慰謝料・賠償金 [公開日]

未成年者が加害者である自転車事故に巻き込まれた場合

未成年者が加害者である自転車事故に巻き込まれた場合

平成26年度の自転車事故の当事者となった人数は、112,134人にのぼります。

自転車運転者講習制度も始まり、自転車事故に対する意識は少しずつ高くなっていますが、未だ自転車事故に巻き込まれてしまう人は存在します。

特に、歩行者に対する事故件数の減少率は2.5%(平成17年と26年を比較)であり、自転車が加害者となる事故に関してはあまり減っていません。

また、対歩行者事故で加害者となる割合は、高校生が最多であり、次に中学生となっています。

未成年者が自転車事故を起こした場合、損害賠償責任は誰が負うのでしょうか。

今回は、未成年者の自転車事故について解説します。

1.未成年者の責任能力

子どもが事故の責任を負えるのか?

未成年者の自転車事故に関する損害賠償請求は、未成年の責任能力と深く関係しています。

そこで、まずは未成年者の責任能力についての基本的なことを理解していきましょう。

(1) 未成年の責任能力

民法上、責任能力とは、事理弁識能力を備えていることを指します。

民法712 条では、責任能力について、「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない」と規定しています。

つまり、自分の行為を理解し法的責任があるかどうかの判断ができるかどうかの能力を備えていない場合は、損害賠償責任を負わないということです。

民法709条は、不法行為責任につき損害賠償請求ができる規定です。そのため、原則として誰かに故意・又は過失でなんらかの損害をもたらした場合には、損害賠償責任を負うことになります。

しかし、自分の行為の是非につき判断できない子どもにまで責任を負わせることは現実として難しいです。

そこで、712条が例外的に事理弁識能力を備えていない未成年は責任を負わなくて良いとしたのです。

したがって、自転車事故で事理弁識能力を有しない子どもが事故を起こし、損害賠償請求を受けたとしても子どもが責任を負うことはありません。

このように、責任能力は損害賠償責任とは切り離せない重要な規定です。自転車事故以外でも、子どもがなんらかの事件に巻き込まれた場合には関係してくる条文ですので、理解しておきましょう。

(2) 責任能力は何歳から?

基準は12歳程度

では、責任能力がある状態というのは、具体的に何歳といわれているのでしょうか。

民法上の事理弁識能力は、小学校を卒業するレベルの能力を備えた者と言われています。つまり、12歳程度が責任能力の有無の境目となるのです。

もっとも、これは平均的なものであり、子どもの発達状況によって変わってきます。

判例でも、12歳で責任能力が備わっていると判断した例もあれば、13歳でも未だ責任能力なしと判断されたケースもあります。

自転車事故の場合でも、11歳であれば責任能力がないと判断されますが、12歳、13歳となると責任能力に関する判断が分かれる可能性があります。

このように、責任能力は一般的に12歳から備わると言われています。

しかし、個別ケースによって、誤差は生じているため、12歳、13歳程度のお子さんであれば判断は分かれる可能性もあるでしょう。

2.未成年に責任能力がない場合

次に、未成年に責任能力がなかった場合、損害賠償請求はどうなってしまうのかを理解していきましょう。

(1) 親が損害賠償責任を負う

では、子どもに責任能力がないと判断される場合、損害賠償責任はどうなってしまうのでしょうか。

子どもに責任能力がない場合、被害者は加害者である子どもに損害賠償請求をすることができなくなります。そうなると、被害者を保護することはできなくなってしまいます。

そこで、民法は714条にて次のように規定しています。

民法714条
その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う

つまり、子どもに責任能力がない場合は、その親(親権者、または監督義務を有する者)が損害賠償責任を負うことになります。

親権者または、日々一緒に生活している監護者は子どもを教育し監督・指導する義務があります。これを怠り、子どもが自転車事故を引き起こしてしまったことに責任があるとし、親権者等に責任を認めているのです。

簡単に言うと、「子どもに対し自転車の乗り方や自転車マナーについてしっかり教育し・監督していなかったことが原因」ということです。

このように、責任能力がない子どもが起こした不法行為責任は、その親が責任を背負うことになっています。

判例でも実際に、親に責任を認め、損害賠償請求を認めています。

(2) 監督責任の例外

親も損害賠償責任を負わずに済むことがある?

では、子どもが起こした自転車事故については、必ず損害賠償責任を親が負うのでしょうか。

実は、親が必ず損害賠償責任を負うとも言い切れません。民法714条には、続きがあり以下のように規定されています。

民法714条
ただし、親権者が義務を怠らず、又は義務を怠らなくても損害が生ずべきであった場合、責任を負わない

ご覧の通り、監督・指導義務を怠らなかった場合や、怠っていたとしても損害が発生したと証明できる場合は、損害賠償責任を負わずに済みます。

親が子どもに監督義務があることは多くの方が理解できることですが、監督義務は実に抽象的なものです。

自転車事故が起きたその瞬間に絶対にそばにいることはほとんどの場合不可能ですし、子どもの行動すべてを把握することは困難です。

そのため、親の責任としては普段からの教育・監督責任を怠っていたかどうかという点が問題となるのです。

そして、「怠っていなかった」と証明できる場合のみ、損害賠償責任を負わずに済むことになります。

しかし、この証明は極めて難しいというのが実情です。

子どもが起こした行動の責任は親が責任をとるべきという考えが支配的なため、よほど予測困難な危険であった事情や不可抗力による発生であるなどを指摘しない限り、親の監督責任が問われます。

未成年による自転車事故の判例でも、普段から自転車マナーについて教育していたことを未成年者の親が主張していましたが、事故状況を見る限り、自転車に対する指導が子どもに十分に浸透していなかったことが認められるとして、親の責任が否定されることはありませんでした。

他方、免責が認められた事例もありますが、内容が極めて珍しいものです。

具体的には、小学校でサッカーの練習中にボールが道路へ出てしまい、バイク走行中の男性を転倒させ、寝たきりとなった事案です。

このような状況では、危険の予測は困難であり、親の責任は否定されました。

このように、よほど予測不可能な事情等がない限り、714条但書の主張は認められません。そのため、子どもへの指導はもちろんですが、自転車保険に入るなど別の対策も必要かもしれません。

自転車保険については「自転車保険に入るメリットとは〜自転車の交通事故に備えて」で詳しく説明しています。

3.未成年者に責任能力がある場合

次に、未成年に責任能力がある場合について、損害賠償責任はどうなるのかをご説明します。

(1) 未成年が損害賠償責任を負う場合

子どもが13歳を超える場合、基本的には責任能力があると判断されます。この場合は、民法上事理弁識能力を備えていると判断されるため、民法709条に基づく損害賠償責任を子ども自身が背負うことになります。

しかし、現実としてはどうでしょうか。未成年の子どもが損害賠償責任を背負うことは可能でしょうか?

実際上、高校卒業後の年齢である18歳、19歳であれば、働いている子もいるため、ある程度経済力を有しているケースがあります。

この場合は、親に監督責任が認められるケースはほとんどないといえるでしょう。

子どもが事件に巻き込まれたとしても、親の監督責任が問われるケースは極めてまれだといえます。

では、13歳、14歳、15歳など中学生くらいの年齢の場合はどうでしょうか。

平成20年に起きた自転車事故の判例では、子どもが起こした自転車事故に対し、9500万円の損害賠償請求が認められています。小学5年生の少年が自転車乗車中に歩行者(女性・62歳)と衝突事故起こしたという事件です。

この事件では、子どもに責任能力がなかったため、親が損害賠償責任を背負うことになりました。

しかし、子どもが14歳だった場合はどうでしょう。責任能力はあるものの、通常は何千万にもなる損害賠償責任を中学生が背負うことは不可能です。

現実面において、経済力がない子どもが損害賠償責任を背負うことはできないということです。

この場合、子どもに資力がないため、被害者は諦めるしかなくなるという不幸な結末となってしまいます。

もっとも、実際上は被害者が負担を被って終わることはありません。実際上は親が支払いをすることになります。

法的根拠については、次を見ていきましょう。

(2) 子どもに責任能力があっても親の負担が必要なケース

では、責任能力はあるが子どもに経済力がない場合はどうなるのでしょうか。

この場合、子どもから損害賠償金を取ることは事実上不可能であるため、別の方法が必要となります。

最高裁の判例では、未成年者に責任能力がある場合でも、15歳の少年が犯した強盗殺人事件につき、親の監督義務と子どもの行為の結果に因果関係が認められる場合には、監督義務者である親に不法行為責任が認められると判断しています。

つまり、13歳、14歳、15歳くらいの中学生が自転車事故を起こした場合は、最終的には親が損害賠償責任を負うことがあります。

責任能力がない場合とは異なりますが、「全く自転車マナーについて教育をしていなかった」、「以前にも事故になりかけたが適切な教育を行わなかった」など監督義務を十分に果たさなかったことによって自転車事故が引き起こされたといえる場合には、親が損害賠償責任を負うことになるのです。

このように、子どもに責任能力がある場合でも、親が損害賠償の負担を背負うことはあります。

子どもの年齢や自立しているかどうかにもよりますが、多くの場合は親が負担を背負うことになることを理解しておいてください。

4.自転車事故の問題点

自転車事故の問題点

次に、自転車事故の損害賠償請求における問題点と高額な損害賠償請求に対する予防策をご説明します。

(1) 加害者が賠償金を支払えない場合

では、未成年者による自転車事故にはどのような問題があるのでしょうか。

一番大きな問題としてあげられるのが、「加害者が賠償金を支払えない場合がある」ということです。

支払えないことについては

①保険未加入の問題
②損害賠償が高額である
③自転車事故の危険性の軽視

などが理由として考えられます。

①自転車保険の加入者は2割以下

自動車事故の場合は、ほとんどの方が任意保険に加入しています。

また、強制加入の保険として自賠責保険もあるため、被害者は最低限の保障は受けられることになります。

しかし、自転車保険の場合はそうとは限りません。自転車運転者講習制度が始まり、街の取り締まりも多くなっていますが、自転車保険は未だ全国で加入が義務付けられているわけではないためです。

また、加入が義務付けられているものの、罰則がないため自転車運転者で保険に未加入という方は非常に多いのです。

ある調査では2割以下の人しか加入していないという結果もあります。

保険に入っていない場合は、損害賠償請求は自己負担ということになりますが、数千万円もの負担を軽々とできる方は非常に少ないでしょう。

未成年が事故を起こしてしまった場合、ほとんどの場合子育て世代の親が負担することになりますが、どれほどの経済的余裕があるかは家庭ごとに異なります。

②損害賠償が高額である

また、自転車事故の損害賠償請求は高額な事案も散見しています。

前述した未成年者が起こした自転車事故の損害賠償金は9500万円でしたが、自転車同士の事故では約1億7000万円もの損害賠償が認められた事例もあります。

怪我の程度が軽い場合には、それほど高額な損害賠償金とはなりませんが、死亡事故などの重大事故に至った場合は自動車事故と同様に高額な損害賠償金が必要になります。

未成年者の場合、親が支払える場合は問題ありませんが、支払えない場合は差押さえなどを行うことになります。

もっとも、未成年者が損害賠償責任を負う場合は、差し押さえられるのは子ども名義の財産だけであり、親の預貯金などは差押さえができません。

親が支払義務者である場合でも、実際上支払えるほどの経済力がない場合には、自己破産という結果になってしまうこともあります。

この場合は、被害者は加害者になにも請求することはできません。

③自転車事故の重大さが浸透していない

自転車での事故は軽症であることが多いため、危険性を認識している方も多いとはいえません。

高額な損害賠償請求が報じられるようになり、気をつけるようになった・子どもをきちっと指導するようになったという人は増えているものの、未だ事故の危険性を軽く考えている人もたくさんいるのが実情です。

「自転車事故において加害者が賠償金を支払えない」という問題には、このような背景や理由があるのです。

(2) 自転車事故被害への整備が行き届いていない

「加害者が賠償金を支払えない場合がある」以外にも、自転車事故には問題点があります。

①過失割合の算定が困難であることや、②後遺障害認定が受けにくいという事情から、当事者間での揉め事が多くなってしまうのです。

①過失割合の算定が困難

自転車事故の場合、過失割合の算定でもめることも多くなっています。

というのも、道路交通法上、自転車は車両となります。自動車やバイクのように免許が必要ないことから子どもでも気軽に乗れる乗り物ですが、事故を起こした場合は自動車と同様の規制を受けます。

また、当事者の落ち度の度合いを測るため、過失割合というものが算定されますが、自転車事故の判例は少ないため自動車事故の判例から算定することになります。

そのため、当事者間で過失割合に合意が得られず、揉めてしまうケースが多くなっています。

さらに、自転車は歩行者からみれば強者であるため、過失割合の算定時に修正が加えられ過失割合が上がります

自動車対歩行者よりは自転車にとって有利な修正ですが、歩行者よりも過失割合が上がってしまうことは確かです。

そのため、過失割合に納得できない方も多くなっています。

②後遺障害認定が受けにくい

自転車事故で後遺障害が残ってしまった場合、対自動車の事故である場合は、自賠責保険から損害保険料率算出機構という機関が後遺障害の認定を行います。

しかし、自転車同士の事故や、対歩行者の事故では、上記機関は後遺障害の算定を行いません。

そのため、医療記録などを根拠に後遺障害認定の申請を行なっていくことになりますが、認定機関がないため当事者間で争いが生じやすくなってしまいます。

このように、自転車事故ならではの事情も問題点としてあげられます。

未成年者が当事者である場合は、親が子どもを守るために感情的になってしまい、示談交渉で納得できずもめてしまうこともあります。

5.我が子の自転車事故への対策

一方、加害者側が自転車事故の高額請求を防ぐ方法はあるのでしょうか。

自転車事故の損害賠償で困ってしまう事態を防ぐためには、次の2つの方法しかありません。

  • 子どもへしっかり自転車マナーを教育する
  • 自転車保険に入る

子どもに対しては

  1. 夜間はライトをつける(オートライト機能も有効)こと
  2. 歩道での事故が多いのでできるだけ車道わきを走ること
  3. 歩行者のすぐわきを通り抜けないこと
  4. 一時停止標識で一時停止させること
  5. 朝の時間帯は余裕がない人が多いので、早めに準備させ出かけさせること

など自転車マナーを普段から徹底させましょう。

また、自転車保険に加入しておけば、損害賠償の負担について心配は必要なくなります。加入中の自動車保険に付帯できるものもありますので、ぜひ検討してください。

未成年のお子さんがいらっしゃる方は万全の予防策をとっておくことをおすすめします。

6.未成年の自転車事故に巻き込まれたら弁護士へ

自転車事故を未成年が引き起こしてしまった場合、親の監督責任が重くのしかかることは多くなります。

逆に、自転車事故被害に遭われた方も、相手が未成年者だった場合は損害賠償請求が難しいケースもあります。

未成年者が当事者となっている場合は、未成年者の年齢だけでなく、親の経済力、自転車保険に加入しているかどうかなども問題となり、事件解決に時間がかかってしまうこともあるでしょう。

大きな事故となり、怪我の状態が重い場合には、当事者同士だけで話し合いをしていても、感情的になり交渉が進まないこともあります。

したがって、自転車事故に巻き込まれた方は、まず弁護士にご相談ください。

早期解決を望む場合は、弁護士が交渉を進めることにより示談で解決できることもできます。相手が提示する損害賠償金額に納得できない場合は、訴訟などで対処することも可能です。

弁護士が代理人となれば、交渉もスムーズに進み、比較的早期の解決が望めます。

泉総合法律事務所は、多数の交通事故案件の解決実績があります。ぜひお気軽にご相談ください。

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