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交通事故でも健康保険は利用できる!利用のメリット・デメリット

交通事故でも健康保険は利用できる!利用のメリット・デメリット

交通事故によるケガの治療のために、健康保険を利用することはできます。この点、交通事故に健康保険は利用できないと誤解されている方も多いようです。

医療機関の側でも誤解しているケースがあるため、行政通達において、交通事故でも健康保険は利用できる旨を国民に周知するよう指導しています。

他方、交通事故によるケガの治療のための費用は、健康保険の利用の有無を問わず、原則として、入通院の都度、加害者の加入する任意保険会社により負担してもらうことができます。

それでは、どのようなケースにおいて、健康保険を利用すべきなのでしょうか。

今回は、交通事故において健康保険を利用することのメリット・デメリットについて解説します。

1.健康保険を利用するメリット

被害者に過失のある場合には健康保険を利用することにより自己負担部分を軽減できる!

交通事故の被害者に過失のある場合、被害者は、事故によるケガの治療費について、自己の過失割合に応じて自己負担します。

<モデルケース>
過失割合:加害者90%:被害者10%
治療費:80万円

<被害者の負担する治療費の額>
健康保険を利用した場合の自己負担額:80万円×30%×10%=2万4000円
健康保険を利用しない場合の自己負担額:80万円×10%=8万円

このように健康保険を利用した場合には、そもそも被害者に生じる損害としての治療費は3割負担部分に抑えられるため、被害者に過失のある場合でも、自己負担額を軽減できるのです。

自賠責保険による賠償金額を抑えることができる!

交通事故によるケガに関する賠償について、自賠責保険の上限は120万円です。つまり、120万円を超える損害については、自賠責保険により賠償されないのです。

交通事故において健康保険を利用すれば治療費を低額に抑えることができ、そのことは、事故による損害額を自賠責保険の上限である120万円以下に抑えることにつながります。

この点は、交通事故の被害者にとって、以下の2つのメリットがあります。

①加害者が任意保険未加入でも自賠責保険により全損害の賠償を受ける可能性を高める

1つ目のメリットは、健康保険を利用して治療費を低額に抑えることは、加害者が任意保険に加入していないケースにおいて、自賠責保険による全損害の賠償を受ける可能性を高めることができます。

たとえば、治療費60万円、治療費以外の慰謝料等の賠償額80万円のケースでは、自賠責保険から120万円の賠償はしてもらえるものの、残り20万円は任意保険未加入のため加害者本人に請求することになります。

しかし、加害者に支払能力のない場合には、事実上、賠償請求を断念しなければなりません。

他方、もし健康保険を利用して治療費を40万円以下に抑えることができれば、全損害額は120万円の範囲内に収まるため、被害者は、自賠責保険から全損害の賠償を受けることができるのです。

②任意保険会社による慰謝料等の支払の増額交渉においてプラスになる

2つ目のメリットは、健康保険を利用して治療費の額を抑えることにより、自賠責保険から賠償される部分を増やせば、任意保険の支払負担は、その分軽減されるため、任意保険会社の慰謝料等の支払においてプラスに働くことです。

任意保険は、そもそも自賠責保険を超える被害者の損害を賠償するための保険です。そのため任意保険会社は、示談交渉において、自賠責部分を超える損害についての支払については、自社の負担になるため、これを渋る傾向にあります。

健康保険を利用して、治療費を低額に抑えることにより、その分、任意保険会社の負担は軽減されるため、任意保険会社は慰謝料等の増額に応じやすくなります。

治療費の打ち切り後の自己負担を軽減することができる!

最後に、事故後、任意保険会社から治療費の支払を打ち切られた場合、その後の治療費は一旦被害者の自己負担になります。

このとき、健康保険を利用すれば、自己負担する治療費を低額に抑えることにより、無理なく治療を継続することができます。

2.健康保険を利用するデメリット

選択できる治療方法は限定されてしまう!

健康保険の適用対象になる治療方法は限定されています。つまり、交通事故によるケガについて健康保険を利用して治療する場合には、健康保険の適用対象外の先端技術を用いた治療などはできないのです。

この点は、健康保険を利用するデメリットになります。

特に、事故により重傷を負った場合、稀な症例を発症したような場合には、健康保険を利用したために効果的な治療を行えないリスクがあることは知っておきましょう。

医療機関の対応に悪影響を及ぼすリスクを発生させる!

また、交通事故において健康保険を利用することによる、事実上のデメリットとして、病院の対応が悪くなるという点が挙げられます。

理由は簡単です。健康保険を利用した場合の診療報酬は自由診療の報酬に比べて安いからです。

実際、治療の途中に自由診療から健康保険を利用した治療に切り替えた被害者に対して、明らかに病院の対応が悪くなったというケースが散見されるようです。

もちろん、すべての病院において、健康保険を利用することにより、対応が悪くなるものではありません。

しかし、健康保険の利用による病院側の受領する報酬額の減少は事実ですから、そのことによる病院の対応に影響を与える可能性はあることは知っておきましょう。

なお、同じ理由から、交通事故について健康保険は利用できないと回答する病院もあるようですが、最初に説明したように、交通事故でも問題なく健康保険は利用できますから、しっかりと病院側にそのことを伝えるようにしましょう。

3.健康保険を利用する際の手順

(1) 医療機関に対して健康保険を利用する旨を伝える

交通事故において健康保険を利用する場合には、病院を受診する際に、必ずその旨を伝えるようにしましょう。

健康保険を利用した場合の治療と自由診療は区別されていますから、病院に予め伝えておかなければ、事後的に健康保険の適用を巡りトラブルになる可能性があります。

(2) 健保組合等に第三者行為届を提出する

次に、交通事故によるケガの治療のために健康保険を利用する場合には、必ず加入する健保組合等に第三者行為による傷病届を提出しましょう。

交通事故において健康保険を利用できるとはいえ、本来、交通事故を原因とする傷病の治療費は加害者の負担すべきものですから、事後的に健保組合等から加害者に求償する関係上、第三者行為による傷病届を提出する必要があるのです。

なお、第三者行為による傷病届を提出する際には、一緒に負傷原因報告書事故発生状況報告書求償際の際に必要となる被害者の医療記録等の取得に関する同意書などを提出する必要があります。詳細は、各健保組合等に問い合わせてください。

4.健康保険を利用できないケース

最後に、以下の2つのケースにおいて、健康保険を利用することはできないため注意してください。

(1) 被害者本人に法令違反のある場合

第1に、飲酒運転などの故意の犯罪行為により保険適用の傷病を発生させたケースでは、健康保険は利用できません。

(2) 労災に該当する交通事故の場合

第2に、法律上、通勤途中または業務上の交通事故によるケガについては労災保険を適用することになっており、健康保険は利用できません。

仮に誤って労災に該当する交通事故において健康保険を利用してしまった場合には、治療費全額を一旦自己負担しなければならないこともあるため注意しましょう。

5.まとめ

  • 交通事故においては、被害者の故意の犯罪行為による事故および業務上の事故でない限り、健康保険を利用できます。
  • 健康保険を利用するメリットは、①被害者に過失のある場合の自己負担を軽減できること、②自賠責保険による賠償部分を低額に抑えられること、③治療費の打ち切り後の自己負担を軽減できることの3点です。
  • 他方、健康保険を利用することのデメリットは、①選択できる治療が限定されること、②病院の対応が悪くなるリスクがあることの2点です。

このように、交通事故において健康保険を利用することのメリット・デメリットは多岐に渡り、注意すべきことも多いですから、健康保険の利用について疑問や不安のある場合には、早めに交通事故の問題に精通した弁護士に相談するようにしましょう。

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