慰謝料・賠償金

交通事故においてペットの治療費は請求できるのか?

交通事故においてペットの治療費は請求できるのか?

人身事故の被害者は、加害者に対して治療費や慰謝料などの請求ができることはご存知でしょう。

では、もし自分の飼っているペットが交通事故に遭ってしまった場合、その治療費は請求できるのでしょうか。

また、大事な家族の一員を傷つけられたことに対して、慰謝料を請求することはできないのでしょうか。

1.交通事故でのペットの法律上の扱い

交通事故の損害賠償には、物的損害人的損害があります。

物的損害とは、交通事故によって、自動車などの「物」が壊れたことによる損害です。

これに対する損害賠償は、壊した物の対価ということになりますので、例えば、自動車であれば、「新車価格」ではなく、「現在の価格(中古価格、時価)」を賠償することになります。

人的損害とは、人的損害は、人が怪我をしたり、死亡したりしたことに対する損害です。人的損害には、治療費、休業損害、慰謝料などさまざまなものが含まれます。

ペットは、「人」ではないので、法律上は「物」として扱われます。そのため、ペットの怪我や死亡は、物的損害の対象となります。

そして、物的損害は、その財産的価値が填補されれば、それで足りるとされていますので、慰謝料請求は原則として認められないとされています。

ペットが自分の自動車に乗っていて交通事故に遭った場合、ペットがはねられた場合のいずれも、相手の対物賠償保険の対象となるにとどまります。

2.ペットに関して請求できるもの

(1) 治療費

交通事故によって、ペットの治療費が必要になった場合には、交通事故と因果関係のある損害として、損害賠償の請求が可能です。その金額は、獣医師の診断書・動物病院の請求書が基礎となるでしょう。

しかし、治療費の全額を請求できるとは限りません。

例えば、「物」である自動車が、交通事故によって損壊した場合、自動車の修理費用を請求することができます。

しかし、自動車の修理費用が、自動車の時価を上回った場合には、「全損」と判断され、自動車の時価までしか請求できないことになっています。

ペットも同じ物的請求ですから、その治療費が、ペットの時価を上回る場合には、ペットの時価までしか認められない可能性があります。

なお、後述する大阪地方裁判所平成27年8月25日判決では、犬の時価は不明なのですが、治療費約12万円について、全額が交通事故による損害として認められています。

(2) ペットに後遺障害が残った場合

ペットは「物」と同じ扱いなので、原則として、ペットの時価を基礎とする賠償までしか認められません。

そのため、人に後遺障害が残ったときのような慰謝料を求めることはかなり難しいといえます。

(3) ペットが死亡した場合

自働車が「全損」した場合と同様に損害金として、市場価格(時価)を請求することは可能です。

それ以外に慰謝料請求をすることは原則的には難しいと思われますが、後述するような判例もあることから、事案によっては認められる可能性もあると思われます。

(4) ペットと慰謝料に関する判例

ペットの傷害について、慰謝料の請求が認められる可能性を指摘した判例として、大阪地方裁判所平成27年8月25日判決があります。

この判例では、犬に傷害を負わされたことに対する慰謝料の請求について、

「物的損害については、財産上の損害の賠償により、精神的苦痛も慰謝されることになると解され、原則として、財産上の損害の賠償に加えて、慰謝料が認められることはないものと解される。もっとも、犬などの愛玩動物は、飼い主が家族の一員であるかのように扱い、飼い主にとってかけがえのない存在になっていることが少なくない(公知の事実)。そのような動物が不法行為により重い傷害を負ったことにより、当該動物が死亡した場合に近い精神的苦痛を飼い主が受けたときは、飼い主の精神的苦痛は、社会通念に照らし、主観的な感情にとどまらず、損害賠償をもって慰謝料されるべき精神的損害として、飼い主は、これを慰謝するに足りる慰謝料を請求することができるものと解するのが相当である」

と判示しました。

もっとも、この判例では、犬が負った症状が「全身の震えや食欲不振」といった症状に留まることから、被害者(飼い主)の被った精神的苦痛は、社会通念上、損害賠償をもって慰謝されるべきものとまでは言いがたいとして、慰謝料は0円と判断しています。

しかし、この判例理論によると、家族の一員というべきかけがえのない存在となっている犬などの愛玩動物が、重い後遺障害を負ったり、死亡したりした場合には、慰謝料が認められる余地があるということになります。

3.過失相殺

過失相殺とは、事故の態様に応じて、加害者と被害者に公平に損害を分担させるための制度です。そこで、被害者に過失があれば、物的損害も人的損害も過失相殺を受けます。

物的損害の一部であるペットに関する損害賠償も過失相殺の対象となります。

先ほどの大阪地方裁判所平成27年8月25日判決においても、飼い主の過失によって、ペットに生じた損害について過失相殺が認められています。

「自働車に乗せられた動物は、他の車に衝突ないし追突された際に、その衝撃で社内の設備に衝突する危険性が高いと考えられ、動物を乗せて自働車を運転する者は、このような予想される危険性を回避し、あるいは、事故により生ずる損害の拡大を防止するため、同乗する動物に動物用シートベルトなど体を固定するための装置を装着させるなどの措置を講ずる義務を負う

と判断されています。

その上で、動物用シートベルトなどを装着させていなかった飼い主の過失は1割と判断されました。

飼い主は、ペットの補償の前に、まずはペットの安全を考えた行動を取っておくべきということです。

4.ペットのための保険

ペットのために加入できる保険は、大きく分けると自動車保険のペット搭乗補償とペット保険の2つがあります。

(1) 自動車保険のペット搭乗補償

自働車保険の特約ですから、基本的には、ペットが飼い主の自動車に乗っていて交通事故に遭った場合が対象で、同乗していたペットの治療費・葬祭費用が補償されるのが一般的です。

ただし、例えば、アクサダイレクトの「ペットプラス」という特約では、対象となるのは犬と猫に限定されています。

また、補償されるのは、自動車保険の被保険者と同時にケガをして、人身傷害補償保険の適用を受ける場合に限定されています。

また、ペットが他人に噛みついた場合のように、他人に損害を負わせた場合も補償の対象となります。人間でいうところの「個人賠償責任保険」のようなものです。

なお、ペット搭乗補償を扱っている保険会社はまだ、あまり多くはないようです。

(2) ペット保険

ペット保険は、人間の医療保険のようなものです。ペットが病気になった場合の医療費の自己負担率を下げることができます。

ペット保険に入っていなければ、医療費を100%払わなければならないところ、ペット保険に加入していれば、30%の自己負担ですむという形になります。

なお、自己負担率は、加入する保険会社によって異なりますので、保険料と比較してよく検討した方がよいでしょう。

また、ペット保険にも「賠償責任特約」がついた商品も出ているようです。

ペットに関する保険商品は、保険会社ごとに違いますし、新しい保険や特約が出ることもありますから、よく比較して選ぶほうがよいでしょう。

5.まとめ

ペットが事故に遭ったとしても、慰謝料の請求は現実的には難しいのが実情です。不安な方は、保険への加入を検討するとよいでしょう。

もし交通事故被害で困っていることがあったら、泉総合法律事務所の弁護士に相談してみてください。交通事故に特化した弁護士が全力でサポートさせていただきます。

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