後遺障害 [公開日] [更新日]

鎖骨、胸骨、肩甲骨の後遺障害。弁護士に示談交渉を依頼するメリット

鎖骨、胸骨、肩甲骨の後遺障害。弁護士に示談交渉を依頼するメリット

交通事故では、身体の様々な場所にケガをする可能性があります。事故で身体の上肢に衝撃を受けたときには、鎖骨や胸骨、肩甲骨を骨折する場合もあります。

上肢の骨を骨折すると患部を外固定されるので、生活するにも不便な日が続きます。稀なケースではありますが、肩の可動範囲が狭くなったり、骨の奇形、痛みの残存といった後遺障害が残るケースもあります。

この記事では、交通事故で鎖骨、胸骨、肩甲骨に傷害を受けたときの症状や加害者に請求できる慰謝料について解説します。

1.鎖骨、胸骨、肩甲骨を骨折する原因と症状など

最初に、鎖骨、胸骨、肩甲骨が交通事故によって骨折するケースとその際の治療法について確認しておきましょう。

(1) 鎖骨

鎖骨は、胸骨と肩甲骨の間にある緩くS字状に湾曲した棒状の骨です。左右一対で存在しています。

鎖骨は、胸骨と肩甲骨をつなぐことで肩の構造を支え、筋肉の付け根(起始基盤)としても機能しています。

①鎖骨の傷害とその原因

鎖骨は、人体のなかで最も折れやすい骨です。交通事故による鎖骨の傷害は鎖骨骨折が最も多くなります。

鎖骨は肩部の衝撃を吸収する役割も担っているので、鎖骨に直接衝撃が加わった場合だけでなく、肩部に衝撃を受けたときでも骨折することがあります。

シートベルトの着用は鎖骨骨折を防ぐためにも有効です。

②鎖骨骨折の治療法

鎖骨骨折した場合には、保存治療が選択される場合が多いです。

鎖骨は骨の形成力が強いため、保存療法でも比較的早期に回復するためです。保存治療は、三角巾もしくは鎖骨バンドによる外固定により行われます。

外固定は三角巾(鎖骨バンド)をつけてもつけなくても痛みに差が生じない状態になるまで継続しますが、一般的には2週間程度といわれています。

粉砕があるときや、皮膚は列寸前のケース、さらには、開放骨折、血管損傷を伴うときには手術によって治療します。

手術により鎖骨をプレートもしくはワイヤーで固定します。

患部の固定によって肩回りの筋肉の硬化や筋力低下・関節の動きの低下があるときには、リハビリの必要も生じます。

特に筋力の低下が大きいときには、再度の骨折のリスクが高まるため、筋力回復のためのリハビリは必須といえます。

(2) 胸骨

胸骨は、胸部前面の正中部(鎖骨の間からみぞおち辺り)にある平たい形状の細長い骨で、上から胸骨柄・胸骨体・剣状突起の3つの部分から構成されています。

①胸骨の傷害とその原因

胸骨骨折の頻度はあまり多くありません。交通事故の際に運転者が前胸部をハンドルに強く打ち付けられると、胸骨柄、胸骨対の境界部を骨折することがあります。

また、事故の際シートベルトに締め付けられた衝撃で損傷するケースもあります。

胸骨骨折の症状としては疼痛、局所圧痛、腫脹、縦隔症状などがあります。

②胸骨骨折の治療法

胸骨骨折のほとんどは、保存治療で骨接合するとされています。

保存治療は、絆創膏やバストバンドによる固定を4週間前後行います。

内臓損傷を合併している場合のように、呼吸や循環に支障を来しているときには、手術により治療することもあります。

胸骨骨折の際に生じる痛みは、肋骨骨折の場合に比べれば軽微なことが多いです。

痛みに対しては、鎮痛剤(ロキソニンなど)や貼り薬(湿布)を処方して対応します。

なお、胸骨骨折の場合にリハビリが必要となることはほとんどありません。

(3) 肩甲骨

肩甲骨は、肩に一対ある三角形状をした大きな骨で、後方から肋骨を覆うように存在しています。

肩甲骨はあらゆる動きに対応するために8方向に可動し、多くの筋肉が付着している重要な骨です。

①肩甲骨の傷害とその原因

肩甲骨が骨折するケースはあまりありませんが、バイク事故で転倒したり、ガードレールなどに強く打ち付けられた際に骨折することがあります。

骨折部位により診断は異なりますが、一般的には肩甲骨体部と肩甲骨頸部の骨折が多いとされています。

肩甲骨骨折の症状としては、局所の圧痛や腫れのほか、呼吸した際や肩関節を動かしたときに痛みを感じることがあります。また、肩関節に近い部位を骨折したときには、腕の上げ下げや腕を回すことが難しくなることもあります。

なお、肩甲骨を骨折したときには、肋骨や鎖骨などの周辺の骨もあわせて骨折していることが多いです。肩甲骨が骨折するのはそれだけ強い衝撃を受けたときが多いためです。

②肩甲骨骨折の治療法

肩甲骨骨折の治療も、鎖骨や胸骨の場合と同様に保存治療が選択されることがほとんどです。患部の上肢を三角巾で吊って固定する方法が一般的です。

治療期間は6週間程度で治癒する(症状が重大なケースでも3ヶ月程度)とされています。

肩甲骨は、肩の可動に直接影響を及ぼすため、リハビリが特に重要です。

痛みに耐えられる限りでできるだけ早期からリハビリを始めることが大切とされています。

「リハビリは面倒だから」と疎かにする人も少なくありませんが、注意が必要です。

適切なリハビリを行うことは、後遺症を残さないためにも、万が一後遺症が残った場合のためにも非常に重要だからです。

適切なリハビリが医療記録で確認できない場合には、後遺障害認定や慰謝料請求の場面で不利な扱いをうける可能性もあります。

2.後遺障害が残る場合とその際の慰謝料

鎖骨・胸骨・肩甲骨の骨折で後遺症が残ることは珍しいケースです。

しかし、骨折の状況が悪い場合などには、次のような後遺障害が残ることもあります。

  • 可動域制限
  • 変形障害
  • 神経障害(痛みの残存)

(1) 可動域制限

交通事故の受傷が原因で、関節が健康なときと比べて十分に曲がらなくなってしまうことがあります。このような後遺障害を「可動域制限」と呼びます。

鎖骨骨折・肩甲骨骨折の場合に、可動域制限が生じることがあります。

可動域制限はその程度によって次のように障害等級の認定が異なります。

後遺障害等級 後遺障害の程度
第1級第4号 両上肢の用を全廃したもの
第5級第6号 1上肢の用を全廃したもの
第6級第6号 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
第8級第6号 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
第10級第10号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
第12級第6号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

「関節の用を廃する」とは、関節がこわばって完全に動かない状態やこれに近い状態(可動が10%以下に制限された場合)のことをいいます。

「著しい障害」とは、可動が1/2以上に制限された状態、「障害を残す場合」は、可動が3/4以上に制限された場合をいいます。

この可動の程度は、本人の意思で曲げられる範囲ではなく、医師などの他人の力で曲げられる限界で判定されます。

なお、可動域制限が残る多くのケースは、12級6号もしくは10級10号の認定となります。

この際の慰謝料額は、290万円(12級)もしくは550万円(10級)が相場とされています(弁護士基準の場合)。

(2) 変形障害

鎖骨、胸骨、肩甲骨の骨折部位が変形して癒合したときには、変形障害として12級5号の障害認定を受けることができます。

ただし、12級5号の後遺障害等級の認定を受けるためには、「見た目にはっきりわかる程度の変形がある」ことが必要です。

つまり、レントゲンを撮ればわかるという変形では足りず、裸になったときに視認できるほどの変形でなければなりません。12級5号の慰謝料額は290万円が相場とされています(弁護士基準の場合)。

なお、上肢部の変形障害については、逸失利益の算定との関係で労働能力喪失の有無が争点となることが少なくありません。

たとえば、鎖骨が変形のため露出したとしても、可動に問題がなく痛みも残っていないときには、労働能力は喪失していないと保険会社から主張される場合もあります。

(3) 神経障害

鎖骨、胸骨、肩甲骨を骨折したときには、適切な治療を受けてもなお痛みが残る場合があります。

12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)もしくは、14級9号(局部に神経症状を残すもの)の認定となる可能性があります。

慰謝料額の相場は、12級は290万円、14級は110万円とされています(弁護士基準の場合)。

(4) 複数の症状があるとき

鎖骨、胸骨、肩甲骨の骨折に後遺障害が残ったときには、「可動域制限」と「変形障害」の両方が発生するということもあり得ます。

このような場合には、生じている障害の等級を「併合」して等級認定が行われます。併合の基準は、自動車損害賠償保障法施行令(第二条の三、ロ~ホ)が定めています。

鎖骨、胸骨、肩甲骨骨折との関係では、次のような場合があります。

認められる後遺障害 併合の等級
可動域制限(12級6号)と変形障害(12級5号)とが認められる場合 併合11級
可動域制限(10級10号)と変形障害(12級5号)とが認められる場合 併合9級

なお、変形障害と神経障害(14級)とが認められるときには、上位の行為障害である変形障害(12級5号)の認定となります。14級の後遺障害については、併合しても等級の繰り上げがないためです。

また、可動域制限があるときには、痛みもあることが通常なので、神経障害との併合はされません。

後遺障害の併合については「後遺障害の併合で等級はどうなる?慰謝料の計算方法とは」で詳しく解説しています。

3.示談交渉を弁護士に依頼することのメリット

死亡事故や頭部傷害のようなケースとは異なり、鎖骨や胸骨の骨折では「弁護士に依頼するまでもない」と考えている人も少なくないかもしれません。

しかし、鎖骨、胸骨、肩甲骨を骨折したケースであっても弁護士に示談交渉を依頼することには次のようなメリットがあります。

  • 十分な治療をうけることができる
  • 適切な後遺障害等級の認定を受けられる
  • 適切な慰謝料・逸失利益を受け取ることができる

鎖骨や肩甲骨の骨折は、リハビリが非常に重要です。適切な時期から十分なリハビリを行うことが後遺傷害を防ぐために大切だからです。

しかし、保険会社から早期の症状固定を求められたりすれば、十分な治療を受けられない可能性があります。

示談交渉を弁護士に依頼すれば、保険会社から症状固定を求められたときにも適切に対応することができます。

また、鎖骨、胸骨、肩甲骨の骨折が後遺障害を生じることは一般的には珍しいことです。

そのため、後遺障害があることが疑われるときでも、事前認定による後遺障害等級認定では、適切な等級の認定を得られない可能性もあります。

事前認定は加害者側保険会社が後遺障害等級の認定手続きをするものですが、被害者にとって有利な申請がされない可能性もあります。

後遺障害等級認定は書面審査なので、「資料が十分ではない」だけで等級認定に不利益が生じます。

交通事故案件の経験が豊富な弁護士事務所にご依頼いただければ、適切な等級認定を受けるためのサポートを受けることができます。

さらに、等級認定を被害者自身で行う(被害者請求)は、一般の方にとってはかなり煩雑な手続きです。

その道のプロである保険会社の担当者と被害者本人が対等に交渉することは難しいことも少なくないでしょう。

弁護士にご依頼いただければ、これらの手続きや交渉をすべて一任することができ、必要な治療やリハビリに専念することができます。

ところで、交通事故の損害賠償額の算出基準には、「自賠責基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準(裁判所基準)」の3つの基準があります。

弁護士が介入しない示談交渉では、保険会社は自賠責基準・任意保険基準に基づいて慰謝料額を提示します。この場合の提示額は、必要最低限(以下)の金額に過ぎないことも少なくありません。

たとえば、後遺障害等級14級のときの自賠責基準の慰謝料額は32万円です。弁護士基準を適用すれば110万円が相場なので、実に1/3の補償しか受けられないことになります。

任意保険基準は、自賠責基準と弁護士基準の中間の基準ですが、弁護士基準の半額程度というケースも珍しくありません。

保険会社から提示された慰謝料額に疑問があるときには、すぐに示談に応じず、弁護士にご相談されることをおすすめします。

4.まとめ

鎖骨、胸骨、肩甲骨の骨折は、後遺障害が残ることはまれです。しかし、肩関節などの上肢に後遺障害が残ったときには、不便な生活を強いられることになります。

このようなときには、必要十分な補償をうけることが大切です。

後遺障害による適正な慰謝料を確保するためには、後遺障害認定の段階から交通事故事件の専門家によって十分なサポートを受けることが重要です。

交通事故の被害に遭って不安なことが生じた際には、できるだけ弁護士にご相談ください。

泉総合法律事務所では、被害に遭われた方が安心して治療に専念できるよう、1日もはやく静かな生活を取り戻せるように全力でサポートさせていただきます。

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