や署名で注意すべき点

自分の供述調書が作成される場合には、刑事事件だけではなく、民事事件の証拠にもなることを意識しておく必要があります。以下の点に注意して供述するようにしてください。

(1) 記憶と食い違わない分かりやすい説明を心掛ける

まず、記憶と食い違いのない供述をすることです。

嘘をついても、他の証拠などと整合しなかったり、前についた嘘にさらに嘘を重ねなければいけなくなり、徐々に不自然な供述になったりするので、結局はバレてしまいます。

1つでも嘘をついていたことがバレてしまうと、正直に話したことまで信用されなくなります。

次に、警察官や検察官の質問をよく聞き、分かりやすい説明を心掛けることです。
結果的に、誰が読んでも分かりやすい供述調書を作成してもらうことができます。

(2) 警察官・検察官の誘導に乗らない

警察官や検察官が、加害者・目撃者の供述による事件に対する思い込みやから、「こうじゃなかったですか?」というように被害者を誘導する質問をすることがあります。

誘導に乗ってしまい自分の記憶と食い違う供述をしてしまうと、原則として変更できなくなります。また、変更しようとすれば、不合理な変遷と捉えられてしまうこともあります。

警察官・検察官の誘導には乗らず、自分の記憶に従って供述しましょう。

(3) 調書が自分の供述と異なる場合は取り直しを求める

供述調書は、自分が話したことを警察官や検察官が書面にまとめます。他人が書面にまとめるとニュアンスが違ったり、意味の取り違いがあったりすることがあります。

出来上がった供述調書は、よく読んで、間違っているところや気になったところはすべて訂正してもらうようにしましょう。

訂正されたことが確認できない限り、署名・押印は拒否し、調書の取り直しを求めましょう。

5.まとめ

交通事故に遭えば、誰でも焦ってしまうものです。しかし「よく分からないから」などという理由供述調書に安易に署名するのは大変危険です。

落ち着いて、内容をしっかり確認した上で署名するようにしましょう。

交通事故に遭ってしまいお困りの被害者の方は、是非一度泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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