人身事故 [公開日]2020年9月11日

夫・妻・子どもが交通事故死した場合に遺族が取るべき対応とは?

ご家族が突然交通事故に巻き込まれて死亡してしまった場合、ご遺族の精神的なショックは計り知れません。

そんな中でもご遺族は、加害者や加害者側の任意保険会社への補償請求や、相続問題への対応に追われることになります。

旦那・妻・子どもなどのご家族の交通事故死という悲劇に突然見舞われる中で、このような複雑な法律問題に対応することは、精神的な負担が大きいことでしょう。

まずはこの記事を読んで、ご家族が交通事故死してしまったケースでの対応方法についてのイメージを持っていただき、必要に応じて弁護士のアドバイスを受けていただくことをおすすめいたします。

1.加害者側の任意保険会社に保険金の支払いを請求

交通事故で死亡した被害者は、加害者に対して不法行為に基づく損害賠償請求をする権利があります(民法709条)。

自動車を運転する者については、自賠責保険への加入が義務付けられているほか、さらに上乗せして任意保険にも加入しているのが通常です。

そのため、多くの交通事故のケースでは、被害者は加害者が加入している任意保険会社に対して保険金の支払い請求をすることになります。

しかし、交通死亡事故のケースでは被害者が死亡してしまっているため、被害者の相続人となる遺族が代わりに保険金支払い請求権を行使します。

交通事故により被害者が死亡してしまった場合、保険金支払いの対象となる損害項目にはどのようなものがあるのかについて解説します。

(1) 死亡慰謝料

交通事故によって死亡した被害者には、死亡したこと自体についての精神的な損害が発生すると観念されています。
この被害者の精神的な損害を補償する性質を有するのが「死亡慰謝料」です。

交通事故による死亡慰謝料については、以下のコラムで詳しく解説しているのでご参照ください。

交通事故の死亡事故における慰謝料・損害賠償金額の相場と計算方法

[参考記事]

交通事故で死亡した場合の慰謝料・保険金|相手が払えない場合は?

(2) 死亡逸失利益

死亡慰謝料と並んで、交通事故死のケースで中心的な損害項目となるのが「死亡逸失利益」です。

交通事故により早期に亡くなってしまうと、死亡時点以降、生涯にわたって稼ぐことができるはずだった収入が得られなくなってしまいます。
死亡逸失利益の損害賠償は、この機会損失を補填する性質を有しています。

死亡逸失利益の金額は、以下の計算式により計算されます。

<交通事故による死亡逸失利益の算定式>
死亡逸失利益
=(年間の基礎収入額-年間の生活費)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

死亡逸失利益については、以下のコラムで解説しています。

[参考記事]

後遺障害・死亡事故の逸失利益の計算例|もらえない原因を解説

(3) 医療関連の実費(入院費・治療費など)

交通事故で死亡した被害者が、死亡が確認される以前に病院に搬送されて治療を受けたり、入院したりした場合には、原則としてそれらにかかった費用の実額が保険金支払いの対象となります。

(4) 葬儀費用

交通事故により死亡した被害者の葬儀などにかかる費用についても、保険金支払いの対象になります。

裁判例で認められた基準(裁判基準・弁護士基準)では、おおむね150万円を上限として葬儀費用の賠償が認められています。

(5) 近親者の交通費・休業損害

交通事故により被害者が死亡した場合、搬送先の病院へ遺族などが駆けつけるのが通常です。

病院の近隣に住んでいる遺族については、比較的容易に足を運ぶことができますが、遠方に住んでいる遺族については高額の交通費がかかってしまうこともあります。

よって、近親者が被害者の下へ駆けつけるための交通費として相当と認められる範囲のものについては、保険金支払いの対象とされています。

また、遺族などが被害者の下へ駆けつけるために仕事を休んだりした場合には、休業損害についても保険金支払いの対象となります。

(6) 遺族固有の精神的損害

実際に死亡したのは交通事故の直接の被害者だとしても、近親者の死亡という重大な結果に直面した遺族自身についても、精神的な損害が生じることは間違いありません。

民法では、特に不法行為により他人を死亡させた場合については、被害者の父母・配偶者・子に対して、精神的損害を含む損害を賠償しなければならないことを規定しています(民法711条)。

そのため、このような遺族自身に発生したと認められる固有の精神的損害についても、保険金支払いの対象となります。

【保険金が不足する場合は、加害者に対して直接損害賠償請求が可能】
自賠責保険や任意保険から支払われる保険金は、あくまでも加害者が被害者に対して負担する損害賠償債務について、保険会社が代わりに支払うという性質のものです。
加害者が加入している任意保険に保障限度額が設定されていたり、そもそも任意保険に加入していなかったりするケースでは、保険金だけでは十分な損害補填にならないこともあります。
そのような場合には、不足分について加害者に直接損害賠償請求を行うことが可能です。

2.正当な保険金・損害賠償金を得るために遺族が取るべき対応

交通事故から時間が経ってしまうと、事故当時の情報が風化してしまうため、正当な保険金や損害賠償を請求することが難しくなってしまいます。

そのため遺族には、交通事故の直後から、加害者や任意保険会社に対する請求に向けた適切な準備活動をすることが求められます。

(1) 事故の状況を確認する

事故状況については、警察による実況見分などの調査が行われ、被害者の遺族もその資料を活用して各種請求を行うことができます。

適宜警察と情報共有を行い、事故当時の状況をしっかり確認しておくようにしましょう。

(2) 加害者の身分・契約している任意保険の保険会社を確認する

保険金請求や損害賠償請求を行うに当たっては、請求の相手方を把握することが必要になります。
そのため、まずは加害者の身分についての情報を開示してもらいましょう。

事故現場で加害者に直接聞くのが一番早いですが、その機会を逸してしまった場合には、警察を通じて加害者の情報を取得するようにしましょう。

この点でも、被害者の遺族にとっては、捜査機関との連携が重要になってくるといえます。

(3) 目撃者を確保する

保険金や損害賠償の金額は、事故当時の具体的な状況から判断して決定されます。

その際、目撃者に依頼して被害者側に有利な証言をしてもらうことができれば、被害者側に有利な金額が認定される可能性が高まるでしょう。

もちろん、捜査機関による捜査の過程でも目撃者に対する事情聴取は行われますが、加えて被害者の遺族が独自に見つけた目撃者の証言が得られれば、さらに被害者の遺族にとって有利な解決に繋がります。

3.交通事故死のケースにおける葬儀までの流れ

交通事故で亡くなった場合、自然死の場合とは異なり、捜査機関による遺体を用いた捜査が行われます。
そのため、亡くなってからすぐに葬儀などへと移ることはできません。

以下では、交通事故死のケースにおいて、被害者が死亡してから葬儀に至るまでの流れについて解説します。

(1) 警察署で遺体を確認

交通死亡事故が発生すると、被害者の身分を確認するために、警察署にある遺体安置所に遺族が呼ばれます。

その場で遺族は、被害者の遺体と初めて対面することになります。

(2) 捜査機関による検視・検案・司法解剖

被害者の身分が確認された後、遺体は捜査機関による検視・検案・司法解剖に回されます。

これらの医学的な捜査によって、被害者の死因や、交通事故が被害者の生命・身体に与えた影響などが明らかにされます。

(3) 縫合・着せ替えなどの準備

遺体を用いた医学的な捜査が完了したら、葬儀などに向けて遺体を整える作業が行われます。

解剖などのために遺体を切開した場合には、縫合作業が行われます。
また、汚れた衣服を清潔なものに取り換えるなど、旅立ちの身支度が整えられます。

(4) 納棺

葬儀に向けた遺体の準備が整ったら、被害者の自宅や、葬儀社の霊安室に遺体が搬送され、納棺が行われます。

納棺は通常の死亡による葬儀と同様に行われるのが通常です。
しかし、遺体の損傷が激しい場合などには、葬儀社の側で納棺を済ませた状態で遺族のもとに遺体が届けられることもあります。

(5) 親族などへの連絡

被害者の遺族は、遺体の準備状況などについて、捜査機関や葬儀社との間で連絡を取り合いつつ、タイミングを見て通夜・告別式の日程などに関する親族・友人への連絡を行います。

交通事故死の場合、通夜・告別式のスケジュールは流動的になるため、定まった日程を連絡できるのは、実際の通夜・告別式の直前になることも珍しくありません。

(6) 通夜・告別式

実際の通夜・告別式は、原則として通常の死亡による場合と同様に行われます。

しかし、遺体の損傷が激しい場合には、遺体との対面が控えられるなど、一定の調整が行われることもあります。

4.被害者についての相続を処理する必要

被害者の遺族は、加害者側への保険金・損害賠償の請求や、葬儀関連の準備などと並行して、被害者に関する相続の処理にも取り組まなければなりません。

以下では、被害者の相続について対応する際に注意すべきことを解説します。

(1) 相続人と相続財産を確定することが大切

遺産分割協議は、すべての相続人が参加して行うことが必要とされています。

もし相続人の一部が欠けた状態で遺産分割協議を行ってしまうと、後から遺産分割をやり直すことになってしまいます。
そのため、知られていない親族がいないかを、被相続人の戸籍を全て取り付けた上で、事前によく調べることが大切です。

また、相続人間で公平な遺産分割を行うためには、相続財産の全貌を把握することも重要になります。

特に、相続人が把握していない資産や借金がないか、被害者から生前贈与を受けた相続人がいないかなど、相続財産の金額に影響する事実については、弁護士に相談をして漏れなく把握しましょう。

(2) 遺産分割協議では冷静な話し合いを

相続の処理にあたっては、親族間の感情的な対立が激しくならないように、努めて冷静な話し合いをすることが重要です。

相続をきっかけに、親族間の関係性が崩れてしまっては、悲劇がさらに拡大してしまいます。

もし冷静な話し合いが難しい状況があるならば、弁護士に相談をしてすすめるべきです。場合によっては、交渉を依頼するのも良いでしょう。それでも難しいようであれば、遺産分割調停などの手続きもあります。

5.ご家族が交通事故死してしまった場合は弁護士にご相談を

もしご家族が交通事故で死亡してしまった場合は、できるだけ早めに弁護士にご相談されることをおすすめいたします。

交通事故死のケースでは、法律上処理しなければならない問題が多岐にわたって存在します。
悲しみの渦中にあるご遺族にとっては、こうした複雑な問題を処理するのは非常にご負担が大きいでしょう。

弁護士に依頼をすれば、法律的に複雑な問題についても適切に処理することができるため、ご遺族にとっては、故人と向き合って気持ちを整理することに集中していただけます。

また、相続の際には、任意保険会社・加害者・他の相続人などとの間で金銭面での交渉を行う必要があります。

ご遺族がどの程度の金銭が得られるかは、交渉の進め方によって大きく左右されますので、ぜひ交通事故に関する経験が豊富な泉総合法律事務所にご相談ください。

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