逸失利益

後遺障害・死亡事故で請求できる逸失利益の具体例と計算方法を解説

後遺障害・死亡事故で請求できる逸失利益の具体例と計算方法を解説

逸失利益とは、後遺障害が残ったケースや死亡したケースなどで認められる、将来の失われた収入のことです。逸失利益の金額は非常に多額になることが多く、慰謝料よりも高額になることも頻繁です。

逸失利益について、どのようなケースで発生するのか、どのように計算するのか、正しく把握しておくことは非常に重要です。

今回は、交通事故の逸失利益の具体例や計算方法について、交通事故に詳しい弁護士が解説します。

1.逸失利益とは

(1) 逸失利益の基本

逸失利益とは、ひと言で言うと、「将来の失われた収入」のことです。
交通事故で逸失利益を請求できるのは、後遺障害が残ったケースと死亡事故のケースです。

後遺障害が残ると、被害者は事故前と比べて身体が不自由になり、労働能力が低下します。すると、本来よりも収入が減ってしまうと考えられるので、その減収分を「逸失利益」として、加害者に請求することができるのです。

また、交通事故で被害者が死亡すると、被害者の収入は0円になります。そこで、生きていれば得られるはずだった収入を、逸失利益として加害者に請求することができます。

(2) 就労可能年数について

逸失利益が発生する期間は、人が通常働ける期間である「就労可能年数」です。

一般的に、就労可能年齢は67歳までとされているので、逸失利益を計算するときには、67歳までの分を計算します。

※なお、むち打ちなどで後遺障害に認定される後遺障害14級9号の神経症状の後遺障害の場合は、労働能力喪失期間が5年程度を限度とされること、同12級13号の神経症状の後遺障害の場合は10年程度を限度とされることが多いです。

ただし、67歳に近づいている人や67歳を超えている人の場合には、以下のどちらか長い方の期間を就労可能年数とします。

  • 67歳までの年数
  • 平均余命の2分の1

よく間違われるのですが、「平均余命」は、「平均寿命」とは違います。

平均寿命は、0歳の子どもがいつまで生きるのかという年数です。
これに対し、平均余命は「その年齢の人がいつまで生きるのが平均的か」という年数です。

そこで、平均余命は、その人の年齢によって異なってきます。たとえば、平成28年の平均寿命は80.98歳ですが、50歳の人の平均余命は32.54年です。80歳の人の平均余命は8.92年、90歳の人の平均余命は4.28年となっています。

【参考】主な年齢の平均余命(厚生労働省)

(3) 休業損害について

①休業損害とは

逸失利益と似たものとして休業障害があります。

休業損害とは、交通事故で仕事ができない期間が発生したときに、得られなくなってしまった収入に相当する損害です。
交通事故で入院をしたり体調を崩したりすると、仕事ができない期間が発生します。すると、本来なら働いて得られたはずの収入を得られなくなってしまいます。

このような損害は交通事故がなかったら発生しなかったものですから、交通事故の加害者に賠償請求することができるのです。

②消極損害とは

逸失利益も休業損害も「消極損害」と種類の損害です。
消極損害とは、実際に支払いが必要になる損害ではなく、本来なら得ることができたのに、失われてしまった利益に相当する損害です。
実際に支払いが必要になる損害を「積極損害」、実際には支払いが不要だけれども失われた収益のことを「消極損害」と言います。

③症状固定との関係

休業損害と逸失利益は「症状固定」時を基準として、分けることができます。
休業損害は、「症状固定前」に仕事を休んだときに発生する損害であり、症状固定後には休業損害は発生しません。これに対し、逸失利益は、「症状固定後」に後遺障害が残った場合に発生する損害です。

死亡事故の場合、死亡前に仕事ができなかった期間については休業損害が発生しますし、死亡後には死亡逸失利益が発生します。

3.逸失利益を請求できる人

交通事故が起こったとしても、誰でも逸失利益を請求できるわけではありません。

逸失利益は、将来の失われた収入のことですから、逸失利益が発生するためには、実際に仕事をして収益を得ていたことが必要です。

たとえば、会社員や自営業者、アルバイトやパートなどで収入がある人が交通事故の被害に遭うと、逸失利益が認められます。

また、主婦や主夫などの家事従事者の場合、実際にはお金を得てはいませんが、家事労働には経済的な対価性があると考えられているので、逸失利益が認められます。

子どもや学生にも逸失利益が認められます。子どもや学生は、今は働いていなくても、将来就職して収入を得られる蓋然性が高いと考えられるからです。

さらに、事故当時にたまたま失業していた人にも逸失利益が認められることがあります。

(2) 逸失利益を請求できない人

以上に対し、労働による収入の無い人は、基本的に逸失利益を請求することができません。

たとえば、無職無収入の人が交通事故被害に遭っても逸失利益は発生しませんし、収入があっても、それが労働によるものでなければ逸失利益は認められません。不動産投資や株式配当で生活をしている人が被害者になったケースでは逸失利益は認められません。

また、会社役員の場合には、報酬に労働対価部分と利益配当部分があると考えられます。
このうち、労働対価部分については逸失利益が認められますが、利益配当部分については逸失利益が認められません。

(3) 年金受給者について

年金受給者が交通事故に遭った場合、後遺障害逸失利益は認められません。後遺障害が残っても、年金が減額されることがないためです。

これに対し、年金受給者が死亡した場合には、死亡逸失利益が認められることが多いです。受給している年金の種類によって、取扱いが異なります。

死亡逸失利益が認められる年金は、以下の通りです。

  •  老齢基礎年金、老齢厚生年金
  • 障害基礎年金、障害厚生年金(ただし、加給分をのぞく)
  • 農業者年金
  • 公務員の退職年金給付
  • 港湾労働者年金
  • 恩給
  • 労災の障害補償年金

これに対し、以下のような年金は逸失利益性が否定されます。

  • 遺族厚生年金
  • 老齢福祉年金
  • 軍人恩給の扶助料
  • 戦傷病者戦没者遺族援護法による遺族年金

4.逸失利益の計算方法

逸失利益の計算方法

以下では、逸失利益の計算方法をご紹介します。
逸失利益の計算方法は、後遺障害逸失利益と死亡逸失利益とで異なるので、順番に確認していきましょう。

(1) 後遺障害逸失利益の計算方法

後遺障害逸失利益の計算始期は、以下の通りです。

・後遺障害逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

①基礎収入

基礎収入は、事故前において実際に得ていた収入が基準となります。
ただし、主婦や失業者、赤字の自営業者や子ども、学生などの場合、賃金センサスにもとづいた平均賃金を使って計算することが多いです。

②労働能力喪失率について

労働能力喪失率とは、後遺障害が残ったことにより、労働能力が失われた程度を割合によって評価したものです。

後遺障害の内容はさまざまですから、ケースによって労働能力の喪失率が変わります。
後遺障害は、等級が高くなるほど程度が重くなるので、労働能力喪失率も上がります。

労働能力喪失率が100%ということは、完全に仕事をする能力が失われたということです。

後遺障害には1級から14級までの等級がありますが、各等級の労働能力喪失率は、以下の通りです。

・ 1級 100%
・ 2級 100%
・ 3級 100%
・ 4級 92%
・ 5級 79%
・ 6級 67%
・ 7級 56%
・ 8級 45%
・ 9級 35%
・ 10級 27%
・ 11級 20%
・ 12級 14%
・ 13級 9%
・ 14級 5%

③ライプニッツ係数について

逸失利益を計算するときには、「ライプニッツ係数」が重要です。

ライプニッツ係数とは、中間利息を控除するための係数です。そのため、中間利息控除係数とも呼ばれます。
収入は本来であれば、年ごと、月ごとに受けとるべきものですが、逸失利益を受けとるときには、将来の収入をまとめて受けとることになります。

すると、本来なら得られないはずの運用利益が発生すると考えられます。そこで、その利益を差し引くための調整が必要となります。そのための係数が、ライプニッツ係数です。

ライプニッツ係数では、年5%の複利計算をもとにして数値が決定されています。

ライプニッツ係数を当てはめるときには、症状固定時の年齢を基準として、就労可能年数に対応する数字を採用します。

④後遺障害逸失利益計算の具体例

以上を前提に、後遺障害逸失利益の計算の具体例をご紹介します。

・30歳男性 年収500万円の会社員が、むちうちで後遺障害12級になった場合

この場合、後遺障害逸失利益の金額は以下の通りです。

500万円(基礎収入)×14%(労働能力喪失率)×7.7217(ライプニッツ係数)=540万5190円

※労働能力喪失期間を10年間として算出しています。

・40歳男性 年収800万円の自営業者が、高次脳機能障害で後遺障害5級になった場合

この場合、後遺障害逸失利益の金額は、以下の通りです。

800万円(基礎収入)×79%(労働能力喪失率)×14.643(ライプニッツ係数)=9254万3760円

・35歳の専業主婦が脊髄損傷で後遺障害7級になった場合

この場合、後遺障害逸失利益の金額は、以下の通りです。

376万2300円(基礎収入)×56%(労働能力喪失率)×15.803(ライプニッツ係数)=3762万3163円

(2) 死亡逸失利益の計算方法

次に、死亡逸失利益の計算方法は、以下の通りです。

・死亡逸失利益=基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

①基礎収入について

死亡逸失利益についても、事故前の収入を基礎とします。

基礎収入の考え方については、後遺障害逸失利益と同じで、基本的には実収入を基準としますが、実収入を観念できない場合には賃金センサスなどを使って計算します。

②生活費控除率について

死亡逸失利益の場合「生活費控除率」という数字が問題となります。

生活費控除率とは、死亡逸失利益から、不要になった生活費を控除するための数値です。

交通事故で被害者が死亡すると、確かに収入を得られなくなりますが、反面生活費はかからなくなるので、その分を利益から差し引かなければなりません。そこで「生活費控除率」という割合を用いて、逸失利益の金額を調整するのです。

生活費控除率の割合は、被害者の立場や性別によって異なります。具体的には、以下の通りです。

・被害者に被扶養者がいた場合

被扶養者が1人の場合 40%
被扶養者が2人名以上の場合 30%

この場合、男女による区別はありません。

・被害者に被扶養者がいなかった場合

この場合、男性か女性かで生活費控除率が異なります。

男性の場合 50%
女性の場合 30%

③ライプニッツ係数について

ライプニッツ係数についても、後遺障害逸失利益のケースと死亡逸失利益のケースで、取扱いは同じです。

④死亡逸失利益の具体的な計算例

死亡逸失利益についても、具体的な計算例をご紹介します。

・25歳会社員男性、年収350万円、独身者が死亡した場合

この場合、死亡逸失利益の金額は、以下の通りです。

350万円(基礎収入)×(1-50%)(生活費控除)×17.423(ライプニッツ係数)=3049万250円

※30歳未満の若年者の場合、基礎収入は賃金センサスを用いることも多いです。

・30歳主婦が死亡した場合

この場合、死亡逸失利益の金額は、以下の通りです。

376万2300円(基礎収入)×(1-30%)(生活費控除)×16.711(ライプニッツ係数)=4401万1025円

・40歳男性、年収650万円、妻子のある方が死亡した場合

この場合の死亡逸失利益の金額は、以下の通りです。

650万円(基礎収入)×(1-30%)(生活費控除)×14.643(ライプニッツ係数)=6662万5650円

【参考】家族が交通事故で死亡したらどうなる?被害者遺族がするべきこと

5.保険会社が逸失利益を否定または減額してくるケース

以上のように、交通事故の逸失利益の金額は、非常に高くなることが多いです。

ただし、どのようなケースでも、上記のような適正な金額の逸失利益を受けとることができるとはかぎりません。被害者の方が保険会社と示談交渉をするときには、さまざまな理由により、逸失利益を減額されてしまうからです。

以下で、よくある保険会社の主張をいくつかご紹介します。

(1) 労働能力が低下していない

1つは、「労働能力が低下していない」というものです。

後遺障害の等級ごとに労働能力喪失率が定められていますが、実際にはたいして労働能力に関係のない後遺障害もあります。

たとえば、外貌醜状や醜状痕の後遺障害、味覚や嗅覚の後遺障害、脚の短縮障害、(軽度なケース)骨の変形障害、脾臓摘出などの場合、労働能力が失われていないと言われやすいです。

ただ、上記のような後遺障害の場合でも、仕事内容によっては労働能力に影響することもありますし、将来的に影響が出てくる可能性もありますから、労働能力喪失率が0になるとはかぎりません。

(2) 就労可能年数を制限する

後遺障害の程度が軽い場合、就労可能年数が制限されることも多いです。

たとえば、むち打ちで14級になった場合には2,3年程度、12級になった場合は5,6年程度で賠償提案がなされるケースもあります。

(3) 収入が低下していない

後遺障害が残ったとしても、実際には減収が発生しないことがあります。そのような場合、逸失利益が否定されることがあります。

ただし、本人の特別な努力によって、本来減るはずの収入が維持されている場合などには、実際の減収がなくても逸失利益を認める裁判例もあります。

以上のように、保険会社は、逸失利益を否定したり減額したりしてくることも多いのですが、そういったときに、その主張を鵜呑みにすべきではありません。

弁護士が対応をしたり訴訟をしたりすることで、逸失利益を認めさせることも可能なので、保険会社の主張に納得できない場合には、すぐに弁護士に相談をすべきです。

6.適正な逸失利益を得る方法

交通事故で、適正な逸失利益を獲得するには、以下のような対応がポイントになります。

(1) 保険会社から言われるままにならない

1つは、保険会社から言われるままにならないことが重要です。

上記のように、保険会社は、逸失利益を否定したり減額したりするために、さまざまな理屈を言ってくるので、被害者にしてみると、「仕方が無いのかな」と思ってしまいがちです。

しかし、保険会社の主張は必ずしも正しいとは言えないので、そのまま受け入れると逸失利益が不当に減額されてしまいます。

(2) 自分でも逸失利益計算方法を理解しておく

保険会社から逸失利益の金額の提示を受けたとき、計算方法が分かっていなければ、それが適正なものかどうかがわかりません。
そこで、適正な金額の支払いを受けるためには、被害者自身が逸失利益の計算方法を把握しておくことが大切です。

逸失利益の計算方法は、かなり複雑なので、素人の方には難しく感じるかもしれません。
その場合には、弁護士に相談をしていただけましたら、ケースごとに正しい逸失利益の金額を計算いたします。

(3) 確実に後遺障害認定を得る

交通事故で後遺症が残ったケースにおいて逸失利益を獲得するためには、後遺障害認定を受けることが必要です。

後遺障害にはいろいろな等級があるので、より高い等級の後遺障害認定を受けることにより、高額な逸失利益を獲得することにつながります。

そこで、逸失利益の支払いを受けるためには、確実に高い等級の後遺障害認定を受けることが必須となります。
自分では適切に後遺障害認定を受けられない場合には、弁護士に対応を依頼すべきです。

(4) 弁護士に早めに相談すること

逸失利益を獲得するためには、弁護士によるサポートが重要です。

そもそも後遺障害の等級認定を受けるために、弁護士による助力やアドバイスが必要です。事故直後からの医療機関の選択や通院方法が、後の後遺障害認定に影響を及ぼすことも多いからです。後遺障害認定を受けられなければ、そもそも逸失利益を請求することすらできません。

また、保険会社と示談交渉をするときには、保険会社からのさまざまな主張に法的に対抗する必要もあります。遷延性意識障害のケースなどでは、後遺障害逸失利益を請求するときに、保険会社から「生活費控除」を主張されることなどもあり、被害者のご家族が困惑してしまうことも多いです。

そのようなとき、弁護士に相談をすると、これまでの裁判例などを参考に、適切に反論することが可能となります。

このようなことを考えると、交通事故で後遺症が残った場合や死亡した場合には、なるべく早めのタイミングで弁護士に対応を相談することが重要と言えます。

7.まとめ

交通事故で後遺症が残った場合や死亡事故のケースでは、高額な逸失利益を請求することができます。被害者の方が若かったケースや重大な後遺障害が残ったケース、収入が高額だったケースでは、億単位の逸失利益が発生することも珍しくありません。

しかし実際には、弁護士がついているかどうかで、請求の可否や請求できる金額が大きく変わってくることも多いのです。

泉総合法律事務所は、交通事故の被害者様のサポートに非常に精通している法律事務所です。適正な金額の逸失利益を請求するためにも、交通事故に遭われたら、なるべくお早めにご相談ください。

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