後遺障害 [公開日][更新日]

異時共同不法行為-治療が終わっていない間に別事故が起きてしまった

異時共同不法行為-治療が終わっていない間に別事故が起きてしまった

泉総合法律事務所の弁護士が担当したいくつかの案件の中で、治療が終わっていない間に別事故が起きてしまった、というケースがありました。

これは、異時共同不法行為と呼ばれるものです。

異時共同不法行為とは、例えば、交通事故の事件においては、1事故目の通院中に、2事故目が発生してしまい、その結果1事故目と同じ個所を負傷してしまった場合の事をいいます。

ご依頼される前の治療中に2つの事故が起きていたこともありますし、ご依頼後の治療中に2つ目の事故が起きてしまった場合もあります。

この場合、どのように事件を扱っていけばいいでしょうか。

今回のコラムでは、異時共同不法行為の場合にどう事件が進んでいくか、そしてどのような点に気を付けなければならないかという点をお伝えいたします。

1.異時共同不法行為とは

裁判での考え方

異時共同不法行為については、抽象的には、「1事故目の通院中に、2事故目が発生してしまい、その結果1事故目と同じ個所を負傷してしまった場合」なのですが、抽象的すぎるので、理解しやすくするために、たとえば、以下のような例で考えてみましょう。

1事故目 平成29年1月1日事故
場所:北海道 保険会社:A社
頸椎捻挫
治療費   25万円
休業損害等 25万円
慰謝料   50万円

 

2事故目 平成29年4月1日事故
場所:東京都 保険会社:B社
頸椎捻挫・腰椎捻挫
治療費      50万円
休業損害等    50万円
慰謝料     100万円

後遺障害部分  200万円(頚椎捻挫の神経症状で14級)

頚椎捻挫の部分で、損害が共通してしまっています。このような場合が、異時共同不法行為により、問題となりやすいケースです。

仮に、1事故目については頚椎のみ、2事故目については歩行時であり足の打撲ということであれば、ここでいう異時共同不法行為の話にはなって来ないと思われます。

ここでは、損害が共通している部位があるので、1事故目としては強制的に対応終了となり、2事故目の治療が開始しています。

なお、この異時共同不法行為というは、法律上出てくる用語ではありません。法律上は、共同不法行為(民法719条。特に後段の方。)というものがありますが、この様な場合、必ずしも法律上の共同不法行為と認定されないのです。

法律上の共同不法行為が認められるのであれば、2事故目部分について、1事故目・2事故目に対し、それぞれに満額請求することができます。たとえば、A社に2事故目の損害400万円を請求するという形です。

しかし現在の裁判実務では、客観的関連共同性という共同不法行為の要件が満たされないこと、簡単に言うと、全く別の日時場所であって、時間的や場所的に接着していないことが通常であるので、共同不法行為と認定しないことが多いとえます。

その代わり、裁判所は寄与分という概念を持ち出してきます。

つまり、1事故目の保険会社と2事故目の保険会社との間で、2事故目以降の損害に与えた影響を考慮の上、割合に按分して損害額を認定するということが通常です。

たとえば、1事故目と2事故目の寄与分が3:7だったとしたら、2事故目の損害について、A社120万円:B社280万円であり、1事故目と合計してA社220万円、B社は2事故目のみ280万円ということになります。

2.保険会社の扱い

(1) 自賠責での考え方

ところが、ややこしいことに、自賠責保険においては、裁判と異なり、時間的場所的接着性はなくても、異時共同不法行為と認め、1事故目と2事故目それぞれ一枠ずつ使えます。

具体的には、例でいう14級の後遺障害により、自賠責保険からは75万円×2の150万円が支給されることになります。

もっとも、自賠責保険から下りる金額は、既払い金扱い(難しい言葉でいうと、損益相殺の対象)になり、加害者らへの損害から控除されることになります。

ただし、2事故目に関し、当方の過失割合がやや大きい際は、2枠使えたことにより、裁判基準の損害全て賄える可能性もあります。

1事故目 平成29年1月1日事故
場所:北海道 保険会社:A社
頸椎捻挫
治療費       25万円
休業損害等     25万円
慰謝料       50万円
既払い金     -25万円
相手への請求可能額 75万円

 

2事故目 平成29年4月1日事故
場所:東京都 保険会社:B社
頸椎捻挫・腰椎捻挫
治療費        50万円
休業損害等      50万円
慰謝料       100万円
後遺障害部分    200万円(頚椎捻挫の神経症状で14級)
既払い金     -200万円(治療費+自賠責14級2枠分150万円)
相手への請求可能額 200万円

1事故目寄与分3:2事故目寄与分7=1事故目60万円:2事故目140万円

(2) 任意保険会社の扱い

2項で記載しましたが、通常は、2事故目発生に伴い、1事故目は強制的に対応終了となることが多いです。

そして、2事故目の任意保険会社が、2事故目以降の部分について、すべて担当することになります。

そうすると、2事故目以降の部分については、2事故目の損保とのやり取り・示談だけですべて終了します。

その後は、任意保険会社間での寄与分のやり取りになります。後遺障害や裁判にならない限り、異時共同不法行為ということがあまり表に出てこないのは、この様な理由と思われます。

3.注意点

1事故目と2事故目の加害者任意保険会社が、同じ保険会社であれば、問題なく情報が共有できていると思われます。

しかし、例の様に、1事故目と2事故目の保険会社が別であるという場合には、それぞれの保険会社が、自社で扱っている事故以外の事故については、把握していないというケースもあります。

その時は、必ず1事故目の保険会社に伝えて下さい。危険性が高いので、わからない場合は、専門家に聞いてから行動したほうが良いでしょう。間違っても重複請求をしないようにしてください。

いずれにせよ、加害者任意保険会社らが、それぞれ自賠責保険への加害者請求をした時に重複通院をしていることが判明してしまうでしょう。

その時に判明してしまうと、モラルハザード案件として、訴訟でしか解決できなくなってしまうということもあり得ます。

過剰診療等をしている場合には、請求認容額が相当減ってしまうこともありますし、治療費や休業損害等の既払い金額によっては不当利得返還請求をされることもあり得るところです。

さらに、態様によっては詐欺になってしまうこともあり得ます。

4.まとめ

異時共同不法行為は、示談で終わる場合には保険会社間の処理で済んでいたようですので、これまであまりメジャーな点ではありませんでした。

それ故に、情報が少なく、悪意がなくても、後から見て間違った行動をしてしまうということもあり得ます。

このような場合には、早めに専門家に相談しておいた方が望ましいでしょう。

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