弁護士費用特約は家族でも使えるのか|利用の範囲とは?

自動車保険の弁護士費用特約(弁護士特約)は、万が一交通事故に遭ってしまい、弁護士に依頼をしなければならなくなった場合に、弁護士費用を保険会社に支払ってもらうことができる便利な保障です。

[参考記事]
弁護士費用特約とは?|誰が、いつ、どんなことを補償されるか
この弁護士費用特約は、家族のうち誰か一人が加入していれば、他の家族が交通事故に遭った場合にも利用できる可能性があることをご存じでしょうか。
もし交通事故に遭ってしまったら、ご自身が自動車保険の弁護士費用特約に加入していなかったとしても、家族の誰かが付けている弁護士費用特約を利用できるかどうかを忘れずに調べてみましょう。
この記事では、自動車保険の弁護士費用特約を被保険者の家族が利用できるかどうか、その利用範囲について解説します。
1.弁護士費用特約の保障範囲は契約内容次第
弁護士費用特約がどの範囲で利用できるかについては、保険契約の定めによって決まります。
したがって、被保険者の家族が交通事故に遭った場合に弁護士費用特約を利用できるかどうかについても、保険契約の内容次第ということになります。保険契約の内容はご契約の保険約款をご確認ください。
この記事では、一般的な弁護士費用特約において、家族による利用のルールがどのように定められているかについても言及しています。
しかし、保険会社によって契約内容が異なることから、具体的にご自身のケースでご家族が弁護士費用特約を利用できるかどうかについては、必ずご自身が加入している自動車保険の弁護士費用特約に関する契約内容を確認するようにしてください。
2.家族・親族が交通事故に遭った場合の確認内容
まず、自動車保険被保険者の家族が交通事故に遭った場合に、弁護士費用特約を利用できるかどうかについて確認する際、保険契約においてどのような内容をチェックすれば良いのかについて解説します。
(1) どの程度近しい家族・親族まで利用可能か
多くの自動車保険の弁護士費用特約は、被保険者の家族・親族が交通事故に遭った場合についても、弁護士費用特約の利用を一定の範囲で認めています。
保険契約上、弁護士費用特約を利用できる家族・親族の範囲を決定するためのポイントの一つとなるのが、「被保険者との関係性(親族関係)」です。
一例としては、被保険者と以下の関係にある者については、被保険者の弁護士費用特約を利用できる場合が多いといえます。
- 配偶者
- 子
- その他の親族
なお「親族」とは民法上、①六親等内の血族、②配偶者、③三親等内の姻族を指すものとされています(民法725条)。
自動車保険における弁護士費用特約の内容上も、民法上の親族の範囲と同じ範囲で、弁護士費用特約の利用を認めることが多いようです。
(2) 被保険者との同居の要否
被保険者の親族に該当すれば誰でも被保険者の弁護士費用特約を利用できるわけではなく、一部の親族については、被保険者と同居していることが利用の条件になっていることもあります。
一般的には、配偶者と未婚の子については、被保険者と同居しているか否かを問わずに弁護士費用特約を利用できる場合が多いようです。
これに対して、配偶者と未婚の子以外の親族については、被保険者と別居していない場合に限り、被保険者の弁護士費用特約を利用できるパターンが多くなっています。
3.他人名義の車を運転していた場合
家族・親族が交通事故に巻き込まれるケースでは、被保険者の車ではなく、交通事故に遭った家族自身が所有する別の車を運転していたという場合もあるでしょう。
また、被保険者本人が、家族が所有している車を運転している際に交通事故に遭うケースもあるかもしれません。
このように、被保険者が所有している車以外の、他人名義の車で交通事故に遭った場合にも、被保険者の弁護士費用特約を利用することは可能なのでしょうか。
他人名義の車を運転していた際に弁護士費用特約を利用できるかどうかも、保険契約の内容次第で決まります。
そのため、保険契約の規定上の弁護士費用特約の保障対象に、被保険者名義の車で交通事故に遭った場合だけが含まれるのか、それとも他人名義の車で交通事故に遭った場合でも保障対象なのかについて確認しましょう。
なお、保険契約の内容によっては、被保険者本人が交通事故に遭った場合と、家族が交通事故に遭った場合とで、保障の範囲を変えているケースもあります。
たとえば以下のように、被保険者本人と家族・親族の場合で結論が変わることもあり得ます。
- 被保険者本人が交通事故に遭った場合
→被保険者名義の車だけでなく他の車を運転していた場合であっても弁護士費用特約を適用可能 - 家族や親族が交通事故に遭った場合
→被保険者名義の車を運転していた場合に限り弁護士費用特約を適用可能
この点については、事前によく保険契約の規定文言を確認しておくことが重要です。
4.自転車事故などの場合
交通事故は、必ずしも自分が車を運転している時だけでなく、自転車の運転中や、歩行中などに遭遇する場合もあります。
こうした場合にも、加害者や加害者側の任意保険会社に対して、保険金や損害賠償金を請求するために弁護士に依頼をする必要が生じることがあります。
その際、弁護士費用特約を適用することはできるのでしょうか。
この点、自動車保険の弁護士費用特約は、あくまでも自動車が関係する事故に関して弁護士に依頼をする場合に適用可能となるのが原則です。
そのため、自動車と全く無関係な事故、たとえば自転車同士の事故や、自転車対歩行者の事故などには、基本的には適用がありません。
一方、自動車対自転車や、自動車対歩行者など、事故当事者のどちらか一方が自動車であれば、自分が自動車を運転していた側でないとしても、弁護士費用特約を適用できるケースが多いようです。
しかし、自動車保険の弁護士費用特約の保障範囲については、結局保険会社との間で締結する保険契約の内容次第となります。
保険会社によっては、自動車が関係する事故以外にも、日常の中で発生する事故についても弁護士費用特約の対象とする内容の特約を提供しているケースがあります。このような日常事故に関する特約を付けておけば、自転車対自転車の事故・自転車対歩行者の事故・盗難事件・近隣トラブルなどについても、弁護士費用特約の保障範囲に含めることが可能です。
なお、自動車保険以外にも、火災保険やクレジットカードにも弁護士費用特約を付けることができることがあります。
火災保険やクレジットカードの弁護士費用特約は、自動車事故専用というわけではないため、自転車同士や自転車対歩行者などの事故にも適用できる可能性があります。
いずれにしても、弁護士費用特約の保障範囲は保険契約の内容次第です。
そのため、火災保険やクレジットカードの保険契約の内容を確認することが必要でしょう。

[参考記事]
交通事故で火災保険やクレジットカードの弁護士特約は使えるか?
5.弁護士費用特約の利用範囲についても一度弁護士に相談を
弁護士費用特約を利用できるかどうかを把握するには、保険契約の内容を読み解く必要があります。
しかし、保険契約の内容は非常に込み入っており、また場合分けが細かくされていることも多いため、実際に弁護士費用特約を利用できるかどうか判断が難しいという場合もあるでしょう。
その際には、一度弁護士に相談をして、弁護士費用特約が利用できるかどうかを確認することをおすすめいたします。
弁護士費用特約の利用可否を確認するのと同じ機会に、交通事故の概要などを説明してアドバイスを受けておけば、その後の依頼にスムーズに繋げることもできます。
まずはお気軽に、泉総合法律事務所の弁護士までご相談ください。