人身事故 [公開日]2018年3月12日[更新日]2020年6月18日

加害者に「診断書を警察に提出しないで」と頼まれた!?

交通事故の加害者が、被害者に「診断書を警察に出さないでほしい」、「人身事故の届出を取り下げてもらえないか」とお願いしてくることがあるようです。

では、被害者がこのような加害者の要求に応じた場合、どのようなデメリットがあるのでしょうか。

この記事では、診断書の意味や診断書を取り下げた場合に被害者にふりかかる不利益などに加え、人身事故への切り替えの期限についても解説していきます。

1.交通事故で診断書を警察に提出する効果

交通事故で受けた怪我を病院で治療し、診断書を警察に提出すると、人身事故として交通事故捜査が開始されることになります。

対して、事故現場での受傷が明らかである場合以外に、診断書を提出しなければ、交通事故は原則的に「物損(物件事故)」の扱いとなります。

警察に診断書を出す・出さないで、事故の扱いが大きく変わることになるのです。

(1) 診断書の提出で行政・刑事の処分対象となる

警察に診断書の提出がなされ、人身事故の扱いになると、次の3つの処分対象となります。

最初に、加害者は刑事処分の対象となります。刑事事件の被疑者として過失運転致傷等の罪で捜査されることになります。そうすることで、実況見分調書という、事故現場についての詳細な図面が作られることになります。

次に、加害者は、行政処分の対象ともなり、点数によっては反則金程度では済まずに、免許停止や免許取消といった処分を受けることがあります。

なお、加害者は、警察に提出するか否かは別として、民事処分の対象となり、診断書を「加害者側の保険会社」に提出することで、治療費や入通院慰謝料を受け取ることができるようになります。ただし、一括対応をされている場合には、自ら提出する必要が無い場合が多いです。

(2) 保険金の請求に必要な交通事故証明書の発行

警察に診断書を提出し、申請することで、自動車安全運転センターから人身事故の交通事故証明書が発行されます。この交通事故証明書は、自賠責保険・任意保険に保険金の請求をする際に必要となります(発行してもらえない場合は、「人身事故証明書入手不能理由書」などの書類が別途必要になります)。

ただ、通常、交通事故証明書の申請手続きは、保険会社がやってくれることになっているので心配ありません。

このように、診断書を各機関に提出する(人身事故にする)ことにより、届け出が物損事故の状態では生じなかった様々な効力が生じます。

[参考記事]

交通事故の診断書とは|警察に出すべき?日数の意味・提出期限は?

2.被害者が診断書を提出しないデメリット

加害者が、こういった不利益を避けるために、「物損のままにしてほしい」、「人身事故の届け出を取り下げてほしい」などとお願いしてきた場合に、弁護士の立場からは「事故で怪我をしたのであれば事実に合致した届出をすべき」とご案内しています。

その理由は、次の通りです。

(1) 物損事故のままでは損害賠償額が低額になる

確かに、加害者側の意向を酌んで物損の届出にしたとしても、怪我をした事実(医師による診察のうえ、診断書が発行されていること)が明らかであれば、加害者側の保険会社は、「対人賠償」の対応をしてくれる可能性はあります。

しかし、後遺障害の認定の段階で、自賠責に対して、「物損の届出しか出ていない程度の怪我でしょう」という理屈を与えてしまうおそれがあります。

一方で、診断書の記載などから、事故との因果関係を証明できなければ、自賠責は、あくまで物損事故として処理をするため、人身事故で請求できる損害賠償が支払われないことになります。

万一、後遺障害が残ってしまった場合には、等級の認定を受け、後遺障害慰謝料や逸失利益などの請求にも影響が出るかもしれません。

(2) 実況見分調書が手に入らない

人身事故では、実況見分と言われる現場検証が行われます。この実況見分に基づき事故の日時や目撃者の証言、事故状況の写真などを詳細にまとめた実況見分調書が作成されることになります。

もし、加害者側と裁判となり、主張に食い違いが生じたときに、この実況見分調書は、事故状況の証明に大きく役立つ資料です。むしろ、これが無いと、過失割合についての争いに耐えられないでしょう。

特に、交通事故では、互いの過失割合が争点となることが多く、被害者が自分の主張を証明するために欠かせない資料が、実況見分調書なのです。

したがって、特に加害者側の言い分から、過失割合の争いが想定されるときには、「加害者が可哀想だから」とか「加害者に頼まれたから」という理由で安易に届出を物損のままにしておくことは、被害者側として極めてリスクがあると言えるでしょう。

[参考記事]

交通事故の現場検証で気をつけるべきことと知っておくべきこと

(3) 加害者側の任意保険会社に一括対応との関連

加害者が任意保険会社に加入していれば、送付されてきた同意書にサインをして返送するだけで、病院での治療費などを任意保険会社が支払ってくれる一括対応といわれるサービスを利用することができます。

任意保険会社は同意書に基づいて、病院から診断書などを取得することができるので、診断書の提出も不要です。

一括対応も、任意保険会社が、人身事故として扱うからこそ受けられるサービスです。加害者任意保険会社から、「民事上は人身事故として扱う」と言われないのに、勝手に自分の判断で物損事故のままにするような場合には危険です。

一方で、加害者が任意保険に加入していなければ、被害者は、加害者側の自賠責保険に診断書など必要書類を揃えて、直接保険金を請求しなければなりません(一括対応に対して、被害者請求と呼ばれています)。この場合には、物件事故の場合だと、人身事故証明書入手不能理由書を付さなければなりません。

このように、人身事故を物損事故として処理することは、デメリットこそあれ、メリットはほとんどないのです。

(4) 被害者にも過失があり加害者も怪我をしていれば例外

ただし、少し事情が違うのが、被害者側にも過失があり、加害者も怪我をしているケースです。

この場合には、両者互いに怪我をさせ合ったということになり、被害者側(過失が少ない方)も治療費等の民事上の賠償責任が生じ、さらに、刑事処分や行政処分の対象になる可能性もあります。

現実的には、このような諸事情を勘案して、届出の種別を決定すべきでしょう。

ただし、過失割合の争いがあったり、被害者の過失が相当程度低ければ、原則通り、人身事故として届出すべきです。

3.人身事故への切り替えが認められる日数や期限

交通事故の怪我は、事故後2~3日してから、初めて痛みやしびれなどの症状が現れることが往往にしてあります。事故当日は興奮もあって、症状が感じにくいことがあります。
この場合、警察への届出を物損のままにせず、できるだけ早く人身に切り替える必要があります。

切り替えを受け付けてくれる期間は、警察署によってかなり運用が異なっているようで、事故から切り替えまでの日数や期限などについて特に定めはありません。

過去の事例では、事故から6ヶ月程度経ってからでも切り替えに応じてくれた警察署がありましたが、これはごく稀なケースです。
一般的には10日ほど、長くても2~3週間程度と理解しておくべきでしょう。

また、「加害者と一緒に警察署に来てください」など、実現が難しい課題を科されることがあります。この場合、連絡しても加害者が一緒に来ないようであれば、被害者一人ででも警察署へ行くべきです。

原則的には、事故直後から病院にかかり、診断書をすぐに警察に提出し、人身事故扱いにしてもらうのが一番です。

[参考記事]

物損事故から人身事故への切り替え注意点!手続方法・期限など

4.医師の診断書の記載で注意すべき点

最後に、診断書の記載について注意すべき点について、ご説明しておきます。

それは、交通事故との因果関係が明確に記載されているかどうかです。前述した通り、事故によって受傷した怪我であること証明できることで、後々、損害賠償請求をする際に重要なポイントになります。

もし、診断書の記載内容に不安があれば、弁護士に相談することをお勧めします。

5.加害者側への対応で困ったら弁護士へ相談を

泉総合法律事務所は、多くの交通事故を扱ってきた経験を有しており、知識が豊富な弁護士が多数在籍しています。

交通事故被害によるお悩みは深刻であり、対応に長けていないと満足できる結果を得られない可能性があると言えます。

交通事故被害でお困りの際には、交通事故の対応に長けた当事務所に是非ともご相談ください。
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