過失割合 [公開日] [更新日]

非接触事故の過失割合!判例を元に解説ー歩行者・自転車・バイク事故

非接触事故の過失割合!バイク・自転車事故を判例を元に解説

【この記事を読んでわかる事】

  • 非接触事故でも、原則的に被害者は加害者に損害賠償を請求できる
  • 非接触事故における過失割合の判断は非常に難しい
  • 非接触事故で因果関係を否定されたら弁護士に相談するべき

たとえば、バイクの前を走る自動車が分岐路の直前において急にウインカーを出して減速した上、左に曲がろうとしたため、後ろのバイクの運転手は驚き、急ブレーキを掛けたもののバランスを崩して転倒して負傷したとしましょう。

このような車両同士あるいは車両と歩行者との接触を伴わない交通事故は「非接触事故」と呼ばれています。

非接触事故でも、加害者に事故の責任のあるかぎり被害者は損害賠償を請求することができます。

ところが、非接触事故のケースにおいて、加害者や保険会社は、ときどき、今回の事故は加害者の運転とは無関係であるとして賠償を拒否したり、被害者の負傷は主として衝突回避のための被害者のハンドル操作などが不適切であったためであるとして、過失相殺による大幅な賠償額の減額を求めてきたりします。

そこで、今回は、通常の交通事故とは異なる非接触事故における損害賠償請求について、主として、過失割合を中心として解説します。

1.非接触事故における因果関係

交通事故により負傷したことについて損害賠償請求するには、加害者の運転上の行為と被害者の負傷との間の因果関係を前提とします。

そして、接触事故の場合には、基本的には、因果関係は問題にはなりません。

他方、非接触事故の場合、被害者の負傷は、直接的には、被害者のブレーキやハンドルの操作による転倒などから生じています。

そのため、加害者や保険会社は、被害者の転倒は、被害者のハンドル操作の誤りによるものであり、加害者の運行とは無関係であるとして、転倒による負傷につき賠償を拒否することがあります。

(1) 判例の考え方

この問題については、最高裁の判例があります。

最高裁は、歩行者と自動車との間の非接触事故における自動車の運転手の運行と被害者である歩行者の負傷との因果関係の判断について、

「車両の運行が被害者の予測を裏切るような常軌を逸したものであって、歩行者がこれにより危難を避けるべき方法を見失い転倒して受傷するなど、衝突にも比すべき事態によって傷害が生じた場合には、その運行と歩行者の受傷との間に相当因果関係を認めるのが相当である」

としました(最高裁昭和47年5月30日判決)。

非接触事故において、加害者の運行と被害者の受傷との間の因果関係の有無の判断については、基本的に、上記の最高裁の立場を踏まえて判断されるでしょう。

なお、過去の裁判例として、高速道路において、約106m前方の自動車が蛇行運転したことに驚き、急ブレーキを掛けたところ横転した非接触事故につき、蛇行運転する車両を認めながら時速100kmにより追い抜こうとする行為は不適切であり、また、約106mの距離のある段階において急ブレーキを掛ける必要はなく、速度調節により安全を確保することは十分可能であったとして、加害者の運行と被害者の受傷との間の因果関係を否定したものがあります(東京地裁平成3年5月17日判決)。

2.非接触事故における過失割合の問題

(1) 非接触事故の過失割合の基準

冒頭において紹介したケースでは、加害者は、交差点直前において、突如、左折のため減速していることから、加害者の運行と被害者の受傷との間の因果関係については認められる可能性が高いでしょう。

それでは、過失割合については、どのように判断されるでしょうか。

現在の実務において、交通事故における過失割合の判断は、過去の裁判例の動向を踏まえて、各事故類型に応じて過失割合の目安を記載している別冊判例タイムズ38『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』(全訂5版)という書籍を参考にして行われます。

ところが、非接触事故は、交通事故の態様としては、あまり数は多くなく、過失割合についての一律の目安となる基準を設けることの難しい事故態様であるため、過失割合の目安となるものは存在しません。

そのため、非接触事故における過失割合の判断は、非常に難しい問題となるのです。

(2) 過失割合の判断方法

一般的には、交通事故における過失割合は、当事者双方の事故発生の原因であると評価できる不注意の有無および程度を総合的に考慮して判断されます。

具体的には、冒頭のケースに似た事例の裁判例において、裁判所は、曲がる寸前にウインカーを出して左折した加害者の行為については、後方の安全を確認して合図を出した上で進路変更すべき義務を怠った過失を認め、他方、被害者には、車間距離を保持して、前方の車両の動静に注意して進行すべき義務を怠った過失があるとして、その過失割合は、20(被害者):80(加害者)であるとしました(大阪地裁平成26年3月11日判決)。

なお、この裁判例における過失割合の20:80の具体的根拠について裁判所は示していませんが、直進単車と先行左折四輪車との接触事故の目安の過失割合は20(被害者):80(加害者)であり、非接触事故の場合でも、類似の接触事故の過失割合を目安にできるものと考えられます。

3.非接触事故に遭った場合にすべきこと

(1) 警察に連絡して現場検証に立ち会う

非接触事故に遭った場合には、まずは警察に連絡しましょう。

そして、事故により負傷した場合には、人身事故の届出を行い、警察の実況見分(現場検証)においては自分の記憶に基づいて可能なかぎり正確に事故の態様について伝えるようにしましょう。

【参考】裁判の証拠にもなる!交通事故の供述調書・実況見分書とは?

(2) 目撃者を確保する

もし事故の目撃者のいるような場合には、その方の証言は中立の第三者の供述として信用性の高いものであるとされますから、できれば、目撃者に事故態様に関する供述について協力してもらいましょう。

(3) 刑事事件の情報や記録を取得する

さらに、非接触事故の場合でも、過失により人を死傷させた場合には、過失運転致傷罪として刑事罰に処せられる可能性があります。

そのため、警察や検察官は刑事事件として非接触事故に関する証拠の収集に努め、最終的な加害者の処分が決まります。

そこで、被害者としては、後の損害賠償請求における証拠の収集の観点から、被害者通知制度や刑事記録の閲覧・謄写の制度などを利用することにより、事故態様や加害者の過失に関する事実などの証拠を収集するようにしましょう。

こうした制度の詳細を知りたい場合は、弁護士に相談するのでも、直接検察庁に尋ねることでも構いません。

4.非接触事故の過失割合で争ったら弁護士相談

非接触事故は、直接的には被害者の行動により損害の発生する類型の事故であるため、そもそも、加害者の行為と損害の発生との間の因果関係はないものとして損害賠償請求を否定されることがあり、賠償請求自体は認められる場合でも被害者の不注意を理由とする過失相殺により賠償額を減額されるリスクがあります。

そして、非接触事故の過失割合については、接触事故のような目安となる基準は存在しないため、その判断は非常に難しいものです。

もっとも、非接触事故の場合でも、過失割合の判断の基本は、事故の発生との関係における当事者の不注意の有無および程度の総合的判断ですから、被害者としては事故の態様に関する証拠を十分に収集した上、正確な事実に基づき、適正な過失割合の判断ができるよう留意すべきです。

このように、非接触事故の損害賠償請求については、難しい法的判断を伴うことが多いですから、もしも非接触事故に遭ってしまった場合には、なるべく早めに泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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