後遺障害 [公開日]2018年4月27日[更新日]2018年9月4日

肋骨、骨盤骨の骨折による後遺障害認定基準と慰謝料を弁護士が解説

肋骨、骨盤骨の骨折による後遺障害認定基準と慰謝料を弁護士が解説

交通事故で胸部に損傷をうけたときには、肋骨骨折となることが少なくありません。

また、歩行者対車両の事故で、歩行者が尻もちを付いたケースや、骨盤周辺に追突されたときには、骨盤骨を骨折することがあります。

特に骨盤骨の骨折は、股関節や骨盤周辺の内臓にも影響を与えることがあり重篤な症状が残ってしまうこともあります。

この記事では、交通事故で肋骨、骨盤骨を骨折したときの症状や、加害者に請求できる慰謝料について解説します。

1.肋骨、骨盤骨を骨折する原因と症状など

まずは肋骨と骨盤骨を交通事故によって骨折する場合の原因とその際の治療法について確認しておきましょう。

(1) 肋骨

肋骨(ろっこつ)は、胸部内臓を覆う細い骨です。あばら骨と呼ばれることもあり、一般的にもよく知られている骨といえます。

肋骨は、内臓を外傷から保護する役割を果たしていて、脊椎から内臓を取り囲むように付いています。

①肋骨骨折の原因と症状

肋骨は細長い骨であるため、骨折しやすい骨として知られています。

交通事故の場合はもちろんのこと、机にぶつけた程度の衝撃や、高齢の方などでは咳をしただけでも肋骨骨折となる場合があります。

実際の交通事故による胸部外傷で最も多いのも肋骨骨折です。

肋骨骨折の症状としては、痛みや圧痛、皮下出血や腫れが生じることがあります。

また、身体を反らす、荷物を持ち上げる、深呼吸や咳・くしゃみの際に痛みを感じることがあります。

なお、肋骨骨折は、深く折れて内臓に刺さったというような事態にならない限りは、症状も軽微であることが一般的です。

人の肋骨は12対(24本)あり、それぞれ支え合っているため、そのうちの1本が折れた程度では大きな負担とならないことが多いからです。

②鎖骨骨折の治療法

肋骨骨折の程度が軽微であるときには、痛み止めや湿布薬を処方した上で経過観察とすることが少なくありません。

痛みがやや強いときには、バストバンドなどで圧迫固定をする保存治療が選択されます。

手術適合となるのは、何本も深く折れているケースなどのごく限られたケースのみです。

(2) 骨盤

骨盤輪は、数多くの部位から構成され、体重を支えたり、骨盤内臓器を保護する役割を担っていたりする非常に重要な部位です。

①胸骨の傷害とその原因

骨盤骨骨折の原因の大半は、交通事故などによる大きな外的衝撃によるものです。

折れてしまった部位によって、骨盤輪骨折(骨盤の環状構造の破綻)、寛骨臼(かんこつきゅう)骨折(股関節の関節面を形成する部位の骨折)などの診断となります。

胸骨骨折の症状としては疼痛、局所圧痛、腫れなどがあります。

症状が重篤なケースでは、骨盤骨が保護している内臓器にも影響が及ぶことで排泄障害などが残ることもあります。

ところで、交通事故によって骨盤骨折した場合には、重篤な結果となることも少なくありません。

交通事故における骨盤骨折は、頸椎損傷、胸部外傷について重篤なケースであると認知されています。

骨盤骨骨折のときには、大量に出血することも多く、出血と痛みでショック状態になることもあります。

②胸骨骨折の治療法

骨盤輪骨折の治療は、破綻の程度に応じて、選択する方法が異なります。症状が軽いケースでは、骨折部を外固定することで保存治療を行います。

それと同時に、骨盤周囲の血管や膀胱・直腸・尿道などに損傷がないかきちんと検査する必要があります。

これらの部位に損傷があるときには、それぞれの専門医と連携をとりながら治療にあたる必要があります。

破綻の程度が中程度(部分不安定型骨折)のときには、2週間程度ベッド上での安静の後に、車いす、松葉杖歩行と段階的に対応していきます。

骨盤輪の後方部が完全に破綻しているケース(完全不安定型骨折)では、手術適合となります。

この場合にはプレートなどで骨折部位を固定する処置がなされます。

骨盤骨折ではリハビリも重要です。外固定により筋力が低下した場合にはそれを回復させる必要があります。

しかし、骨盤は体重を支える部位でもあり、損傷の程度に応じて、慎重にリハビリを進める必要があります。

2.後遺障害が残る場合とその際の慰謝料

肋骨骨折や骨盤骨骨折となったときには、どのような後遺障害が残る可能性があるのでしょうか。

慰謝料相場とあわせて確認していきます。

(1) 肋骨骨折の後遺障害

肋骨骨折のときには、変形障害と神経障害が残る可能性があります。

折れた肋骨が変形して接合してしまったときには、変形障害として12級5号の障害認定を受けることができます。

ただし、12級5号の後遺障害等級の認定には、「外見として明確に視認できる程度の変形」がなければなりません。

つまり、レントゲンを撮らなければ変形はわからないというときには、変形障害の認定を受けられないということです。

なお、12級5号の慰謝料額は290万円が相場とされています(弁護士基準の場合)。

また、治療終業後も骨折部位に痛みが残る場合には、神経障害として12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)もしくは、14級9号(局部に神経症状を残すもの)の認定を受けられる場合があります。

この場合の慰謝料額の相場は、12級は290万円、14級は110万円です(弁護士基準の場合)。

(2) 骨盤骨骨折の後遺障害

骨盤骨を骨折したときには、重篤な後遺症が残ってしまう場合もあります。

①股関節の可動域制限

骨盤骨を骨折したことが原因で股関節が健康なときと比べて十分に曲がらなくなってしまう「可動域制限」が残ってしまうことがあります。

股関節の可動域制限はその程度によって次のように障害等級の認定が異なります。

後遺障害の状態 後遺障害認定等級
股関節の完全弛緩性マヒ(力が全く入らない状態) 8級7号
人工関節などに置換した場合で機能に著しい障害を残したとき
人工関節などに置換した場合 10級11号
股関節の機能に著しい障害を残す場合
股関節の機能に障害を残す場合 12級7号

「著しい障害」とは、障害のない側と比べて可動が1/2以上に制限された状態、「障害を残す場合」は、障害のない側との比較で可動が3/4以上に制限された場合をいいます。

なお、この可動の程度は、医師などの他人の力で曲げられる限界で判定されます。自分では曲げられないという程度ではないことに注意が必要です。

②骨盤骨の変形

他の骨の骨折の場合と同様に、骨折部分が変形して癒合したときには、12級5号が認定されます。

12級5号の認定には、外見上明らかな変形であることが必要なのも、肋骨の場合と同様です。

また、寛骨臼や尾骨の骨折や股関節の脱臼骨折となったときには、下肢の短縮が残る場合があります。

下肢短縮が残ったときには、その程度に応じて後遺障害等級が認定されます。

下肢短縮の程度 後遺障害等級
1下肢の5センチメートル以上の短縮 8級5号
1下肢の3センチメートル以上の短縮 10級8号
1下肢の1センチメートル以上の短縮 13級8号

さらに、女性が骨盤骨を骨折したときには、変形により産道が狭まり正常分娩が困難となることがあります。その場合には、11級10号が認定されます。

③神経障害(痛みの残存)

骨折部位の癒合後も痛みが残るときには、その状況に応じて、次のとおりの認定と受けることができます。

  • ・レントゲンやMRIなどの画像診断で痛みの原因が確認できる場合には12級13号
  • ・レントゲンやMRIなどの画像診断で痛みの原因が確認できない場合には14級9号

④骨盤骨骨折の後遺障害慰謝料

骨盤骨を骨折したときの後遺障害に対する慰謝料の相場額は、次のとおりです(弁護士基準の場合)。

後遺障害等級 弁護士基準での慰謝料額 自賠責基準での慰謝料額
8級 830万円 327万円
10級 550万円 187万円
11級 500万円 135万円
12級 290万円 93万円
13級 180万円 57万円
14級 110万円 32万円

3.弁護士に示談交渉を依頼することのメリット

交通事故の被害に遭ったときに、弁護士に依頼することには次のようなメリットがあります。

  • 保険会社と対等に交渉することができる
  • 十分な治療をうける機会を確保ができる
  • 適切な後遺障害等級の認定を受けられる
  • 十分な損害賠償額を受け取ることができる

保険会社は交通事故の示談交渉のプロです。交通事故被害者が単独で保険会社と対等に示談交渉を行うことは難しい場合があるでしょう。

また、受傷により痛みが続くなかで自ら示談交渉を行うことはかなり辛い作業であるともいえます。

また、保険会社より早期の治療打ち切りや症状固定を求められたときにも、弁護士であれば十分な治療を受ける機会を確保するために必要なサポートが可能です。

後遺障害が残ってしまったときには、適切な後遺障害等級の認定を受けることが何よりも重要です。

保険会社任せの事前認定では、書類不足などへの懸念がないわけではありません。

治療期間中の交渉経緯などから保険会社の対応に心配があるときには、早めに弁護士にご相談・ご依頼いただいた方がよいでしょう。

交通事故の損害賠償額の算出基準には、「自賠責基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準(裁判所基準)」の3つの基準があります。

自賠責基準による算定が最も賠償金が安く、弁護士基準が最も高額な算定となります。

弁護士が介入しない示談交渉で弁護士基準による損害賠償額が提示されることはまずありません。

特に、後遺障害が残るケースでは、弁護士基準とそれ以外の基準とで受け取れる補償額が100万円以上異なることもあります(慰謝料が2倍、3倍、1000万円差!?弁護士基準と任意保険基準は大違い)。

保険会社から提示された慰謝料額などに不満があるときには、まずは弁護士にご相談ください。

ご依頼前に慰謝料増額の可能性について検討することも可能です。

4.まとめ

交通事故で骨盤にダメージを受けたときには、特に後遺症に配慮する必要があります。

下肢に不便を感じることは生活する上で大きな負担となります。後遺障害の認定等級も上肢よりも下肢の障害の方が重くなります。

後遺障害が残ることが疑われるケースでは、症状固定前の治療段階から交通事故の実績が豊富な弁護士によるサポートを受けることが非常に大切です。

弁護士にご依頼いただくことで、症状固定への対応、適切な障害等級の認定、十分な補償の確保が実現され、ケガの治療やリハビリに安心して専念することができます。

交通事故でお困りの時には、些細なお悩みであっても泉総合法律事務所までご相談いただけたらと思います。

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