自動車保険 [公開日]2018年2月14日[更新日]2020年6月26日

会社へ通勤中に交通事故!通勤災害で労災保険を利用する場合の注意点

「労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害又は死亡」を通勤災害と言います(労働者災害補償保険法第7条第1項第2号)。
通勤中の交通事故は、通勤災害の典型的な1つと言えるでしょう。

では、通勤中の交通事故被害は、それ以外のケースと何が異なるのでしょうか。また、通勤中での交通事故被害の場合、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。

ここでは、通勤途中で交通事故に遭った際の注意点について、解説していきます。

1.通勤中の事故には労災保険が利用できる

通勤中に交通事故に遭ったときには、事故の損害を補償するために、労災保険を使うことができます。

労災保険とは、労働者を保護するために、業務中や通勤中の災害によって傷病・障害などを負ったり、死亡してしまったりした場合に保険給付を行う制度です。

通勤途中で交通事故に遭った場合に、労災保険を利用すれば次の補償がなされます。

補償の種類 給付の内容
療養補償 必要な治療費に対して支給
休業補償 通勤災害で労働ができず賃金が受け取れない場合に支給
障害補償 通勤災害で一定の障害が残った場合に支給
障害の程度に応じ、障害年金と障害一時金がある
傷病補償 療養開始後1年6ヶ月経過しても治らない場合に、該当する傷病の等級に応じて支給
介護補償 傷病年金・障害年金を受給している者のうち、一定の障害の状態にあり、現に介護を受けている場合に月単位で支給
遺族補償 通勤災害で死亡した被害者の遺族に支給
葬祭補償 通勤災害で死亡した遺族が葬祭を行う場合に葬祭料を支給

しかし、通常、交通事故では、加害者側の任意保険会社から事故の補償のために、保険金が支払われます。

では、通勤災害では、労災保険から補償を受けるメリットはどこにあるのでしょうか?また、利用することによるデメリットはないのでしょうか?

2.通勤災害で労災保険を利用するメリット・デメリット

通勤中の交通事故の被害者は、加害者側の任意保険会社(自賠責保険を含む)と労災保険の両方から補償を受けることが可能です(二重取りはできません)。

では、通勤災害のケースで労災保険を利用するメリットはどこにあるのでしょうか。以下で、その点について説明します。

なお、ここでは、大まかなメリット・デメリットについて説明しますが、詳細にお知りになりたい方は、是非以下のコラムもお読みください。

労災はいつまでに申請すればいいの?申請期間と申請のメリット

[参考記事]

労災はいつまでに申請すればいいの?申請期間と申請のメリット

(1) 通勤中の交通事故で労災保険を利用するメリット

被害者側に過失がある場合

任意保険会社の保険金は、被害者側にも過失がある場合、被害者側の過失相当分について、治療費や休業損害なども含めて過失相殺(損害総金額から被害者側の過失相当金額を差し引く)が行われます。

一方で、労災保険を利用した場合、過失相殺はされず、治療費については労災保険が全て負担してくれるため、被害者側にて治療費を負担すべき部分がほとんどありません。

被害者に過失がない場合のメリット

被害者側に過失責任がなければ、治療費や休業損害を含めて損害の全てを加害者側の保険会社が負担することになるため、労災保険を利用するメリットがないのでは?とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、被害者側に過失がなければ加害者側の保険会社が全てを対応してくれるので、労災を利用する必要はありません。

しかし、休業損害や治療費などの支払いを保険会社から打ち切られた場合に、医師が治療や休業が医学的に必要だと判断すれば、労災保険が休業給付や治療の支払いをしてくれることがあります。

【特別支給金によるメリット】
労災保険には損害賠償とは別に支給される、休業特別支給金や障害特別支給金、障害特別一時金などの制度があります。例えば、休業特別支給金は休業補償とは別に、事故前給与の2割分が支給されます。障害特別支給金では認定された後遺障害等級に応じて一定の金額が支給されます。
これらの特別支給金は加害者側の保険会社から支払われる損害賠償金との損益相殺(損害賠償金の計算時に補償すべき額から労災保険から支払われた金額を差し引く)の対象ではないため、労災保険を利用すれば、特別支給金の分だけ多く受給できるのです。
(なお、特別支給金については、加害者側保険会社と示談成立後でも労災保険に申請をすることが可能です。)

加害者が無保険車や自転車の場合のメリット

加害者が自賠責保険に加入していないケースや、自賠責保険などの強制保険制度のない自転車による事故のケースでも、通勤中や業務中の事故であれば労災保険を利用することができます。

無保険の自動車や保険に加入していない自転車の事故で被害に遭った場合には、損害賠償を加害者に直接請求するしかありません。加害者に資力がなければ、治療費も満足に支払ってもらえないでしょう。

こんな時には、労災保険を利用すれば、安心して治療を受けることができます。

(2) 通勤中の交通事故で労災保険を利用するデメリット

労災保険には慰謝料がない

最初に挙げた補償内容をご覧いただいてもお分かりの通り、労災保険には、慰謝料に相当する補償が存在しません

しかし、加害者側の保険と労災保険は併用が可能です。労災保険から補償給付を受けていたとしても、慰謝料の請求も可能です。

労災指定の病院以外で治療した場合の自己負担

被害者が治療を受けた病院が労災指定病院であれば、費用負担は一切ありません。

対して、労災指定以外の病院で治療を受けた場合は、いったん治療費を自己負担して支払った後に、労働基準監督署に請求しなければなりません。

3.通勤災害として労災保険へ請求するための注意点

(1) 労災保険の補償対象となる「通勤」に注意

通勤災害で労災保険にその補償を請求するためには、交通事故が通勤途中で発生したことが必要です。

労働者災害補償保険法第7条2項に、通勤とは、労働者が就業に関して次の3つの移動を合理的な経路及び方法で行うこととしています。

  • 住居と就業の場所との間の往復
  • 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
  • 単身赴任先の住居と帰省先住居との移動

移動の経路を逸脱・移動を中断した場合は、逸脱・中断の間とその後の移動については、通勤とはなりません(ただし、逸脱・中断が日常生活に必要な行為で、やむを得ない事由で行う最小限度の場合は、逸脱・中断の間を除いて通勤となります)。

したがって、通勤経路上でも会社帰りにレストランで飲食をして、その帰りに事故に遭った場合などでは、通勤途中とは言えないと判断されてしまうケースもあるため、注意が必要です。

また、勤務先に報告している通勤方法と違う方法(たとえば、勤務先にはバスで通勤していると報告していたが、自動車で通勤していたなど)で通勤している際に事故に遭った場合、勤務先に報告していた通勤方法と異なるため、勤務先との間で問題が発生する可能性があります(ただし、通勤方法として合理的な経路および方法であれば、労災保険にて対応をしてくれることもあります)。

(2) 損益相殺に注意

労災保険から支払われた治療費や休業損害については、基本的に治療費や休業損害といった同種の損害項目ごとに損益相殺(労災から支払われた金額を差し引く)されることになります(ただし、慰謝料などのその他の項目から労災保険から支払われた給付金額を差し引くことは許されません)。

加害者側の任意保険会社の保険金と労災保険からの給付を二重に受けることはできないのです。

4.通勤途中の物損事故の修理代に労災は使えるか?

残念ながら物損事故は、労災保険の補償対象とはなりません。それは、制度趣旨からいっても当然のことでしょう。

したがって、マイカー通勤で使用していた自家用車で事故にあっても、修理代は、通常の物損事故と同様に、示談交渉で合意した過失割合に応じて、相手側の保険会社か相手が直接支払うことになります。

通勤中に会社の車で物損事故に遭った場合も、基本的には同じ考え方ですが、万一事故を起こしてしまった場合については、次のコラムをお読みください。

[参考記事]

社用車での事故の責任は?加害者の自己負担か、業務外ならどうなるか

5.労災保険を利用した事故解決もお任せください

通勤途中にて交通事故に遭った場合、通勤災害として労災保険に請求できるケースがあります。
労災保険を利用することには被害者側にもメリットがありますので、必要があれば利用を検討してみましょう。

また、労災保険を利用した場合は、損害額の計算が複雑になるところもありますので、労災保険の取り扱いに詳しい専門家に相談することが重要です。

泉総合法律事務所では、労災保険を利用した交通事故の解決実績も豊富にあります。

交通事故被害者の方で、労災保険の利用をご検討中の方も、当事務所にご相談ください。ご状況に応じた適切なアドバイスをさせていただきます。

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