人身事故 [公開日]2020年2月28日

整骨院と健康保険|受診に関する調査書を無視したらどうなる?

「2~3ヶ月前に通った整骨院に関する調査票が届いた」という場合、回答すべきなのかどうか分からず、そのまま放置してしまう方がいます。
しかし、実はこれに回答しないと、健康保険が適用されず自己負担となってしまう可能性があるため注意が必要です。

そこで今回は、整骨院の受診後に来た調査票についてご説明します。
調査票が来る理由とその背景、回答しないとどうなるのか、調査票の回答方法についてご説明しますので、交通事故被害などで整骨院に通われている方は、ぜひご覧いただければと思います。

なお、交通事故で整骨院に通う場合は様々な注意事項がありますので、以下のコラムをご参照ください。

整形外科と整骨院の同時通院|適正な交通事故慰謝料のために

[参考記事]

交通事故で整形外科と整骨院の同時通院は可能?

1.調査票とは?

交通事故被害に遭ったなどを理由に、整骨院に受診される方は少なくないでしょう。
この場合、健康保険組合から調査票が送られてくることがあります。「柔道整復師での受診に伴う確認について」などという名称の場合もあります。

調査票が送られてくると、ご自身の受診に問題があったのか、など不安になる方もいらっしゃるでしょう。

調査票が送付される理由は、受療内容が保険診療の対象であるかどうか確認するためです。

厚生労働省は、平成22年以降から健康保険の不適正な請求を防止するために、受診した方に本当に整骨院あるいは整骨院(柔道整復師)を受診したのかどうかなどの確認を行なっているのです。

これは、あなた自身の受診が怪しいと思われているわけではなく、不正請求防止のための措置として行われているので、必要以上に不安に思う必要はありません。
また、厚労省の指針により行なっているものですので、詐欺などを疑う必要もないでしょう。

【調査票が送付される背景】
調査票が送付されるようになった背景としては、整骨院(柔道整復師)の不正請求が問題となった事件があります。平成21年度に会計検査院が調査した結果によると、柔道整復療養費の6割が不正請求だったことが判明したのです。実際に、受診していないのにもかかわらず、患者が受診したことにして健康保険に請求していたという事例があったことはニュースでも大きく報道されました。
また、実際に整骨院に受診はしているものの、肩こりなど保険の診療の対象とならないものまで請求されていたということもありました。 
健康保険に関しては、加入している全ての方が支払っている保険料だけでなく、国民の税金でまかなわれています。税金が不当に利用されることを防止するために、厚労省の施策として調査票を送付することが推奨されるようになったのです。 
調査票送付の背景は、このような不正請求だけではありません。年々増加する高齢者医療保険の負担も背景として考えられています。医療費を何とかして削減するために、過剰な医療に関しては、少しでも削減したいという国の意向の表れともいえるでしょう。 

2.調査票を無視すると健康保険が適用されない?

次に、整骨院受診の調査票に回答しないとどうなるのかについて見ていきましょう。

(1) 調査票の回答で嘘ついた場合

調査票でわざわざ虚偽を書くという方はなかなかいないと思いますが、場合によっては「詳しく覚えていない」というケースもあるでしょう。
結果として、調査票が嘘の内容となってしまった場合は、どうなるのでしょうか?

嘘の内容を記述してしまった場合、不正請求だと疑われる可能性があります。

実際に、調査票が届くのは受診から3〜6ヶ月が経過しているケースが多く、記憶が曖昧というケースも無理はありません。この場合、請求内容と異なる内容を記述すると治療費が自己負担となってしまう可能性があります。

健康保険に関して患者は、1割から3割負担となりますが、不正受給だと判明した場合は全額自己負担となります。

そのため、回答する場合は内容を確認して回答する必要があるでしょう。

(2) 調査票を無視した場合

調査票自体の意味がわからず、怪しいと思いそのまま放置してしまう方もいらっしゃるでしょう。しかし、これも得策とはいえません。

調査票は無視すると、不正請求と同様に扱われ、当該受診につき健康保険を利用できなくなってしまいます。つまり、受診にかかった費用は全額自己負担となります。
調査票を任意のアンケートだと勘違いされている方は非常に多いため、注意が必要です。

調査票は、健康保険法に基づき実施されているものであるため、これに回答しないと健康保険がおりない結果となってしまう可能性があります。

この場合、整骨院から被保険者である患者に対し、直接請求が行われる可能性もあります。
調査票を無視すると大変なことになりかねないので、適切に対処する必要があるでしょう。

3.調査票の適切な回答方法

最後に、調査票の適切な回答方法をお伝えします。

(1) 全く受診した覚えがない場合

まず、全く受診した記憶がない場合は、不正請求の可能性が高いといえます。

この場合は、質問表の記載内容欄にある「施術を受けていない」を選びましょう。あるいは「覚えていない」でも構いません。

調査票の内容は一律ではないため、細かい言葉などが変わっているかもしれませんが、同様の回答内容があればそれに○印などを付ければ大丈夫です。

この場合、不正請求の可能性があるため、当該施術をしたとする整骨院、接骨院が何らかの処分を受ける可能性があります。

もし、整骨院等から施術を受けていないのにもかかわらず、直接請求があったら場合は、支払いをする必要はありません。

【調査票の内容と整骨院の処分】
整骨院の受診に関し、内容によって整骨院が処分を受ける可能性はあります。回答内容と請求された内容に齟齬があれば、不正請求となる可能性があるためです。 
一件のみで大きな処分が行われる可能性は低いですが、繰り返しの水増し請求など、不正あるいは著しい不当があり健康保険法に違反した場合には、行政処分として以下が行われる可能性があります。
・資格停止、取消し
・取消しに相当する場合の公表処分(名称、氏名、不正理由、不正請求金額など)
・療養費取り扱い停止処分
・不正請求分の返還請求
実際に、当該整骨院に対し数千万円の返還請求や資格停止処分5年などの処分が下ったケースもあります(これらは患者の権利を守ることを目的としていますので、不正請求だった場合に患者に何らかの処分が下ることはありません)。

(2) 受診した記憶はあるが、日付などが曖昧な場合

整骨院に来院の際は、必ず領収書を保管し、施術内容や負傷部位などもメモしておくのが理想です。
なぜなら、数ヶ月経ってから、調査票が届くため受診した日付や理由などを忘れてしまう可能性があるためです。

調査票が届いて、日付などがよくわからないという場合は、わからない箇所については「覚えていない」を選択することも可能です。
しかし、もし保険がおりないことに不安を感じる場合は、直接来院した整骨院に連絡してみるのも1つの方法です。

健康保険の範囲内である適切な治療をしたのにもかかわらず、曖昧な回答が行われることで不正請求であると判断されることは整骨院側も避けたいため、適切に対応してくれるはずです。

4.交通事故の整骨院受診が問題になったら弁護士に相談を

整骨院などへの受診に心当たりがある場合は、正確に回答するようにしましょう。そうでないと、健康保険がおりずご自身に直接請求が来る可能性もあります。

なお、交通事故では整骨院での受診が大きな問題になることもあります。受診の際は必ず医師の許可を取ってから、受診するようにしましょう。

整形外科と整骨院の同時通院|適正な交通事故慰謝料のために

[参考記事]

交通事故で整形外科と整骨院の同時通院は可能?

もし、交通事故の整骨院での治療費が支払われないなどの問題がある場合は、一度弁護士にご相談ください。
泉総合法律事務所の交通事故に精通した弁護士が、個々のケースに合わせて適切に対応したします。

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