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犯人は見つかる?ひき逃げに遭った際、被害者が知っておくべき対処法

犯人は見つかる?ひき逃げに遭った際、被害者が知っておくべき対処法

【この記事を読んでわかる事】

  • ひき逃げ事件の犯人は必ず見つかるのか
  • ひき逃げ被害直後、及び事故後にやるべきこと(証拠集め、通報、通院など)
  • ひき逃げ犯を見つけた場合にするべきことと、ひき逃げ犯が見つからない場合にできること

皆さんは、自分が「ひき逃げ事故に遭うかも」と考えることはほとんどないと思います。

しかし、当然のことですが、ひき逃げに遭う人の多くは、それまでは自分がひき逃げの被害者となることなど考えたこともなかったはずです。

近年、交通事故が減少しているとは言え、平成28年度中にも8448件ものひき逃げ事故が発生しています。ひき逃げ被害は、決して他人事では済まされません。

今回は、ひき逃げ事故について被害者が知っておくべきことを、交通事故の専門家である弁護士がご紹介します。

1.ひき逃げの件数と検挙率

まず、ひき逃げの件数や検挙率は、どのくらいになっているのか、見てみましょう。

(1) ひき逃げ事件の件数

交通事故全体の件数は、平成16年をピークとして、年々低下しています。

平成16年には952,720件でしたが、平成28年には50万件を切って499,201件となり、平成29年にはさらに減って472,069件でした。

これだけ交通事故の件数が減っているので、ひき逃げ事件もやはり減少しています。

ひき逃げの件数は同じく平成16年をピークとして(約2万件)、その後年々低下しており、平成28年には8,448件となっています。

そうはいっても、1日に直すと約23件ものひき逃げ事故が起こっているのですから、決して少ない数字ではありません。

(2) ひき逃げ事件の検挙率

死亡事故のひき逃げ犯は全員逮捕!

それでは、ひき逃げ事件では、犯人はどのくらいの割合で検挙されているのでしょうか?

これについては、事故の結果によって大きく異なります。

平成28年の実績で言うと、死亡事故の場合には100%以上(前年度の交通事故の検挙数も含むため、100%を超えている)となります。

つまり、死亡事故のひき逃げ犯は、全員逮捕されているのです。

重傷の場合の検挙率は74.9%となっています。

重傷事故の検挙件数は、過去と比べて年々増加しているので、重傷事故の犯人も見つかる可能性が高いと言えます。

軽傷を含めたひき逃げ事故全体の検挙率は、56.8%となります。

以上のように、ひき逃げ事故が起こっても、半数以上の件では犯人が逮捕されていますし、死亡事故や重大事故にかぎると、検挙率は非常に高いと言えます。

ひき逃げに遭ったとき「逃げられたから、もう損害賠償はできない」「泣き寝入りになる」と諦める必要は、まったくありません。

2.ひき逃げに遭った時の対処法

実際にひき逃げに遭ってしまった場合「事故現場でしなければならないこと」があります。

  1. 加害車両の特徴を把握
  2. 警察を呼ぶ(呼んでもらう)
  3. 目撃者の確保
  4. 病院へ行き診察を受ける

以下で、順番に見ていきましょう。

(1) 加害車両の特徴を把握する

まずは、相手の加害車両やバイクのナンバー、車種や色などの特徴を把握しましょう。

最低限しっかり自分の頭に刻み込み、自分の身体が動く状態であれば、メモすることをおすすめします。スマホのメモ機能を利用してもよいですし、紙があれば書いてもかまいません。

特に、「車のナンバー」は、記憶だけではすぐに忘れてしまうので、早めに書き残すことが重要です。

同時に、余裕があったらスマホのカメラなどを利用して、加害車両を撮影しておきましょう。

このとき、ナンバーを撮影したので書き残さない方がおられますが、写真撮影しても、数字などがはっきり写っていない可能性もあるので、ナンバーについては、やはり写真と合わせてメモしておくべきです。

(2) 警察を呼ぶ、呼んでもらう

次に、警察を自分で呼ぶか、自分が動けなければ近くの人に呼んでもらうことが重要です。

警察を呼ばずにそのまま帰宅してしまったら、交通事故証明書が発行されないので、後に交通事故があったことを証明できなくなることがあります。

そうすると、加害者の保険会社や自分の保険会社に保険金の請求手続をするときに大きな支障が発生しますし、加害者に対する捜査も行われず、加害者が「逃げ得」になってしまう可能性が高まります。

また、警察を呼ばないと、実況見分も行われません。実況見分が行われないと「実況見分調書」が作成されないのですが、この点問題となります。

実況見分調書は、後に行われる加害者に対する刑事手続の証拠となり、同時に示談交渉の際の過失割合を算定するための重要な資料となるものです。

これが作成されないと、あとになって事故の詳しい状況が問題になったときに、被害者の言い分が正しいことを証明できない可能性があります。

そこで、事故に遭ったら、すぐに警察を呼びましょう。

実況見分調書については「裁判の証拠にもなる!交通事故の供述調書・実況見分書とは?」で詳しく解説しています。

(3) 目撃者がいたら連絡先を聞き確保する

ひき逃げに遭ったとき、周囲を見回して「目撃者」がいないかどうか、探しましょう。

もし目撃していた人がいたら、その場で声をかけて、連絡先を聞いておくべきです。

ひき逃げの場合、その後警察によってひき逃げ犯に対する捜査が開始されますが、その際、目撃者の証言が重要な手がかりになることがあります。

そのため、目撃者を確保しておき、犯人を検挙しやすくしておくことが重要となります。

また、民事賠償の際には被害者と加害者の言い分が食い違うことがありますが(たとえば加害者が出していたスピードや被害者が歩いていた位置など)、そういったケースでも、目撃者に証言を求めることにより、どちらの言い分が正しいのかを明らかにすることができます。

このように、目撃者を確保しておくと、被害者にとっていろいろな面でメリットがありますが、目撃者を後から探そうと思っても困難を極めますので、事故現場で声をかけておくことが重要となります。

目撃者がいたら、「後に交通事故の状況が問題となったときに、証言してください」ということをお願いして了承を取り、氏名や電話番号、メールアドレスなどを聞いておきましょう。

(4) 病院へ行き診察を受ける

実況見分が終わると事故現場を離れてもよいこととなりますが、このとき、すぐに病院に行くことが重要です。

交通事故に遭うと、ときどき「どこも怪我をしていない」「軽傷だから」「痛くない」などの理由で病院に行かない方がいらっしゃいます。

しかし、そういったケースでも、実際には重大な怪我をしていることがあるものです。

交通事故に遭うと、身体全体が興奮状態となるので、痛みなどを感じにくくなりますし、むち打ち(頸椎捻挫)などになった場合には、事故当初は痛みなどの症状が出ずにしばらく経ってから症状が顕れるケースもあります。

また、事故直後のMRI画像が、後の後遺障害認定に非常に重要な要素となってくる傷病もあり、こういったケースでは、事故直後に病院に行っておかないと、さまざまな不利益がおよぶ可能性があります。

たとえば、重大な症状が出ているのに放置することにより、症状が悪化してしまうケースがありますし、事故後数日が経過してから初めて病院に行くことによって「事故と怪我に因果関係が認められない」と言われてしまう可能性もあります。

事故当初の検査資料がないことにより、後遺障害認定を受けることが困難になるケースもあるでしょう。

そこで、事故に遭ったら、たとえ自覚症状がなくても、すぐに病院に行っておくべきなのです。交通事故でかかる診療科は一般的に整形外科ですが、頭部を打ったり衝撃を受けたりした場合には、脳神経外科を受診しましょう。

3.ひき逃げ事件後にするべきこと

ひき逃げが起こったとき、すぐに犯人が逮捕されれば必要のないことですが、そういったケースばかりとはかぎりません。多くの場合、警察による捜査結果を待つことになります。

ただ、その間にも被害者自身にできることがあります。

(1) 証拠収集(防犯カメラ、監視カメラの映像)

まずは、交通事故現場近くに防犯カメラや監視カメラなどが設置されていないか調べましょう。

カメラがあれば、事故の状況が撮影されている可能性があるので、カメラの所有者を調べて連絡を取り、事故当時の画像を確認させてもらえるようにお願いしてみましょう。

個人には開示できないという場合、警察に言って、捜査の一環として調べてもらうとよいでしょう。

(2) ドライブレコーダーの画像分析

交通事故の状況は、「ドライブレコーダー」に詳細に残っていることがあります。

ひき逃げに遭った場合、自分が自動車に乗車していたのであれば自分のドライブレコーダーに画像が残っている可能性がありますし、自分が歩行者や自転車であったケースでも、近くを走行していた自動車のドライブレコーダーに記録が残っている可能性があります

そこで、まずは、こうしたドライブレコーダーの画像を集めて分析しましょう。

相手のナンバーなどがはっきり写っていたら、そこから相手を特定できる可能性があります。

また、ドライブレコーダーの画像によって交通事故の状況を明らかにすることができるので、刑事事件の資料となる可能性もありますし、相手の過失の程度を把握したりすることも可能です。

ドライブレコーダーについて、詳しくは「ドライブレコーダーの証拠能力。交通事故でどれほどの効果があるか」で解説しています。

(3) 更なる目撃者の確保

ひき逃げに遭ったとき、事故現場では目撃者を確保できていないことがあります。

気が動転してそれどころではなかったということもあるでしょうし、重傷だったのですぐ救急車で運ばれたということもあるでしょう。

このような場合には、後に目撃者を探すことも有用です。

たとえば、事故現場に貼り紙を出して「〇年〇月〇日に起こった交通事故を目撃された方は、ご連絡ください」と書いておけば、誰かが連絡してくれるかも知れません。

死亡事故のケースでは、貼り紙に加えて定期的に事故現場に行ってお花などを供えていたら、心当たりのある人が気づいて連絡をしてくれる可能性が高くなります。

(4) 実況見分への立会い

交通事故が起こると、警察は「実況見分」を行います。

実況見分とは、交通事故現場において、交通事故の状況を確認する手続です。その結果「実況見分調書」という書類が作成されます。

実況見分調書は、加害者の刑事事件の証拠となるものでもあり、被害者と加害者の示談交渉時に過失割合算定などの資料ともなるものですから、交通事故被害者にとっては非常に重要な意味を持ちます。

そこで、適切に実況見分を行ってもらい、正確な事故の状況を調書に残してもらうことが大切です。

通常の交通事故の場合には、事故が起こって警察が到着したときにその場で実況見分が行われることが多いのですが、ひき逃げ事故の場合には、後に加害者が見つかったときに被害者・加害者双方の立ち会いの下に行われることが多いです。

そこで、事故後しばらくしてから警察から被害者宛に突然電話がかかってきて、実況見分への呼び出しを受けることになります。

実況見分では、事故の状況を思い出せるかぎり詳しく正確に伝えることが重要です。

相手がどの方向からどれくらいの速度で走ってきて、自分とぶつかったあとどういった様子(少し減速したなど)だったのか、また、どちらの方向へどのくらいの速度で走り去ったのかなど、しっかりと伝えましょう。

事故当時に残しておいたメモや写真、後に解析したドライブレコーダーの画像などを参考にするのもよいでしょう。

4.犯人が見つかったあとの対処方法

犯人が見つかったあとの対処方法
ひき逃げ犯人が見つかったら、その後どうすればよいのでしょうか?

(1) 示談交渉をする

加害者が見つかったら、相手に対して損害賠償請求をしなければなりません。そのためには、通常、加害者と示談交渉を行います。

加害者が自動車保険に加入していれば、保険会社と示談交渉を進めることになりますし、自動車保険に加入していなければ、加害者本人と話を進めていかねばなりません。

保険会社が相手の場合には、保険会社と次段交渉を進めていくことになります。ひき逃げではない一般の交通事故と全く同じ手続です。

加害者本人の場合には、自分たちで損害額を計算して、支払い方法を決定して示談書を作成する必要があります。

相手が本人だと、特に分割払いになる場合にきちんと最後まで支払われかが不安ですので、示談書を公正証書にしておいた方がよいでしょう。

公正証書にしておくと、相手が不払いを起こしたときに、裁判をしなくても相手の資産や給料などを差し押さえることができるからです。

(2) 内容証明郵便を送る

ひき逃げ犯人本人と示談交渉をしようとしても、加害者が無視して示談に応じないケースがあります。

その場合には、以下の手順で請求手続を進めましょう。

まずは、加害者本人に対し、内容証明郵便によって損害賠償請求書を送ります。

内容証明郵便自身に差押えなどの法的効果はありませんが、相手にプレッシャーを与える効果があるので、これによって加害者が示談交渉に応じる可能性があります。

また、内容証明郵便により、確実に損害賠償請求をしたということを、後の裁判などの場面で証明できるようになります。

(3) 訴訟を起こす

内容証明郵便を送っても相手が示談交渉に応じない場合には、損害賠償請求訴訟を起こして裁判所の判断を仰ぎましょう。

相手が反論もせず出頭もしなかったら、裁判所は被害者の言い分を認めるので、裁判になったら加害者は無視し続けることができません。

判決には強制執行力があるので、相手が判決を無視していたら、給料や資産などを差し押さえることができます。

ただ、訴訟においては被害者の主張が法的に妥当であることを、法的に主張・立証する必要があります。

適切な訴訟活動ができないと勝つことは難しくなりますので、訴訟を起こすなら、弁護士に依頼することをおすすめします。

(4) 加害者への厳罰を希望する意志を、警察・検察官に伝える

ひき逃げの場合、被害者が特に何もしなくても、加害者は過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪、緊急措置義務違反、報告義務違反などにより、刑事裁判にかけられる可能性が非常に高いです。

被害者として警察官や検察官から聴取を受ける際に、加害者への厳罰を希望する意思をより明確にすることは可能です。

このことにより、相手に下される処罰が重くなることが期待されますし、相手が減刑を求めて、示談に応じてきたり支払う賠償金を上げてきたりする可能性もあるので、相手が不誠実な場合には、加害者への厳罰を希望する意志を明確に警察官や検察官に伝えましょう。

5.犯人が見つからない場合の対処方法

ひき逃げ犯人を捜査してもらい、自分でいろいろ調べても、どうしても犯人がつかまらないケースがあるものです。

そのような場合でも、保障を諦める必要はありません。この場合に利用できる制度や保険を2つ、ご紹介します。

(1) 政府保障事業制度

1つは「政府保障事業」です。

これは、加害者が自賠責保険に加入していないケースがひき逃げのケースなどで、被害者が最低限の賠償金を受けとることすらできないときに、政府が代わって最低限の保障をする制度です。

政府保障制度で支払われる金額は、自賠責保険と同じ基準となり、高いものではありません。ただ、もらえないよりはよほど助かるので、相手が見つからないなら必ず利用しましょう。

①請求窓口

政府保障事業を利用したい場合には、お近くの民間保険会社が請求窓口となります。

任意保険会社の窓口に行って「政府保障事業を利用したい」と申し出ると、手続用の書類を渡してもらうことができます。

注意点として、保険代理店では取扱いがないので、直接「保険会社の窓口」に行く必要があります。

②請求手続

損害保険会社に対して政府保障事業用の書類を提出すると、保険会社は、「損害保険料率算出機構」に対して調査依頼を出します。

調査の結果は保険会社に伝えられて、保険会社は受けた結果を国土交通省に提出します。

すると、国土交通省は「てん補金」の金額を決定します。てん補金というのは、保険会社で言うところの保険金のようなものです(政府保障事業の場合、そのような言い方をします)。

そして、保険会社に対して、てん補金の決定通知があり、保険会社から被害者の口座へと定まったてん補金が支払われます。

③請求期限

政府保障事業には、請求期限があります。期限は交通事故の種類によって異なります。

  • 後遺障害の残らない傷害事故のケース:事故発生日から3年以内
  • 後遺障害が残った傷害事故のケース:症状固定日から3年以内
  • 死亡事故のケース:死亡日から3年以内

④法定補償限度額

政府保障事業では、自賠責保険での支払い基準が保証の限度額となります。

それを超える部分については、加害者本人に請求する必要があります。

⑤必要書類

政府保障事業のてん補金を請求するとき、以下の書類が必要です。

書式については窓口となっている任意保険会社で受けとりましょう。

  • 政府保障事業の損害のてん補請求書
  • 請求者本人の印鑑登録証明書
  • 交通事故証明書
  • 事故発生状況報告書
  • 診断書
  • 後遺障害診断書(後遺障害の請求をする場合)
  • 死体検案書または死亡診断書(死亡事故の場合)
  • 診療報酬明細書
  • 通院交通費明細書
  • 健康保険等の被保険者証(写し)
  • 戸籍(除籍)謄本(死亡事故の場合)
  • 休業損害証明書(給与所得者の場合)
  • 確定申告書(自営業者の場合)
  • その他損害を立証する書類、領収書等
  • 振込依頼書

⑥制度対象外の場合

ひき逃げ事故被害者であっても、政府保障事業の利用ができないケースがあります。

主な制度対象外のケースは、以下の通りです。

  • すでに加害者と示談が成立して示談金を受けとっている場合
  • 健康保険や労災保険等の給付額と加害者からの支払額の合計が、自賠責保険の限度額を超えている場合
  • 後遺障害等級に達しない場合や該当しない場合、後遺障害についてのてん補金は支払われません
  • 時効によって政府保障事業への請求権が消滅している場合
  • 複数の自動車事故で、逃げた車両以外の自動車の自賠責保険(共済)に請求ができる場合
  • 加害車両が自賠責保険の対象外車種の場合。たとえば、農耕作業用小型特殊自動車(小型耕運機など)や軽車両(自転車など)の場合

⑦ひき逃げ犯が無保険だった場合でも利用可能

政府保障事業は、ひき逃げ犯が見つかったときに、相手が「自賠責保険」に加入していなかった場合でも、利用することができます。

(2) 傷害保険を利用する

ひき逃げ犯人が見つからない場合でも、被害者が損害保険の傷害保険に加入していたら、そこから医療費や後遺障害に関する保障、死亡保険金などを受けられる可能性があります。

一度、保険の加入状況を調べてみるとよいでしょう。

6.まとめ

今回は、ひき逃げに遭った被害者の方に知っておいていただきたい知識をご紹介しました。

ひき逃げに遭ったら、まずは犯人を見つけることが第一です。相手が見つかったら、しっかり賠償金を請求して、必要な保障を受けましょう。

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