後遺障害 [公開日]2018年2月6日[更新日]2018年8月30日

交通事故における後遺障害1級の慰謝料相場と逸失利益の計算

交通事故における後遺障害1級の慰謝料相場と逸失利益の計算

交通事故における後遺障害とは、交通事故によるケガが、 一般的に確立されている治療を行っても一進一退の状態となり(症状固定)、将来においても回復の見込めない状態(後遺症が残存してしまった状態)で、その程度が自賠法施行令の等級(後遺障害1級から14級)に該当するもののことです。

後遺障害は後遺障害1級から14級までの等級で分類されており、後遺障害1級は後遺障害の中でも一番重い後遺障害の等級です。

今回のコラムでは、どのような後遺障害が後遺障害1級に該当するのか、見ていきましょう。

1.後遺障害1級に該当する後遺症

それでは、どのような後遺症が後遺障害1級になるのでしょうか。

後遺障害1級は、まず

  • 介護を必要とする後遺障害1級
  • 介護を必要としない後遺障害1級

に分類されます。

(1) 介護を必要とする後遺障害1級

介護を必要とする後遺障害1級は、さらに以下の2つに分類されます。

①神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

これは、脳の障害、脊髄(せきずい)の障害などによって生命維持に必要な身の回りの処理の動作について、常に他人の介護を必要とするものを言います。

たとえば、

  • 高度の四肢麻痺が認められる場合
  • 四肢麻痺が中程度であっても食事、入浴、用便、更衣などに常時介護が必要な場合
  • 認知症、情意の障害、幻覚、妄想などのため常時他人による監視が必要な場合

などです。

②胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

これは労務に服することができず、生命維持に必要な身の回りの処理の動作について、常時介護を必要とするものを言います。

たとえば、呼吸機能の低下により常時介護を必要とする場合です。

(1) 介護を必要としない後遺障害1級

次に、介護を必要としない後遺障害1級は以下の6つに分類されます。

①両眼を失明したもの

「失明」とは、眼球を摘出したもの、明暗の区別ができないもの、およびようやく明暗の区別ができる程度のものを言います。

②咀嚼(そしゃく)および言語の機能を廃したもの

「咀嚼の機能を廃したもの」とは、流動食以外は摂取できないものを言います。

「言語の機能を廃したもの」とは、4種の語音(口唇音、歯舌音、口蓋音、喉頭音)のうち、3種以上の発音不能のものを言います。

③両上肢をひじ関節以上で失ったもの

  1. 肩関節において肩甲骨と上腕骨を離脱したもの
  2. 肩関節とひじ関節との間において上肢を切断したもの
  3. ひじ関節において上腕骨と橈骨(とうこつ)および尺骨とを離脱したもの

これら1〜3のいずれかに該当するものを言います。

④両上肢の用を全廃したもの

三大関節(肩関節、肘関節および手関節)のすべてが硬直し、かつ手指の全部の用を廃したものを言います。

⑤両下肢をひざ関節以上で失ったもの

  1. 股関節において寛骨(かんこつ:骨盤の側壁と前壁を作る骨)と大腿骨(だいたいこつ)を離脱したもの
  2. 股関節とひざ関節との間において切断したもの
  3. ひざ関節において大腿骨と脛骨(けいこつ:すねの内側の細長い骨)および腓骨(ひこつ)とを離脱したもの

これら1〜3のいずれかに該当するものを言います。

⑥両下肢の用を全廃したもの

三大関節(股関節、ひざ関節および足関節)のすべてが硬直したものを言い、これに加え足指全部が硬直したものも含まれます。

2.後遺障害1級の慰謝料相場

それでは後遺障害1級に該当すると慰謝料はいくらになるのでしょうか。

後遺障害1級に該当すると、被害者本人の慰謝料はおおよそ2800万円程度とされています。

さらに、後遺障害1級のような重度の後遺障害の場合、被害者本人の慰謝料だけではなく、その近親者(配偶者や子)にも被害者本人の慰謝料とは別に慰謝料が認められることがあります。

配偶者(夫または妻)の場合で慰謝料は300万円から400万円程度、子の場合で慰謝料は200万円から300万円程度とされています。

通常は被害者本人にしか慰謝料は認められないのですが、後遺障害1級の場合、その障害が極めて重度であることを理由に被害者本人のみならず、近親者(配偶者や子)にも慰謝料が認められるのです。

3.後遺障害1級の逸失利益の相場

逸失利益とは、後遺障害が残存してしまったことにより、将来にわたって十分な労働ができず、その分だけ労働能力を失ってしまった(将来の収入を失ってしまった)ことに対する賠償です。

その計算式は

①基礎収入×②労働能力喪失率×③労働能力喪失期間=逸失利益

との計算で算出されます。

【参考】後遺障害・死亡事故で請求できる逸失利益の具体例と計算方法を解説

①基礎収入

基本的には事故前年度の収入を基礎収入とします。

②労働能力喪失率

後遺障害1級から14級まで等級に応じて割合的に労働能力喪失率が定められています。

後遺障害1級の労働能力喪失率は100%とされています。

後遺障害14級の場合には労働能力喪失率は5%とされていますが、これと比較すると後遺障害1級で労働能力喪失率100%というものがどういうものかというのがよく分かるかと思います。

すなわち、たとえば頚椎(けいつい)捻挫で後遺障害が残存してしまった場合、後遺障害としては14級9号「局部に神経症状を残すもの」に該当するのがその典型です。

頚椎捻挫で労働能力喪失率5%というのは、後遺障害が残存したことにより5%分の労働能力が喪失した(将来の収入を失ってしまった)という意味です。

これに対して、後遺障害1級の労働能力喪失率100%というのは、100%分の労働能力が喪失した、つまり100%の収入を失ってしまったことを意味します。

冒頭で挙げた後遺障害1級の該当例(高度の四肢麻痺、両眼の失明、両上肢・両下肢の切断など)を見れば、労働能力喪失率100%というのも納得だと思います。

③労働能力喪失期間

症状が固定した時から就労可能な年齢の終期とされる67歳までの期間となります。

これも頚椎捻挫と比較するとよく分かります。

頚椎捻挫のような14級9号に該当する後遺障害の場合は、症状が消退していく可能性があることや、被害者側の就労における慣れなどの事情が考慮されて、労働能力喪失期間が5年を限度に制限されることがあります。

これに対して、後遺障害1級は症状が消退することはなく、被害者の就労における慣れなども通常はあり得ません。

そのため、就労可能な年齢の終期とされる67歳までの期間とされています。

これも冒頭で挙げた後遺障害1級の該当例(高度の四肢麻痺、両眼の失明、両上肢・両下肢の切断など)を見れば、就労可能な年齢の終期が67歳までとされるのも納得だと思います。

4.まとめ

後遺障害1級は後遺障害の等級の中では一番重い後遺障害等級であり、頚椎捻挫などの14級9号と比較したら、案件としては決して多くはないかもしれません。

【参考】後遺障害14級の慰謝料相場と逸失利益の計算方法

ですが、被害者本人はもちろんですが、そのご家族の方の精神的苦痛や負担は計り知れません。

だからこそ、事故直後からの適切な治療期間の確保、後遺障害1級を目指した後遺障害認定、示談交渉、そして解決に至るまでの一貫した専門家のサポートが必要不可欠なのです。

泉総合法律事務所では、これまでに数多くの交通事故被害者の方からご相談いただき、解決させてきました。その中で培われた実績や経験値、キャリアには絶対の自信がありますので、交通事故被害でお悩みの方は是非とも泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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