過失割合 [公開日] [更新日]

交通事故における過失相殺について|損害賠償に大きな影響

交通事故における過失相殺について|損害賠償に大きな影響

【この記事を読んでわかる事】

  • 交通事故の過失相殺は損害賠償慰謝料にどのような影響をもたらすのか
  • 過失相殺が生じうるかどうかはどのように判断されるのか
  • 過失相殺はどのように計算方法され、結果慰謝料はどうなるのか

交通事故の被害者に自身の損害の発生について不注意(過失)のある場合には、その不注意の内容に応じて加害者に対する損害賠償請求額は減額される可能性があります。

これを「過失相殺」と言います。

過失相殺が問題となるのは、人身事故で一義的には加害者に責任があるが、被害者にも不注意があるような場合です。

それでは、過失相殺は、実際に、どのように判断され、どのような計算を行うのでしょうか。以下、詳細を解説します。

1.過失相殺とは

(1) 過失相殺の意義と趣旨

過失相殺とは、交通事故の被害者が加害者に対して損害賠償を求める場合において、被害者に過失のあるときには、損害の賠償における当事者間の公平を図るため、被害者の過失の割合を限度に賠償額を減額する制度です。

(2) 過失相殺に関する民法のルール

交通事故による損害賠償は、不法行為を理由とする損害賠償の一種であり、その過失相殺については、民法722条2項に規定されています。

そして、不法行為における過失相殺は契約違反を理由とする損害賠償における過失相殺とは異なり、被害者の過失を理由として加害者の責任自体を否定することは認められず、また、過失相殺すること自体は裁判官の裁量に委ねられています。

過失相殺をする場合、判例は、被害者に事理弁識能力の備わっていることが必要であるとの立場(最高裁昭和39年6月24日判決)を取っています。

たとえば、0歳児には事理弁識能力はがなく、過失相殺は許されないので、加害者は損害の全額を賠償しなければなりません。

一方で、過失相殺は、損害の公平な分担を図るために加害者の賠償責任を減じる制度だから、たとえ0歳の被害者であっても、過失が認められる場合は過失相殺を認めるべきとの見解もあります。

(3) 過失相殺の認められる場合・認められない場合

被害者である歩行者が横断歩道を渡っている際の自動車との衝突事故や自動車同士の追突停止している自動車への追突事故のような場合には、被害者の過失が問われることは基本的にはありません。

他方、歩行者が横断禁止の幹線道路を横断中に自動車と衝突した場合や動いている同士の自動車の衝突事故の場合には、被害者に過失があると判断されます。

もっとも、過失相殺の判断は、最終的には、個別の事案における諸事情を考慮して行われるため、画一的に判断することはできません。

しかし、個々の裁判官に過失相殺の判断を委ねた場合、同様の事故について、判断する裁判官によって過失割合の内容に大きな差が生じてしまい、不公平になってしまうリスクがあります。

そこで、実務では、東京地裁民事交通訴訟研究会編「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準全訂5版」(別冊判例タイムズNo38)なる書籍を過失割合の判断における目安として参照することにより、過失割合の判断に関する公平性あるいは予見可能性を確保しています。

なお、過失相殺率とは、一般に言われている過失割合という言葉とは厳密には意味の異なる概念ですが、ここでは、同じ意味のものと考えて差し支えありません。

2.過失相殺の判断方法および計算方法

(1) 過失相殺の判断方法

過失相殺の判断を行うためには、まずは、実際に起こった交通事故の具体的態様を確定しなければなりません。そして、事故の態様に関する事実は、当事者に争いのある場合には証拠に基づいて判断されることになります。

たとえば、交通事故における客観的証拠としては、ドライブレコーダーの映像、警察の作成する物損事故報告書や実況見分調書などがあります。また、死亡事故のように被害者が事故について語れないような場合には、交通事故の目撃者の証言が有力な証拠になることがあります。

さらに、事故車両の損傷の位置・内容、信号無視の事実が争われるようなケースでは、信号機の色の変化の周期を記号化した表など、交通事故の態様に関する証拠になるものは、意外に多く存在します。

こうした、様々な証拠に基づき、そもそも、どのような事故であったのかということを確定するのです。

次に、確定された交通事故の態様に基づいて、過失割合を認定する必要があります。この作業において、先に登場した様々な事故態様における過失割合の目安を記載した書籍に照らして、過失割合の目安を定めます。

そして、その目安になる過失割合を修正すべき事情のある場合には、それを考慮して、最終的な過失割合を決めることになるのです。

最後に、加害者の損害賠償額につき、決められた過失割合に従い、その額を減額することにより、過失相殺の判断は行われることになります。

(2) 過失相殺の計算方法

具体的な過失相殺の計算方法は非常にシンプルです。

たとえば、被害者に生じた、治療費、通院交通費、休業補償、慰謝料などの損害を金銭的に評価すると総額300万円であるとき、被害者と加害者の過失割合は20(被害者):80(加害者)であれば、被害者が加害者に対して請求できる賠償額は300万円×80%の240万円となります。

(3) 被害者側の過失の法理

ある自動車同士の事故において双方の車両の運転手に過失のあるとき、特別な事情のないかぎり、同乗者には過失はありませんから、同乗者は、双方の運転手に対して全額の賠償を請求することができます。

なお、ここでの双方の運転手に全額の賠償を請求できるとは、たとえば損害額100万円の場合には、双方の運転手に100万円ずつ総額200万円を請求できるという意味ではなく、いずれの運転手に対しても全損害額の100万円を請求できるという意味であることに注意してください。

しかし、このようなケースにおいて、被害車両の運転手の過失を同乗者自身の過失と考え、同乗者の賠償請求が被害車両の運転手の過失分だけ相殺されることがあり、これを被害者側の過失の法理と言います(最高裁昭和34年11月26日判決)。

たとえば、運転手と同乗者が夫婦であるような場合です。

このときには、運転手である夫に20%の過失がある場合には、同乗者の被害者である妻が相手車両の運転手に対して損害賠償請求する際、夫の過失を自分の過失として扱われため、請求できる賠償額は全損害額×20%に減額されることになります。

このような処理を認めるのは、仮に相手の運転手に損害額の100%を請求できるとした場合でも、相手の運転手はもう一方の運転手である夫に支払額の20%を請求でき、結局、夫婦のお財布からしてみれば、相手から損害額の80%の支払を受けたことと変わらないため、それなら最初から夫の過失を考慮しましょうという理由です。

被害者側の過失の法理について、判例は、被害者と身分上・生活関係上一体の関係にある者の過失については被害者側の過失として考慮できると述べており、過去には、夫婦以外に同棲している恋人同士や保育園の保母と園児などの関係において、被害者側の過失の法理を認めた裁判例があります。

3.まとめ

実際の交通事故の賠償金の話し合いにおいて、相手側の保険会社は、上記の過失割合の目安を引き合いに出して、過失割合による賠償額の減額を主張してくることがあります。

しかし、よくよく見てみると、実際の事故とは微妙に違っていて、そのまま書籍に記載されている過失割合に基づいて賠償金額を減額することは不当であると言えるような場合があります。

また、過失割合を判断する前提である事故態様について保険会社と争いが生じることもあります。

交通事故において過失割合が争われた場合、その判断は難しい場合が少なくありません。しかし、過失割合は、賠償金額全体に影響を及ぼす重要な要素であるため、もし保険会社の主張する過失割合に納得できない場合には、妥当な賠償金を受領するためにも、交渉を弁護士に任せたほうがいいかもしれません。

「過失割合に納得がいかない」「提示された賠償金額が適切なのか分からない」という方は、交通事故の解決実績が豊富な泉総合法律事務所に是非ともご相談ください。ご相談者様の状況に合った解決策や解決の目途などについて、的確にアドバイスさせていただきます。

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