慰謝料・賠償金 [公開日]2018年3月26日[更新日]2021年9月7日

交通事故加害者に誠意が感じられない場合に被害者ができること

「交通事故の加害者に誠意が感じられない!」「加害者から謝罪の電話がない!」「加害者が謝罪に来ない!」
そう憤る交通事故被害者の方は多くいらっしゃるようです。

交通事故が起きた場合の示談交渉を、事故の当事者同士が直接行うことはあまり多くありません(通常は加入している任意保険会社の担当者が行います)。
それでも、事故発生後に、加害者からひとこと「すみませんでした」と言ってもらえることで、印象が変わることもあるでしょう。

他方で、加害者に連絡がつかない場合や、自分の非を認めず謝罪しない、挙句に悪態までついてきた、というようなことになれば、「加害者は不誠実」と感じて、処罰感情が湧いてくることもあり得ます。

では、そんな加害者と出会した場合、どうすればいいのでしょうか。被害者として取れる行動はあるのでしょうか。

1.加害者から連絡がない理由

加害者から謝罪の連絡・電話がなかったり、加害者が嘘をついたり、保険会社に連絡をしないでいたりすると、「誠意がない」「不誠実だ」と感じるでしょう。

被害に遭われた方にとっては、「せめて事故後に1回でも挨拶や見舞いに来てくれれば」「電話の一本でもしてくれれば」と思うものです。
また、交通事故によって家族を亡くしてしまった場合や、重篤な後遺症が残ってしまった場合などには、「とにかく加害者が許せない」という場合もあるかもしれません。

他方で、加害者が「謝罪に行かない」「電話をしない」ことには、加害者の側にも何かしらの理由があるかもしれません。

たとえば、事故後、加害者からの謝罪や連絡が十分ではないというケースでは、次のような理由が考えられます。

  • 事故後の対応は、謝罪も含めてすべて保険会社に任せている
  • 保険会社から当事者間での対応について禁止されている
  • 加害者の都合で被害者を訪れると逆に迷惑になるのではないかと思っている
  • 遠方に住んでいるので挨拶に行くのが難しい
  • 謝罪に行って被害者から叱責されるのが怖い
  • 謝罪の挨拶に出向くと過失割合の認定で不利になると思っている

とはいえ、交通事故の示談交渉は、相手の顔が見えない状態で行われることがほとんどですから、「謝罪がない」「連絡がない」ということを、理由はどうであれ不快に感じることが多いのもやむを得ないでしょう。

【交通事故の相手方が任意保険を使わない場合】
稀に、自賠責保険にのみ加入し任意保険に未加入の加害者が存在します。また、任意保険に加入をしていても、翌年からの保険料を心配して「任意保険を使わない(保険会社に連絡しない)」と言う加害者もいるでしょう。
この場合、被害者は加害者に「任意保険を使ってくれ」と強制することはできませんので、加害者の自賠責保険と加害者本人に損害賠償請求を行うことになります。しかしこの場合、任意保険会社が窓口になってくれない分交渉が難航する、補償が十分なされない・加害者に「支払能力がない」ことがあり得ます。
この場合の正しい対応方法については、以下のコラムをご覧ください。
参考:任意保険未加入事故の被害者に…。損害賠償は受けられるか?

 

2.誠意がない加害者にどう対応すべきか

それでは、加害者側の対応を「不誠実」「たちが悪い」と感じたときには、どのように対応したら良いのでしょうか。

この場合に最も重要なのは、「冷静に対応する」ことです。加害者の対応に憤りを感じ、冷静さを失って示談交渉を進めれば、なかなか交渉が進まない・十分な損害賠償を確保できなくなる危険性があります。

具体的な対応法としては、次のような選択肢があります。

  • 自分の任意保険会社に交渉を任せる(こちらにも過失がある場合のみ)
  • 簡単には示談に応じない姿勢を示す
  • 加害者の刑事裁判に関与する
  • 弁護士に依頼する

示談交渉の負担が大きいときには、こちらも交渉を保険会社や弁護士に任せることが考えられます。

ただし、保険会社に示談代行を依頼できるのは、「こちら側にも過失がある」場合に限られます。
つまり、相手方の過失が100%という場合には、保険会社に示談代行を依頼できません。

また、納得できない内容の示談には簡単には応じないことも大切でしょう。
交渉がなかなか進まないと解決までの時間は長引いてしまいますが、示談に応じないことで、加害者側に「きちんと対応するように」というプレッシャーをかけることになります。

さらに、加害者に刑事処分が下されるケースでは、「被害者通知制度」や「被害者参加制度」を利用して、加害者の刑事裁判の結果の通知を受けたり、より積極的に関与したりする(刑事裁判で被害者の意見を陳述する)ことも可能です。
(ただし、刑事裁判に参加した場合でも「被害者の心情を述べる」ことはできますが、有罪無罪の判断や、量刑の判断に直接関与できるわけではありません。刑事罰の有無や程度を判断するのは、あくまで裁判所です。)

とはいえ、これらの対応をとる際には、慎重な判断が必要なことが少なくありません。怒りにまかせて判断してしまい、相手方に顧問弁護士が就いたり、債務不存在確認訴訟を起こされるなどして、後に不利な結果が生じれば、本末転倒です。

お困りの際には、まず弁護士に相談されることをおすすめします。

弁護士にご依頼いただければ、加害者側が不誠実な対応をするようなときでも「適正な損害賠償額」を確保できる可能性が高まります。

[参考記事]

交通事故の慰謝料問題を弁護士に依頼するメリット・デメリットを徹底比較

3.誠意がない加害者に対し損害賠償を増額できる?

「不誠実な加害者から、より多くの損害賠償を得ることはできないものか…」と考える交通事故の被害者は少なくありません。

この点について結論を先に述べておけば、「慰謝料を増額できる場合もあるが簡単ではない」です。

交通事故の加害者には、「刑事責任」、「行政責任」、「民事責任」の3つの責任が発生します。このうち、交通事故の被害者が直接関与できるのは、(刑事裁判で被害者参加制度を利用する場合を除けば)民事責任の領域のみです。

交通事故は日常的に発生するトラブルであるため、その損害賠償の実務は、多くの場面で「定型化」されています。

交通事故の被害に遭ったときに加害者に請求できる損害項目には、治療費、入通院費、休業損害、慰謝料(傷害慰謝料・後遺症慰謝料・死亡慰謝料)や逸失利益などがあります。

治療費は実費が補償され、傷害慰謝料は入通院の期間、後遺症慰謝料は後遺障害の程度に応じて金額が定型的に算出されるのが、一般的な実務です。

そのため、「加害者が示談交渉を保険会社に任せっきりにしている」、「謝罪や見舞いに来ない」といった事情を慰謝料額に反映させるのは、実務としては難しいケースが多いでしょう。

【弁護士に依頼すると「相場の基準」が変わる】
交通事故の損害賠償額には「相場」があります。この相場には、「自賠責基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準(裁判基準)」の3つがあります。
弁護士に依頼すると、最も高額な算定基準となる弁護士基準をベースに保険会社と交渉するため、適正な補償額を確保できる可能性が高まります。
また、本来は慰謝料額に反映されない事情でも、弁護士が交渉することで、保険会社に認めてもらえる可能性が生じることもあるかもしれません。
参考:交通事故の慰謝料は、弁護士基準の計算で大きく増額!

しかし、加害者の態度が「相当に悪質」であると言えるケースでは、裁判でも慰謝料の増額が認められる場合があります。

たとえば、下記のような事情があるときには、加害者の態度を理由に慰謝料の増額を認めてもらえることがあります。

  • 事故の証拠隠滅を図る
  • 弔意、救護などをしない
  • 刑事裁判において事故の責任の否定、虚偽供述
  • 事故現場で被害者を罵倒する
  • 被害者に脅迫まがいの言動や嫌がらせをする
  • 不当に示談をこじらせ、裁判を余儀なくさせる
  • 社会通念を超える不当な仕打ち

しかし、上に挙げた事情があっても、「謝罪をしない」「見舞いに来ない」という単独の事情だけで慰謝料の増額を認めてもらうのは難しいことが多いでしょう。

慰謝料の増額を勝ち取るには、裁判所が「相場よりも多額の慰謝料を支払わせることが公平である」であると判断できるだけの、具体的な主張・立証作業が必要です。

事故の状況(過失割合の有無)、被害の状況、その後の具体的な対応状況を踏まえて、「加害者は著しく不誠実である」ことについて具体的かつ説得的な主張と立証を行う必要があります。

4.交通事故のお悩みは弁護士へご相談を

重大事故の示談交渉は、精神的にも大きな負担となることが少なくありません。
特に加害者側の対応を不誠実と感じる場合には、示談内容でもめてしまい、交渉が長引くことも多いでしょう。場合によっては、相手方に弁護士が就いて、右往左往してしまうことにもなりかねません。

交通事故の示談交渉は、専門的な知識がなければ不利となることも少なくありません。

十分で適正な賠償を確保するためにも、お困りのとき、ご不安なときには、泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

当事務所では、交通事故の示談交渉の経験が豊富にありますので、どうぞ安心してお任せいただければと思います。

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