過失割合

加害者による車線変更事故の過失割合〜事故に遭わないために〜

【この記事を読んでわかる事】

  • 車線変更事故の基本の過失割合は、車線変更をした前方車70%:後方の直進車30%
  • 実際に交通事故が発生したときには、状況に応じて過失割合を算定する
  • 被害者の過失が1割で済むケースもあるため、適切な算定のためには弁護士相談がおすすめ

交通事故の態様はさまざまです。

交通事故と言えば交差点におけるものが有名ですが、車線変更の際に交通事故が起こるパターンも多いので、注意が必要です。

無理な割込みや指示器(ウィンカー)を出さないままの車線変更、急な追い越しなど、さまざまな危険行為が行われるため、事故が起こりやすいのです。

このようなとき、加害者と被害者双方の過失割合は、どのくらいになるのでしょうか?

今回は、車線変更(進路変更)に伴う交通事故の基本的な過失割合について、説明します。

1.過失割合の基準

交通事故の過失割合とは、事故の結果に対する被害者と加害者それぞれの責任の割合のことです。

被害者に過失割合が認められると、その分、加害者に請求できる賠償金の金額が減ってしまいますので、被害者にとっては、自分の過失割合を小さくすることが重要です。

過失割合については、事故の態様ごとの適切な割合が決められています。

裁判所が過失割合を認定するときに使っている適切な基準であり、被害者が加害者の保険会社と示談交渉をするときにも、その基準をあてはめて双方の過失割合を認定する必要があります。

2.車線変更に伴う事故の件数とパターン

(1) 車線変更に伴う事故の件数

車線変更に伴う交通事故は、どのくらい起こっているのでしょうか?

平成29年の警察の統計資料によると、車両の追突事故は年間で167,845件も発生しており、全交通事故の比率にすると35.5%にも及びます。
また、追い越しや追い抜きの際の衝突事故も8,237件発生しています。

これらのすべてが車線変更に伴うものではありませんが、うち相当数含まれていると考えられます。

平成29年中の交通事故の発生状況(政府統計)

(2) 車線変更に伴う事故のパターン

車線変更をすると、どうして交通事故につながりやすいのでしょうか?

以下で、そのパターンをご紹介します。

①前の車の急な車線変更

車線変更をするときには、変更後の車線上の後ろから来ている車との距離などを鑑みて、適切な時期に方向指示器を出し、適切なタイミングで車線変更すべきです。

後ろから車が迫っているのに、急に車線変更をすると後ろの車が避けきれずに衝突事故につながります。

車線変更をすると、どうしても後方車の速度や方向を急に変えさせることになるので、前方車はそのことをしっかり理解して、後方車に影響を与えないように配慮すべきです。

②前の車が指示器で合図をしなかった

車線変更しようとしている前方車が方向指示器を出さなかった時にも、事故につながりやすいです。

指示器を出さないと、後方の車は車線変更を予想できないので、突然、自分の走行道路の車線に入ってきた車を避けきれないのです。

③後ろの車の前方不注視

後ろの車の前方不注視が原因となることもあります。

前方の車両が指示器を出して車線変更しようとしていたら、十分車間距離を空けて注意深く対応する必要があります。

しかし、脇見運転など前方不注視があると、前方の車が車線変更しようとしているのに気づかず、衝突してしまいやすいです。

④後ろの車のスピード出し過ぎ

後方車がスピードオーバーしている場合にも、事故につながりやすいです。

通常通りの速度であれば、前方車が車線変更してきてもスピードを落として衝突を避けることができますが、高速で走行している場合には、いきなり車線に入ってきた車を避けきることが難しくなるためです。

3.車線変更に伴う事故の基本の過失割合と修正要素

以下では、車線変更の際の基本的な過失割合を見ていきましょう。

(1) 基本の過失割合

車線変更の際に接触事故が発生した場合の過失割合は、以下の通りです。

車線変更をした前方車が70%:後方の直進車が30%

前方車が右から左へ車線変更するときも、左から右へ車線変更するときも、過失割合は同じです。
また、追い越し車線か通常車線かという違いもありません。

車線変更の事故の原因は、基本的に前方者が急な車線変更によって危険を発生させたことによると考えられるので、前方車の過失が大きく、過失割合が70%となります。

他方、後方車も、前方車による方向指示器などを見て、適宜減速するなどの措置をとることができます。それによって、交通事故を避けることができたのにそうしなかったことに過失があり、30%の過失割合が認められます。

(2) 修正要素について

上記の70%::30%というのは「基本の過失割合」ですが、この割合は、さまざまな要因によって修正される可能性があります。過失割合の修正原因となる要因のことを、「修正要素」と言います。

過失割合の修正要素には、過失割合を加算する要素と減算する要素があります。

車線変更の事故における過失割合の修正要素は、以下の通りです。

①後方の直進車の加算要素

  • 時速15㎞以上の速度違反 +10%
  • 時速30㎞以上の速度違反 +20%
  • 後ろの車がゼブラゾーンを走行 +10~20%
  • 後ろの車に著しい過失あり +10%
  • 後ろの車に重過失あり   +20%

まず、後方の直進車がスピード違反をしていると、車線変更に伴う事故を避けがたくなるので、後方車の過失割合が上がります。
スピード違反の程度が上がると、過失割合がさらに多く加算されます。

また、後方車がゼブラゾーンを進行していた場合にも、過失割合が足されます。

ゼブラゾーンは、通行が禁止されるわけではありませんが、基本的に車両がむやみやたらに通行することを予定していない部分だからです。具体的なケースに応じて10~20%、加算されます。

著しい過失とは、通常予定されているものを大きく超えるような過失です。たとえば、酒気帯び運転やスマホを見ながらの運転などの著しい前方不注視などが該当します。

重過失は、故意とも同視しうるような悪質な過失です。たとえば、酒酔い運転や無免許運転などが該当します。

②後方の直進車の減算要素

次に、後方の直進車の過失割合の減算要素(=前方車の過失割合の加算要素)を見てみましょう。

  • 進路変更禁止場所の場合  -20%
  • 車線変更の合図無し    -20%
  • 後ろの車に初心者マークあり -10%
  • 車線変更車に著しい過失あり -10%
  • 車線変更車に重過失あり   -20%

進路変更禁止場所では車線変更が予定されていません。

それにもかかわらず前方車が車線変更をすると、後続車は予測ができず危険が発生するので、前方車の過失割合が上がり、後方車の過失割合が下がります。

車線変更の合図なしに車線変更が行われた場合にも、後方車は事故を避けにくくなるので、前方車の過失割合が上がります。

後方車が初心者マークをつけていたときには、前方車における注意義務の度合いが高まるので、後方車の過失割合が下がります。

前方車に上記で説明した通りの「著しい過失」や「重過失」があった場合にも、それぞれ過失割合が加算されます。

4.過失割合の決め方

過失割合の決め方

以上のように、車線変更のケースにおける過失割合については適切な基準があります。

裁判になったときには上記の過失割合の基準が適用されますし、保険会社も基本的には上記の基準を用いて過失割合の判断をして提示をしてきます。

しかし、場合によっては、過失割合について、保険会社側の契約者の意向に基づいて過失の主張をしてくることもあります。

たとえば、修正要素について考慮する必要はないと主張してくるケースもあります。

示談交渉においては、当事者が自由に過失割合を定めることができるので、双方が納得したら、その過失割合になります。

保険会社から不当に高い過失割合を割り当てられたとき、被害者が納得したら、その過失割合が有効になってしまうということです。

そこで、示談交渉に臨むときには、正しい過失割合についての知識をもって、相手から不当に高い過失割合を割り当てられないように注意しましょう。

5.被害者の過失が1割で済むケースもある

上記の通り、車線変更に伴う事故が発生したとき、被害者(後方車)の過失割合は基本的に30%ですが、これを20%や10%に抑えられるケースもあります。

それは、前方車に著しい落ち度があった場合や後方車が初心者マークをつけていたケースなどです。

たとえば、事故現場が進路変更禁止場所であったり、前方車が方向指示器を出していなかったり、車間距離が短いのに急に車線変更をされたり、前方車が脇見運転や酒気帯び運転していたり、薬物を摂取して正常に運転ができない状態で運転していたりすると、前方車両の過失割合が上がるので、後方車両の過失割合が下がります。

また、以下のような追い越し際の車線変更のケースでは、前方車両の過失割合が非常に高くなるので、後方車の過失割合が1割以下になる可能性もあります。

・後ろを走行していた車が自分の車両を追い越し、追い越し直後に充分な車間距離を取らずに無理やり直前に割り込んできた場合

このような追い越し際の車線変更は大きな危険を伴いますので、前方車両(もともと後ろを走っていた車両)の過失割合が大きくなります

以上の通り、交通事故が発生したときには、単純に過失割合の基準をあてはめるだけではなく、具体的な状況に応じて過失割合を算定することも必要となります。

6.事故に遭わないためにできること

車線変更の際には交通事故が発生することがとても多いものですが、事故に遭わないためにはどのようなことに注意すればよいのでしょうか?

(1) 自車が後方車両のケース

まずは、自車が後方車両で直進している場合の注意点をご紹介します。

①十分車間距離を保つ

どのような場合でも、十分な車間距離を取っておくことは、事故を避けるための基本です。

車間距離をあけて走行することは、道路交通法上の義務にもなっています(道路交通法26条)。

②事故が起こりやすい場所を走行する際に注意する

高速道路のジャンクションや交差点では、強引な車線変更をしてくる車が多いので、常にそういった動きをする車がないか、注意しておく必要があります。

③スピード違反をしない

きちんと車間距離を取っていても、後方車両がスピード違反をしていたら、すぐに前方車両に追いついてしまうので、追突事故を避けがたくなります。

そこで、直進している場合には、スピード違反をしないことが重要です。

時速15キロメートル以上の速度オーバーをすると「著しい過失」となりますし、時速30キロメートル以上の速度オーバーをすると「重過失」となって、過失割合の加算要素にもなるので、くれぐれも注意しましょう。

④ドライブレコーダーを搭載し、事故に遭ったときの準備をする

交通事故に遭ったときには、被害者と加害者の言い分が異なるので、過失割合算定に際してトラブルになることが多いです。

いざというときに自分の主張が正しいことを立証するためには、日頃からドライブレコーダーを搭載しておき、万が一の場合の証拠保全に備えることが重要です。

ドライブレコーダーを搭載しておけば、前方車両が急に割り込んできたことなどを明確に立証することができるからです。

【参考】ドライブレコーダーの証拠能力。交通事故でどれほどの効果があるか

(2) 自車が車線変更するケース

次に、自車が前方車両として車線変更する場合の対処方法を紹介します。

①車線変更禁止場所で車線変更しない

車線変更禁止場所では、当然車線変更してはいけません。そういった場所で車線変更をすると、過失割合も高くなります。

そこで、車線変更する前に、標識などによって車線変更が禁止されていないか、確認しましょう。

②ミラーで周辺を確認する

車線変更をする前に、ルームミラーやサイドミラー、そして目視でしっかり周囲を確認しましょう。

移ろうとしている先の車線上に後ろから迫っている車両があるときには、車線変更すると危険なので、適切なタイミングを待つべきです。

③早めに指示器を出す

実際に車線変更をするときには、早めに方向指示器で合図をすることが大切です。指示器は、後方車に車線変更を知らせる重要なツールです。

車線変更時、指示器を使わないと、車線変更車の過失割合が大きく上がりますし、事故の危険性が大きく高まるので、軽く考えてはいけません。

④余裕をもってハンドルを切る

車線変更の際、急にハンドルを切ると危険があります。後方車が予測できるように、余裕をもってハンドルを切りましょう。

ただし、もたもたしていると、車間距離を取っていても後方車が追いついてしまい、迷惑をかけてしまうので、スピーディな対応も重要です。

運転のうまい下手の問題もありますが、なるべくタイミングを意識しましょう。

7.まとめ

車線変更による交通事故の場合、基本的に前方車両に大きな過失割合が認められますが、後方車両がスピードオーバーしていた場合や著しい前方不注視があった場合などには、後方車両の過失割合が高くなるケースもあります。

自分が車線変更をする際にも、自車が後方を走っている場合にも、危険を発生させないためのさまざまな対処方法があります。

交通事故後、加害者の保険会社と示談交渉をしているときに、割り当てられた過失割合に納得できないケースでは、弁護士に相談することで、割合を変えられる可能性があります。

過失割合が下がると大きく賠償金が上がるので、疑問があるならば、まずは交通事故に積極的に取り組んでいる泉総合法律事務所の弁護士に相談することをおすすめします。

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