人身事故 [公開日]2020年10月8日

交通事故で警察を呼ばなかった場合、後日被害者に生じるデメリット

交通事故に遭った際、見たところ幸運にも怪我はなく、かつ物損も発生しなかったとします。

この場合、特に警察を呼ぶことなく、お互い様の事故ということで一件落着としてしまうケースがたまに見受けられます。

しかし、このような対応は、後から発生する可能性があるトラブルを考えると、非常に危険であるといえます。

交通事故に遭った場合は、たとえ怪我や物損が生じていないように見えても、直ちに警察に対する報告を行わなければなりません。

この記事では、交通事故に遭った被害者が警察を呼ばなかった場合、後日被害者に生じるデメリットなどについて解説します。

1.警察を呼ぶ必要性

交通事故に遭った際、その時点では体に痛みもなく、また大きな物損もなかったという場合には、警察を呼ばなくても良いのではないかと思われるかもしれません。

たしかに一見すると、自分に(お互いに)損害が生じていないのだから、いちいち警察に報告するという面倒なステップを踏む必要はない、と考えがちです。

しかし、交通事故に遭った場合は、怪我や物損があろうとなかろうと、「警察に報告することは必須」というのが正しい認識になります。

そもそも、交通事故を警察に対して報告することは、事故当事者である運転者の義務です。

これは、道路交通法72条1項後段において、交通事故が発生したケースについては、運転者などから警察に対して、直ちに交通事故の状況を報告しなければならないものと規定されていることを根拠としています。

交通事故の場合の措置
第七十二条 交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。(道路交通法72条1項)

上記の義務は、交通事故の被害者・加害者を問わず、事故当事者であれば一律で課されているものです。

交通事故を警察に対して報告する義務に違反した場合、「3か月以下の懲役または5万円いかの罰金」に処される可能性があります(道路交通法119条1項10号)。

そのため、たとえ怪我や物損が生じていないように見えても、運転者としての義務を果たすため、警察への報告は確実に行わなければなりません。

【後で怪我が発覚する場合もある】
また、道路交通法上の義務違反であること以上に、交通事故の事実を警察に対して報告しないことによって、被害者にとって実害を生じてしまうケースがあります。それは、交通事故の時点では怪我がないように見えても、後から体に痛みが生じて怪我が発覚したというケースです。
この場合、改めて加害者側に対する損害賠償請求(保険金請求)を検討しなければなりませんが、警察に対する報告を怠っていると、損害賠償請求がきわめて困難になってしまいます。
この詳しい理由については、次の項目で解説します。

2.警察を呼ばず後日怪我が発覚した場合のデメリット

交通事故に遭っても警察を呼ばず、後日怪我が発覚した場合には、きちんと警察に報告をしたケースと比べて、以下のようなデメリットが生じてしまいます。

(1) 事故現場に関する証拠が失われてしまう

交通事故を警察に報告すると、警察が事故現場に急行して、その場に残っている痕跡などを調べながら、交通事故に関する実況見分調書を作成します。

この実況見分調書は、事故現場の当時の状況を証明するための、非常に信頼性の高い証拠となります。

しかし、事故が起こったその場で警察への報告をすることを怠ると、上記の実況見分調書の作成を行うことができません。

そのため、後から怪我が発覚して損害賠償請求(保険金請求)を行おうとしても、事故現場の状況を証明する客観的な証拠を集める手立てが失われてしまうのです。

[参考記事]

交通事故の供述調書・実況見分書とは?裁判の証拠にもなる!

このことは、被害者が損害賠償請求(保険金請求)を進めるうえで、大きな障害になってしまうでしょう。

(2) 任意保険会社に保険金を請求できない場合がある

警察に交通事故の報告を行わなければ、警察から交通事故証明書を発行してもらうことができません。

加害者が任意保険に加入していれば、通常被害者は、任意保険会社から保険金の支払いを受けることができます。

ところが、交通事故証明書の提出を保険金の支払い要件としている任意保険会社も多く、提出できない場合は保険金の支払いを拒まれてしまう可能性があります。

[参考記事]

交通事故証明書の内容・取り方・後日届け出る場合の注意点

なお追って解説するとおり、後から警察への報告を行えば、交通事故証明書を改めて発行してもらえることもあります。

しかし、事故当時の状況を根拠立てて説明することは非常に困難になってしまうでしょう。

(3) 損害賠償請求の手掛かりがなくなる(加害者の氏名・住所)

交通事故で警察を呼ばずに済ませてしまうケースでは、そもそも加害者の氏名や住所などの基本的な情報すら聞き取らずに、加害者を解放してしまう例もしばしば見受けられます。

この場合、誰が加害者なのかを後から把握するのはきわめて困難であり、損害賠償請求への手掛かりが一切失われてしまうことにもなりかねません。

もちろん、後から奇跡的に目撃者が登場して、誰が加害者かについて克明な証言をしてくれれば良いですが、そのようなケースはきわめて例外的でしょう。

3.交通事故の警察に対する報告は後日でも可能?

交通事故をその場で警察に報告しなくても、後からでも報告できるのであればそれで良いじゃないか、と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、これまで解説してきた内容からもわかるとおり、交通事故の警察に対する報告は「その場で直ちに」が基本です。

道路交通法72条1項後段の報告義務に関する規定において、交通事故の警察に対する報告は、警察官が現場にいない場合には、最寄りの警察署の警察官に「直ちに」行わなければならないものとされています。

「直ちに」とは、「すぐに、その場で」というニュアンスを含む法律用語です。
そのため、法的に言えば、交通事故を警察に報告せずに事故現場を立ち去った時点で、道路交通法上の報告義務に違反しており、犯罪行為となります。

とはいえ実務上は、警察としても交通事故の事実を把握することは職務の一環であるため、後日の報告であっても受け付けてくれる場合がほとんどです。

しかし、事故現場に警察が赴いて実況見分を行う場合とは異なり、被害者が口頭で説明する内容に基づいて交通事故証明書を作成するしかありません。

説明に根拠がなかったり、曖昧だったりする場合には、警察が交通事故証明書を発行してくれない場合もあるので、十分に注意が必要でしょう。

4.交通事故に遭った場合はすぐに弁護士に相談を

交通事故の現場では、誰しも少なからず気が動転してしまっていることでしょう。

そんな中で、加害者に言われたとおりに警察に報告をせず、その場で別れてしまったり、口頭で示談をしてしまったりするケースがあるかもしれません。

もし交通事故の後で、警察に対する報告を怠ってしまった場合は、気づいた時点ですぐに弁護士にご相談下さい。

交通事故から時間が経てば経つほど、事故現場の証拠は散逸してしまいます。

加害者側に対する損害賠償請求(保険金請求)について、たとえ事故直後からの初動対応に問題があったとしても、弁護士に相談すれば、その後の対応でリカバリーできる可能性があります。

交通事故に遭った場合は、とにかく早めの相談が肝心ですので、すぐにでも泉総合法律事務所の弁護士へご連絡ください。

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