後遺障害

後遺障害で障害者手帳の申請はできるのか?

後遺障害で障害者手帳の申請はできるのか?

交通事故で大きなけがを負ってしまった場合、完治せず身体の機能を失ってしまうことがあります。

脊髄への損傷による身体機能障害や手・足などの身体の一部を喪失した場合など、身体に障害を負うと身体障害者手帳を申請すると聞かれることがあるでしょう。

一方、事故のけがで後遺障害が残った場合には後遺障害認定を申請し、認められればその等級に応じた慰謝料等を請求することが可能となります。

では、交通事故による後遺障害で身体障害者手帳の申請をすることはできるのでしょうか?また、どのような身体障害に障害者手帳は交付されるのでしょうか?

今回は、後遺障害と障害者手帳の関係について詳しくご説明します。

1.身体障害者手帳の法的意味と交付対象

(1) 身体障害者手帳とは

厚生労働省は身体障害者手帳制度の概要について、「身体障害者福祉法に定める身体上の障害がある者に対して、都道府県知事、指定都市市長又は中核市市長が交付する。」と定めています。

一方、身体障害者の自立と社会経済的活動への支援を目的とした身体障害者福祉法は、その4条で身体障害者を「身体上の障害がある十八歳以上の者であつて、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたもの」と定義しています。

具体的な障害については別表の一覧に示されていますが、身体障害者としての公的な支援を受けるためには、身体障害者手帳を交付される必要があるということです。

一 次に掲げる視覚障害で、永続するもの
  1. 両眼の視力(万国式試視力表によって測ったものをいい、屈折異常がある者については、矯正視力について測ったものをいう。以下同じ。)がそれぞれ0.1以下のもの
  2. 一眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下のもの
  3. 両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの
  4. 両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの
二 次に掲げる聴覚又は平衡機能の障害で、永続するもの
  1. 両耳の聴力レベルがそれぞれ70デシベル以上のもの
  2. 一耳の聴力レベルが90デシベル以上、他耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの
  3. 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50パーセント以下のもの
  4. 平衡機能の著しい障害
三 次に掲げる音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
  1. 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の喪失
  2. 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の著しい障害で、永続するもの
四 次に掲げる肢体不自由
  1. 一上肢、一下肢又は体幹の機能の著しい障害で、永続するもの
  2. 一上肢のおや指を指骨間関節以上で欠くもの又はひとさし指を含めて一上肢の二指以上をそれぞれ第一指骨間関節以上で欠くもの
  3. 一下肢をリスフラン関節以上で欠くもの
  4. 両下肢のすべての指を欠くもの
  5. 一上肢のおや指の機能の著しい障害又はひとさし指を含めて一上肢の三指以上の機能の著しい障害で、永続するもの
  6. 1 から 5 までに掲げるもののほか、その程度が 1 から 5 までに掲げる障害の程度以上であると認められる障害
五 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害その他政令で定める障害で、永続し、かつ、日常生活が著しい制限を受ける程度であると認められるもの (身体障害者福祉法施行令 第36条)法別表第五号に規定する政令で定める障害は、次に掲げる機能の障害とする
一 ぼうこう又は直腸の機能
二 小腸の機能
三 ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能

(2) 身体障害者手帳の等級

身体障害者手帳では、障害の程度に応じて1級~7級までの等級が定められています。

1級が最も重い等級ですが、単独の障害で最軽度等級の7級に該当する場合には、法的に身体障害者として認定されず身体障害者手帳を交付されることはありません。

7級の障害が2つ以上ある場合には併合して6級に認定されるため、身体障害者手帳がもらえます。

2.身体障害者手帳による支援

(1) 受けられる助成やサービス

身体障害者手帳が交付されることで割引サービスや補助金などの様々な支援を受けることができます。

また、一度発行されると更新はないため、一生涯使用が可能となります。それはつまり、認定された身体障害が回復する見込みはないものであるということが前提となっているということです。

(2) 助成の具体的内容

例えば、以下のような割引やサービスが受けられます。

①医療費の助成

国の公費負担医療制度のひとつである自立支援医療の「更生医療」での助成が受けられます。

指定の医療機関で身体障害を除去・軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できるものについては、自己負担が原則1割ですみます。

18歳以上の身体障害者が対象ですが、18歳未満の場合には同様の「育成医療」という制度が用意されています。

また、地方自治体ごとに独自の医療費助成も設けられ、更生医療や育成医療など国の公費負担医療制度と併用できる場合もあります。

②車いすや補聴器などの補装具の助成

障害者の日常生活を容易にするため車いすなどの必要な補装具を交付したり、購入や修理の費用への助成を受けたりすることができます。

購入や修理の場合は原則市区町村が9割を負担してくれるので、自己負担は1割だけです。

③リフォーム費用の助成

障害者の住環境を改善するため、手すりを取り付けたり、段差を解消したりするなどの住宅リフォーム費用の助成も受けられます。

助成の内容は障がいの種類や等級によって異なります。

④所得税・住民税・自動車税などの軽減

一定額の所得控除を受けることができ、所得税や住民税が軽減されます。

また、相続税や贈与税での特例、障害者本人が所有する自動車の自動車取得税・自動車税・軽自動車税の減免を受けることもできます。

⑤公共料金などの割引サービス

鉄道やバスなどの公共交通機関を利用する際、身体障害者手帳を提示することで運賃の割引が受けられます。

また、タクシーや飛行機、高速道路の利用料金、NHKの放送受信料、携帯電話会社などの料金割引サービスが受けられます。

さらに、美術館や博物館、動物園など多くの公共施設では、手帳を提示して入場料割引が受けられるサービスが充実しています。

⑥障害者雇用枠での就職

障害者雇用促進法は、従業員数50人以上の一般事業所は全従業員の20%以上に身体障害者または知的障害者を雇用することを義務付けています。

身体障害認定を受けると、一般採用に加えて障害者雇用で採用される可能性が広がります。

このように、身体障害者手帳は、障害に関する医療費や生活面での経済的負担を軽減し、障害を持つ方を様々な側面から支援する利用価値の高い手帳です。

3.申請方法

(1) 身体障害者手帳の申請手続き

身体障害者手帳の申請の手続きは、住んでいる市区町村の障害福祉の担当窓口で行います。申請の際には、基本的に以下のものが必要となります。

  • 交付申請書
  • 指定医による身体障害者診断書・意見書
  • 写真・印鑑

(以下、代理人が申請する場合には)

  • マイナンバー
  • 代理権の確認用書類(委任状など)
  • 代理人の身元確認書類

(2) 申請から認定されるまで

身体障害者手帳を取得するまでの期間としては、必要書類の提出から交付まで平均約1か月ほどです。

ただ、身体障害者診断書や意見書に疑義があったり、身体障害者福祉法別表に該当しないと考えられたりするケースでは、さらに日数を要する場合があるようです。

申請するには以下のような手順を踏みます。

  1. 障害福祉担当窓口で「交付申請書」と「身体障害者診断書・意見書」の用紙を入手する(現在多くの自治体では、インターネットで申請書をダウンロードできるサービスを行っています。)
  2. 指定医に「身体障害者診断書・意見書」を記入してもらう
  3. 市区町村の障害福祉担当窓口に、「交付申請書」、「身体障害者診断書・意見書」、写真などの必要書類を提出して申請
  4. 審査されたのち、障害等級が決定する

(3) 身体障害者手帳を申請時の注意点

法的な身体障害に該当するためには、ハードルとなる事象や注意すべき点もありますので、確認しておきましょう。

①交付対象かどうか

先述したように、身体障害者手帳の交付は当該障害が変わることなく永続するものであることを前提とした制度です。

身体の障害として一時的なものや、けがの治療が十分行われていないため障害の継続性が判断できないなどのケースでは認められないこともあります。

②再認定制度の導入

医療技術の高度化により、一度認定を受けた障害を再認定することで等級が変わるケースもあります。

現在は、再認定制度を導入する地方自治体も増えてきました。また、逆に、障害がさらに進行して深刻な状況になっているケースもあるため見過ごせません。

適宜、実態に見合った等級認定がなされるように、再認定制度の対象者には再度診断書の提出を求める場合があるようです。

③指定医による診断書・意見書が必要

身体障害診断書は都道府県が指定した医師に作成してもらわなければなりません(身体障害者福祉法第15条第1項)。
交通事故のけがが原因の場合、治療のための通院先は各自決まっているでしょうから、治療を担当してもらっている医師や病院で身体障害診断書が書いてもらえるかを確認しておきましょう。
指定医がいない場合は、診断書を書いてもらえる医師を探す必要が生じます。

④診断書を入手したら早めに申請を

診断書の日付は、申請書を提出する日からあまり時間が経過していないことが肝要です。最大でも1年以内の診断書を提出するように、診断書を作成してもらってからは早めに申請しましょう。

ただし、身体に障害を負ったからと言って必ず身体障害者申請をしなければならないということではありません。

申請をするかどうか、身体障害者手帳を活用するかどうかはご本人が決めることです。

ご不安やご不明な点がある場合には、担当窓口に聞くか、弁護士に相談するなどしてみましょう。

4.後遺障害で障害者手帳の申請は可能?

(1) 身体障害者等級の申請と後遺障害等級認定との関係

交通事故によるけがが原因で身体に障害を負い後遺障害が残った場合、障害者等級に該当すると判断されれば障害者手帳の申請をすることができます。

ただ、身体障害者の申請をどのタイミングですればよいのか、よくわからないというケースも少なくないはずです。

特に、後遺障害が残った場合には、後遺障害等級認定への申請もしなければなりませんから、双方のタイミングや申請時期による影響などは前もって押さえておく方が望ましいでしょう。

(2) 両制度の申請先と制度趣旨

身体障害の等級認定は行政権が行いますが、交通事故のけがによる後遺障害等級の認定は自賠責保険会社が行うものです。

また、身体障害の等級認定を受け身体障害者手帳を交付されることで受けるメリットとは、先述した助成金の交付や様々な支援・サービスが受けられることです。

一方、後遺障害等級に認定されると、交通事故の損害賠償として後遺障害慰謝料と逸失利益(※1)が請求できるようになります。

つまり、両者は制度趣旨も目的も異なる全く別の制度です。各々、等級の内容や障害の程度も異なりますので、別々に申請しなければなりません。

※1本来得られるべきであるにもかかわらず、交通事故のけがによる後遺障害が生じたことによって得られなくなった利益

5.障害者手帳で慰謝料は増額する?

(1) 身体障害者認定申請のタイミング

交通事故によるけがで身体への障害が明らかになった時には、できるだけ早く身体障害認定を申請し身体障害者手帳を交付してもらうことが大切です。

障害が法的に認められ公的なサービス等を享受する権利を取得できれば、障害への負担を少しでも軽くすることが可能だからです。

一方、後遺障害認定への申請には症状固定(※2)することが必須となりますが、身体障害等級を申請した後も治療は続けられますので、十分納得のいく治療をしてから後遺障害への認定申請をすればよいのです。

※2治療を継続してもその効果が期待できず、残存する症状が最終段階に達したと判断できる状態

(2) 互いに影響することはない

身体障害認定と後遺障害認定とは全くの別物だと述べましたが、一方の認定結果が他方に影響するということもありません。

申請先も認定する機関も異なるからです。ですから当然、身体障害認定の結果によって後遺障害認定の等級結果や後遺障害慰謝料が影響を受けるということもないのです。

また逆に、交通事故の後遺障害が認定されたからといって身体障害者手帳の申請・交付ができるということにもならないということです。

6.まとめ

身体障害者手帳は、社会保障法のひとつである「身体障害者福祉法」に基づいて作られました。

身体障害者福祉法に基づく様々な支援は全国共通の福祉政策ですから、障害者手帳はそれを法的に証明するものです。

一方の後遺障害等級認定制度は、交通事故という不法行為の行為者に対し損害賠償を請求する権利を、被害を受けた人に認めたものです。

両者は異なる制度ですが、交通事故で後遺障害を負った被害者にとっては、いずれの制度も十分利用する価値のあるものです。

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