慰謝料・賠償金 [公開日]2020年2月14日[更新日]2020年5月21日

交通事故の通院費と通院以外の交通費|すべて請求可能か?

交通事故に遭うと、治療費や通院のための交通費、重症の場合は入院費や手術費用など、どうしても出費が嵩みます。そのうえ、家族の付き添いが必要なこともあります。

今回は、交通事故による通院交通費はいくら位まで請求できるのか、付き添い人の費用などは請求できるのかなど、交通事故で治療のために使用した交通費について解説します。

1.交通事故による通院交通費請求の基本

(1) 通院交通費の基本的な考え方

基本的に、事故で負った怪我の治療にともなう通院交通費は、支払った実費分を保険会社に対して請求することができます。

もちろん、加害者が自賠責保険しか加入していなくても交通費の請求は可能です。(自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準 平成13年 国土交通省 金融庁 告示第1号)。

ここには、請求できる通院交通費として、「通院、転院、入院又は退院に要する交通費として必要かつ妥当な実費とする」と定められています。

しかし、最終的に認められるかどうかは、裁判所の判断によります。そこで必要なのは、俎上に上った様々な事情を考慮して、社会通念上相当であると裁判所に認められることです。

任意保険会社も、賠償額の決定に裁判所の判断を参考にはしますが、残念ながら、彼らも営利企業です。自社の利益を考えながらの交渉となります。

(2) 通院交通費はいつまで請求できるか

基本的に、通院交通費は、怪我が治癒するまで請求することができます。

しかし、医師が「症状固定」と判断し被害者が納得すれば、治療はそこで終了し、それ以降は、請求することができません(ただし、重篤で将来にわたり治療を行う必要が認められれば、将来の通院交通費が認められることがあります)。
症状固定と打ち切り

2.交通手段別の通院交通費

通院するにしても、電車やバスなどの公共交通機関、自家用車、タクシーなど、使用する交通手段によって金額が異なります。

では、実際に、通院交通費はどこまで認めてもらえるのでしょうか?
交通手段別に考えてみることにしましょう。

(1) 電車賃・バス代

公共交通機関の請求可能な範囲は分かりやすいかもしれません。
基本的には、自宅の最寄駅やバス停から病院の最寄駅やバス停になります。

このとき、いくつかの経路がある場合、金額と所要時間に合理的な説明がつく範囲であれば、支払ってもらえるでしょう。
基本的には金額がもっとも少ない経路になりますが、それだとかなりの遠回りとなり、時間にしたら倍以上かかるというようなケースでは、金額が多少高くなっても最短経路を選択することができる場合もあります。

同様に、病院が徒歩圏内であっても、足を怪我して歩行化困難である等、電車・バスを利用した必要性に合理的な説明ができれば、電車賃やバス代は交通費として認めてもらえる可能性は高いです。

公共交通機関を使用した場合の電車賃やバス代は、料金が明確なので、通院交通費の請求に領収書は必要ありません。

【定期券の利用は?】
ただし、病院が通勤経路にあり通勤定期を利用するなら、定期券分の交通費は支払ってもらえません。
一方で、長期の通院が必要であれば、定期券を購入したほうが安上がりなこともあるでしょう。定期代は実費として認めてもらえます。

(2) 自家用車の利用

通院に自家用車を利用した場合に請求することができるのが、ガソリン代です。
ガソリン代は、一律1㎞あたり15円として通院交通費が計算されます。この場合も合理的な説明ができる経路、ということになります。

駐車料金や高速代も相当性が認められれば、賠償の範囲です。
駐車料金や高速代の請求には、領収書が必要となります。

(3) タクシー代

タクシーも、その利用の相当性が認められれば、保険会社に請求することができますが、事故の怪我で歩行が困難な場合や、駅やバス停が徒歩圏内にない場合、医師の指示がある、など、特に必要があるケースに限られると考えたほうがいいでしょう。

タクシー代を通院交通費として請求するときも、領収書が必要になります。

(4) 通常のルートを外れた通院交通費

通院するとは言っても、通常のルートを外れなければならないこともあるでしょう。
例えば、職場から直接病院に向かうことや、逆に病院から仕事をするために職場に戻ることも考えられます。

こういった場合でも、会社から病院への通院交通費や病院から会社への通院交通費も請求することが可能です。

もし、「いつもと違うルートで通院したけれど請求できるかな」と迷ったら、弁護士に相談してみるといいでしょう。

3.交通事故の通院交通費請求方法

では、通院交通費を請求するには、どのようにすればいいのでしょうか。

(1) 通院交通費明細書の書き方

まずは、保険会社から送付される通院交通費明細書に明細を記入しなければなりません。

[参考記事]

通院交通費明細書の書き方|通院交通費の請求方法

自賠責保険の場合は、自分で保険会社に連絡する必要がありますが、ダウンロードに対応している各保険会社のHPもあり、活用することができます。

通院交通費明細書の書式は保険会社によって多少の違いはありますが、書き方はそれほど難しくありません。署名、捺印し、事故に遭った日、通院した日や期間、利用した交通機関、かかった費用などを記入します。

このとき、自家用車やタクシーを利用した際の駐車場や、タクシーの領収書を添付する必要があります。

ある程度期間をまとめ通院交通費明細書を作成する人がいますが、通院日を忘れてしまった、領収書を失くしてしまったという人もいます。通院交通費明細書は通院の度に小まめに作成するよう、心がけましょう。

(2) 通院交通費の入金はいつ?

通院交通費は、示談交渉の際に請求し、示談交渉が終了した後に保険会社から振り込まれることになります。

しかし、交通費を被害者が立て替えることが負担になることもあるでしょう。

こういった場合は、仮渡金や内払金の制度があります。詳しくは、弁護士にご相談ください。

[参考記事]

交通事故の保険金がなかなか下りない。いつ支払われるの?

【交通事故の通院交通費で嘘の請求をしたら】
通院交通費が請求できるからといって、通院交通費明細書に嘘を記入してはいけません。
例えば、電車代を請求しながら徒歩で通院したり、通院していない日の交通費を請求したりと、通院交通費で「儲け」を出すと、詐欺罪に該当します。判明して保険会社に被害届を提出されれば、取り返しのつかないことになります。

4.交通事故により通院以外に使用した交通費

では、通院以外の交通費、例えば、交通事故の怪我が原因で、通勤や買い物にタクシーを利用した場合、請求できるのでしょうか?

これは、原則的に、請求は難しいと思われます。

ただし、交通事故の怪我で車椅子を使用しなければならなくなったなど、生活に支障があれば、認めてもらえる可能性はあります。
こういったケースでは、事前に保険会社に連絡を取り、医師の診断をもらっておくと交渉しやすいでしょう。

裁判では、交通事故で、右膝痛・右膝異常知覚(RSD12級12号)となった看護師が、職場復帰のための訓練として松葉杖でタクシー通勤した53日分19万円分の交通費の請求を認めた判例もあります(東京地裁判平17.2.15 交民・38・1・219)。

5.交通事故で負担を強いられた家族の交通費

交通事故で交通費を支払わなければならないのは本人だけではありません。
交通事故の一報を聞きつけた家族が病院に駆けつけたり、歩行が困難な被害者に付き添ったりと、家族が支出する交通費も決して安くはないでしょう。

最後に、被害者家族が支払う交通費についてどこまで請求できるかについて説明します。

(1) 交通事故の駆けつけ費用やお見舞いの交通費

警察や病院から交通事故について連絡を受けた家族は、病院に駆けつけるでしょう。
また、重症の被害者や年少の被害者であれば、何度も見舞に訪れたいと考えるのは人として当然です。

しかし、自賠責保険では、駆けつけ費用やお見舞いのための交通費について請求することは困難です。

片や、裁判では、頭蓋骨骨折や記銘力低下などで後遺障害併合4級となった高校3年生の両親が、高速道路を利用して120回以上見舞に訪れた往復のガソリン代と高速代として40日分、24万円が認められた判例(東京地裁平10.1.30 交民31・1・148)や、救急搬送時に危篤状態で後に死亡した大学生の祖母、親しかった叔母や伯父らが搬送先に駆けつけた駆けつけ交通費について、5万余円を認めた判例などがあります。

一般に、重篤な障害ほど認められやすい傾向にあるようです。

(2) 家族が通院に付添った場合の交通費

残念ながら、家族の通院に付き添った際の交通費も、自賠責保険会社に付添の交通費を認めさせることは難しいでしょう。

しかし、裁判では、被害者の近親者が看護のために付添った場合、その交通費は損害として賠償の対象となり得るという立場が大勢を占めます。

付添交通費を認めた判例としては、独身の被害者の姉が北海道から6回付き添いに来た際の航空運賃35万円を認めたもの(札幌高裁判平13.5.30 交民 34・6・1786)や、高次脳機能障害と外貌醜状で後遺障害併合2級の被害大学生に付き添った近親者に対して、4万余りの付添交通費を認めたもの(東京地裁平23.9.22 交民44・5・1202)などがあります。

また、ここでは詳しくは説明しませんが、近親者が仕事を休んで付き添いをした場合は、休業損害と付添看護費いずれか高い方を休業補償として請求することができます。

6.交通事故で任意保険会社と交渉するなら弁護士へ

被害者の交通費は、原則として、保険会社に対して実費の請求が可能です。
問題は、どの範囲まで認められるかです。

もし、通院交通費で保険会社ともめている、請求できるか迷っているといったお悩みがあれば、是非、泉総合法律事務所にご相談ください。

泉総合法律事務所では、交通事故の問題に精通した弁護士が、最後まで責任もってサポートさせていただきます。少しでも困ったことがあれば、是非ご相談ください。

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