慰謝料・賠償金 [公開日]2018年6月1日[更新日]2020年7月29日

未成年者が加害者である自転車事故に巻き込まれた場合

平成31年度の自転車関連事故件数は、80,473件にのぼります。
自転車運転者講習制度も始まり、自転車事故に対する意識は少しずつ高くなっていますが、未だ自転車事故に巻き込まれてしまう人は存在します。

特に、歩行者に対する事故件数の減少率は約1割(平成21年と31年を比較)であり、自転車が加害者となる事故に関してはあまり減っていません。
※参考「自転車事故の推移」国土交通省

では、もし、未成年者が自転車事故を起こした場合、損害賠償責任は誰が負うのでしょうか。

今回は、未成年者の自転車事故について解説します。

1.未成年者の責任能力

未成年者の自転車事故に関する損害賠償請求は、未成年の責任能力と深く関係しています。

民法709条は、不法行為責任につき損害賠償請求ができることを定めた条文です。そのため、原則として誰かに故意又は過失でなんらかの損害をもたらした場合には、損害賠償責任を負うことになります。

しかし、民法712 条では、責任能力について、「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない」と規定しています。

つまり、自分の行為を理解し法的責任があるかどうかの判断ができるかどうかの能力を備えていない場合は、損害賠償責任を負わないということです。
自分の行為の是非につき判断できない子どもにまで法的責任を負わせることは現実として難しいのです。

したがって、自転車事故で事理弁識能力を有しない子どもが事故を起こし、損害賠償請求を受けたとしてもその子どもが責任を負うことはありません。

【責任能力は何歳から?】
では、責任能力がある状態というのは、何歳くらいからを指すのでしょうか。
民法上の事理弁識能力は、小学校を卒業するレベルの能力を備えた者と言われています。つまり、12歳程度が責任能力の有無の境目となるのです。
もっとも、これは平均的なものであり、子どもの発達状況によって変わってきます。裁判でも、12歳で責任能力が備わっていると判断した例もあれば、13歳でも未だ責任能力なしと判断されたケースもあります。
自転車事故の場合でも、11歳であれば責任能力がないと判断されますが、12歳、13歳であれば、裁判所でも個別のケースによって責任能力に関する判断が分かれる可能性があります。

2.未成年に責任能力がない場合の損害賠償責任

ただし、子どもに責任能力がないからといって、損害を賠償しなくてもいいということではありません。

(1) 親が損害賠償責任を負う

被害者が加害者である子どもに損害賠償請求をすることができないとすれば、被害者を保護することはできなくなってしまいます。
そこで、民法は714条において次のように規定しています。

民法714条
その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う

つまり、子どもに責任能力がない場合は、その親(監督義務を負う者)が損害賠償責任を負うことになります。

親権者または、日々一緒に生活している監護者は子どもを教育し監督・指導する義務があります。これを怠り、子どもが自転車事故を引き起こしてしまったことに責任があるとし、親権者等に責任を認めているのです。

簡単に言うと、「子どもに対し自転車の乗り方や自転車マナーについてしっかり教育し・監督していなかったことが事故の原因であった場合は、親(監督義務者)が責任を負う」ということです。

このように、責任能力がない子どもが起こした不法行為に対する損害賠償責任は、その親が背負うことになっています。裁判例でも実際に、親に責任を認め、損害賠償請求を認めています。

(2) 監督責任の例外

しかし、民法714条には、以下のような但書があります。

民法714条
ただし、親権者が義務を怠らず、又は義務を怠らなくても損害が生ずべきであった場合、責任を負わない

ご覧の通り、親権者側が監督・指導義務を怠らなかった場合や、怠っていたとしても損害が発生したと証明できる場合は、損害賠償責任を負わなくてもよいのです。

ただし、この証明は極めて困難です。
未成年による自転車事故の裁判例でも、普段から自転車マナーについて教育していたことを未成年者の親が主張していましたが、事故状況を見る限り、自転車に対する指導が子どもに十分に浸透していなかったことが認められるとして、親の責任が否定されることはありませんでした(神戸地方裁判所平成25年7月4日判決)。

他方、免責が認められた事例もあります。

校庭でサッカーの練習中に11歳の小学生が蹴ったボールが道路へ出てしまい、バイクで走行中の高齢男性がボールを避けようと転倒し、寝たきりとなりその後死亡した事案です。
このような状況では、危険の予測は困難であり、親の責任は否定されました(大阪高等裁判所平成24年6月7日判決)。

このように、よほど予測不可能な特殊な事情等がない限り、親権者側が714条但書の主張をしても、認められることはありません。

3.未成年者に責任能力がある場合の損害賠償責任

子どもが13歳を超える場合には、基本的には責任能力があると判断され、民法709条に基づく損害賠償責任を子ども自身が背負うことになります。

しかし、現実問題として、未成年の子どもが損害賠償責任を背負うことは可能でしょうか?

高校卒業後、18歳、19歳で働いてある程度の経済力を有しているケースであれば、親に監督責任が認められことはほとんどないでしょう。

しかし、自転車事故の損害賠償金の額は高額になっています。
平成20年に起きた自転車事故の判例では、小学5年生の少年が自転車乗車中に歩行者(女性・62歳)と衝突事故を起こしたという事件で、9500万円の損害賠償請求が認められています(神戸地方裁判所平成25年7月4日判決)。

この事件では、子どもに責任能力がなかったため、親が損害賠償責任を背負うことになりました。

責任能力があったとしても、通常は何千万にもなる損害賠償責任を未成年者が背負うことは不可能です。
この場合、実際は親が支払いをすることになるでしょう。

4.自転車事故における未成年者の刑事責任

では、自転車事故で未成年者が人を死傷させてしまった場合は、刑事罰を問われるのでしょうか?

自転車であっても、道路交通法上、軽車両という立派な車両です。
被害者が死傷すれば、未成年者(20歳未満)であっても14歳以上であれば、家庭裁判所の審判によって、少年法による処分を受ける可能性があります。

ただし、処分といっても刑事罰が科されるわけではなく、保護処分というあくまで少年を更生させるための処分です。

実務上、自転車事故では、実際に少年院送致に至るような処分は(他に非行行為がない限り)まずないと言えるでしょう。

5.未成年者による自転車事故の問題点

最後に、未成年による自転車事故被害者の方に向けて、損害賠償請求における問題点をご説明します。

未成年者による自転車事故で一番大きな問題としてあげられるのが、「加害者が賠償金を支払えない場合がある」ということです。

自転車保険に加入していれば問題は少ないのですが、Au損害保険株式会社の調査によると、自転車保険に「加入している」と「おそらく加入している」の合計した加入率は、全国で57.3%ということです。
※参考「au損保、2年連続で自転車保険加入率を調査」au損害保険株式会社

加入について義務や努力義務を課している自治体は増えているものの、罰則がないため自転車運転者で保険に未加入という方は多いのです。

保険に入っていない場合は、損害賠償請求は自己負担ということになりますが、数千万円もの負担を軽々とできるご家庭は非常に少ないでしょう。

未成年者が起こした事故の場合、親が支払うことができなければ差し押さえなどを行うことになります。

もっとも、未成年者が損害賠償責任を負う場合、差し押さえられるのは子ども名義の財産だけです。親の財産については差し押さえができません。

また、親に支払えるだけの資力がなければ「自己破産」という結果になってしまうこともあります。

そうなると、被害者は加害者にそれ以上請求することはできなくなってしまいます

6.未成年の自転車事故に巻き込まれたら弁護士へ

未成年者が当事者となっている場合は、未成年者の年齢だけでなく、親の経済力、自転車保険に加入しているかどうかなども問題となり、事件解決に時間がかかってしまうこともあるでしょう。

当事者同士だけでの話し合いでは感情的になり、交渉が進まないこともあります。

自転車事故に巻き込まれた方は、まず弁護士にご相談ください。
早期解決を望む場合は、弁護士が交渉を進めることにより示談で解決できることもできます。相手が提示する損害賠償金額に納得できない場合は、訴訟などで対応することも可能です。

なお、現在、当事務所では、自転車事故についてご依頼をお受けしていません。

泉総合法律事務所は、多数の交通事故案件の解決実績があります。ぜひお気軽にご相談ください。

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