交通事故裁判 [公開日] [更新日]

交通事故の供述調書・実況見分書とは?裁判の証拠にもなる!

裁判の証拠にもなる!交通事故の供述調書・実況見分書とは?

交通事故に遭った場合、損害賠償請求を行いますが、示談で解決することができずに、裁判所で争いになった場合に重要な証拠となるのが「供述調書」と「実況見分調書」です。
これらはどのような書類になるのでしょうか?また、作成や署名の際に注意するべき点は何でしょうか?

1. 供述調書と実況見分書

(1) 目的

人身傷害を伴う交通事故は、刑事事件、行政事件、民事事件の3つの事件を引き起こします。
まず、交通事故直後に動くのは、刑事事件です。交通事故が起こったら、警察が過失運転致傷罪や危険運転致死傷罪などの容疑で、捜査を開始します。

この警察の捜査およびこれに続く検察の捜査の過程で、実況見分調書や供述調書が作成されます。

そして、警察および検察の捜査が終了すると、検察官が交通事故の加害者を起訴して公判請求するか、略式起訴するか、不起訴にするかを決めます。

公判請求または、略式起訴された場合、検察官は、捜査過程で作成された供述調書や実況見分調書を証拠として裁判所に提出します。

つまり、供述調書も実況見分調書も、刑事事件の証拠とするために、捜査機関(警察や検察)が作成する書面のことなのです。

(2) 供述調書と実況見分調書の違い

①実況見分調書

実況見分調書は、交通事故の現場に加害者や被害者、目撃者を立ち会わせて、そのときの様子を説明させ、その説明をもとに交通事故時の状況を図面にしたものです。

たとえば、「ここで、信号が赤になったのを見ました」とか、「ここで、相手の自動車を発見しました」「ここで衝突しました」ということを警察官に指示説明します。警察官は、現場の図面を作り、立会人の言うとおりに、衝突場所などを記載します。

交通事故の内容によっては、加害者の実況見分調書だけが作成されて、被害者の実況見分調書は作成されない場合もあります。

実況見分調書は、作成した警察官が署名押印するもので、立会人が署名押印することはありません。

しかし、実況見分調書は、民事訴訟で重大な証拠となりますから、立ち合いをする場合には、なるべく記憶に基づいて正確に警察官に説明しましょう。

②供述調書

供述調書は、加害者や被害者、目撃者など、事件関係者の供述内容がまとめられた書面のことです。これは、各関係者ごとに作成されます。

どのような時に供述調書が作られるのでしょうか。
たとえば、交通事故の態様・結果が重大であれば、加害者は逮捕されます。逮捕された加害者は、警察で、弁解録取や、取り調べを受けます。加害者が警察官の質問を受けながら語ったことは警察官によって書面にまとめられるのですが、それが供述調書となります。

さらに、加害者は、検察官の取り調べも受けます。検察官も供述調書を作成します。

逮捕されなかったとしても、加害者は、警察官や検察官から呼び出されたら、警察署や検察庁に赴いて取り調べを受け、そのときに供述調書が作成されます。

被害者も事件の参考人として、警察官や検察官から事情を聞かれ、そのときに語った内容は供述調書にまとめられます。ちなみに被害者の場合、その怪我の状況によって、供述調書が作成される時期が異なります。

また、目撃者がいる場合には、目撃者も警察署や検察庁に呼ばれ、目撃者の供述調書が作成されることもあります。

(3) 民事訴訟での活用

本来、刑事訴訟と民事訴訟は別の手続です。

実際には1つの交通事故に関することであるにもかかわらず、民事訴訟において刑事訴訟の記録が使えないというのは、被害者の保護に欠けると言わざるを得ません。民事訴訟を遂行する弁護士は、警察や検察のように国家権力を使った証拠の収集をすることはできません。

そのため、一定の条件により、刑事事件の記録を民事裁判のために開示してもらうことができることになっています。

まず、加害者が起訴された場合には、刑事確定訴訟記録法4条により、検察官が証拠として裁判所に提出した実況見分調書や供述証拠などを民事訴訟のために開示してもらうことができます。ただし、刑事裁判の判決が確定したあとに開示されます。

一方、加害者が不起訴だった場合には、弁護士会照会の手続をすることになりますが、実況見分調書のみが開示される扱いになっています。

2.供述調書の効果

供述調書は、刑事事件のために作成されるものであるとはいえ、交通事故に至る前の行動から、交通事故が起きた時の状況およびその後の被害者・加害者の行動まで、加害者や被害者が語ったことが詳細に記載されています。

警察や検察は、事故現場の道路の形や広さ、一時停止などの規制の有無、道路の見通しの状況、事故直後の現場の状況、事故車両の写真や被害者の負傷の状況など、数多くの証拠を集め、これらの証拠も踏まえた上で、加害者や被害者から状況を聞いて、供述調書を作成していますので、供述調書で語られている内容は重要です。

さらに、目撃者がいる場合には、その目撃者が無関係な第三者であれば、その人が語った内容というのは、非常に重要な証拠になります。

民事訴訟における供述調書の主な効果は、下記の2つです。

①交通事故直後の供述を確認できる

特に警察で事故直後に作成された供述調書は、事故直後の記憶に基づいて語られているため、非常に重要です。

②供述の変遷の有無により、それぞれの言い分の信用性を判断できる

また、供述調書は、警察と検察で時期を変えて作成されていますから、供述が変遷していっていることがあります。

つまり、供述の内容が、だんだんと自分の都合のいいように変わっていったりすると、この人が今、主張していることは信用できないというふうに判断する材料になってしまいます。

一方、事故直後から、主張している内容が一貫していると、信用性が高いと判断されやすくなります。

3. 供述調書における主張や署名で注意すべき点

相手の供述調書をどうこうすることはできませんが、自分の供述調書については注意することができます。

自分の供述調書が作成される場合に、刑事事件だけではなく、民事事件の証拠にもなることを意識しておきましょう。以下の点に注意して、供述するようにしてください。

①記憶に従って分かりやすく説明する

まず、記憶に従った供述をすることです。嘘をついても、他の証拠などと整合しなかったり、前についた嘘にさらに嘘を重ねなければいけなくなり、徐々に不自然な供述になったりするので、結局はバレます。

1つでも嘘をついていたことがバレると、正直に言っている他のことまで信用されなくなります。

さらに、警察官や検察官の質問をよく聞き、分かりやすいように説明することです。分かりやすく説明することで、分かりやすい供述調書を作成してもらうことができます。

②誘導に乗らない

警察官や検察官が、思い込みや加害者・目撃者の供述などから、こうじゃなかったですか?というように誘導して質問することもあります。

捜査機関が言うのだから……と思って誘導に乗ると、後で違うと思っても、原則として変更できなくなります。変更しようとすると、不合理な変遷と捉えられてしまうこともあります。

自分の記憶と違う誘導には乗らずに、自分の記憶に従って、供述しましょう。

③供述調書に記載された内容が自分の伝えた内容通りかを確認する

供述調書は、自分が話したことを警察官や検察官が書面にまとめます。やはり、他人が書面にまとめるとニュアンスが違うのではないかと思うような表現になっていたり、うまく伝わっていなかったりすることもあります。

出来上がった供述調書は、よく読んで、間違っているところや気になったところは訂正してもらいましょう。先にもお伝えした通り、一度署名押印した供述調書は、後で訂正することが出来ません。そのため、きちんと訂正してもらないかぎり、署名・押印してはいけません。

4.まとめ

交通事故に遭ったら、誰でも焦ってしまうものですが、だからと言って供述調書へ安易に署名するのは大変危険です。

落ち着いて、内容をしっかり確認した上で署名するようにしましょう。

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